第19話 学院へ行くまでに僕らがしておくこと!
ドリーちゃんが戻ってくるのを待ったのち、
合流してみんなで屋敷の一階を歩くと、
来客の控室その隣りに談話室はあった。
(あー、お客さん用の居間かと思った)
会議室を使うほど堅苦しくなく、
かといってユピアーナ様の居間を使うほどラフでは無い、
そんな少し真面目な身内の決め事にぴったりな内装、設備だ。
「ここって正式な使い道は」
「談話室は談話室ですわ、使い道は主人が決めることかと」
「だそうですユピアーナさん」「私の名前を出す場面じゃない、主人はダルマシオだ」
……ユピアーナ様がそう言っているんだから仕方が無い、
カタリヌさんが言った通り、主人である僕が使い道を決めよう。
「じゃあ、僕が使いたくなったらここで」
「……かしこまりました御主人様」
瞬時にメイド口調になるアンヌさん、忙しいな。
(あるよね、たまに真面目な場面や来客時、急に『中の人』が出てくること)
特に怒った時とか、妻や夫が変な事を言った時のツッコミとか。
「ええっと席は、これソファーだ」
「御主人様はこちらへ、隣は私が」
「あっはい、じゃあ後は流れで……」
僕が主役席とでも言うか一番奥、
その隣がアンヌさん(ユピアーナ様)で、
僕側のサイド壁沿いにカタリヌさんサエラスさんが、逆側がドリー(サンドリーヌ)さん、タマラさん。
(図解にすると、こうだよ!)
僕 ア
□□□□□
カ□□□□□ド
□□花□□
サ□□□□□タ
□□□□□
うん、会議室だと机は長机を組み合わせたものだし、
居間だと机が無いから、大きなテーブルをみんなで囲むのは、
いかにも『談話』って感じで良いな、結婚相手の家族を招いたら入れたい部屋だ。
(闇の臭気に耐えられるかとかは別にして!)
あっ、メイドふたりがお水を持ってきてくれた、
転移したときに驚かせた少女メイドと僕よりひとつ年上の、
名前はええっと、ブランカさんだっけ、王都へ行きたがっていた。
「クルージュ、ブランカ、ありがとうね」
「はいサエラス様」「ダルマシオ様、どうぞ……」
「う、うん、それでええっと、今後のスケジュールだよね」
これが会議室なら黒板があるんだけどな、まあいいや。
「お姉さんに何かできることは、あるかしら?」
「はい、学院に出発するのは……28日後ですね」
「ダルマシオさまぁ、どんな準備をすればよろしいのですか!」
まあ準備するのは僕なんだけどね。
「まずは学院について、行って早々、試験があるんだ」
「なんだ、まだ入学が決まっている訳ではないのか」
「いえアンヌさん、入学は確定です、入学試験は平民のみですね」
一応、貴族でもあるっちゃああるが、
それぞれの各学園での三年間が入学試験という建前になっていて、
その領地の貴族が推薦人になる、それが大体が血縁者だったりするけれども。
(僕の場合は爺ちゃんと父上の連名だから、文句は言わせないよっ!)
学園でよっぽど成績が悪かったら学園長が止めるけど。
「入学式の前にクラス分けです、基本的に僕が入る可能性があるのは、
AクラスからFクラスまでですね、SとGとありますがそれは省略します」
「ダルマシオ、省略するな、そこは説明しろ」「えええぇぇ……」
こんな風にちょくちょくユピアーナ様が出て来るなら、やりにくい。
(もう一回こういうの来たら、はっきり言おう)
怖いけど。
「Sクラスは王室関係や公爵、準公爵的な侯爵や辺境伯、
教会の大きい所の跡取り等、選ばれた人が入るチャンスがあります、
試験でよほどヘマをしない限りはまあ、入学時にほぼ確定で」
このあたりは逆に言えばどれだけ優秀でも、
相当な権力のある家でないとAクラス止まりなんだよな。
そのうえ平民はもっと酷くて全生徒中、最高得点でもBクラスだとか。
(という話を姉上が学院で聞いたらしい、去年一度戻って来た時に話してくれた)
「それでGクラスは」
「あっはい、基本的に最初からGクラスというのはめったに居ないそうです、
クラス分け試験で問題を起こした生徒とか前例は無い訳じゃないですが、基本は永久懲罰的なクラスですね」
これまた姉上から聞いた。
「なるほどな、平民ならともかく、貴族の子供で退学にできないのも居るのだろう」
「そうですね、まあ『卒業』さえ出来れば貴族は継げますから」
「わかった、ではアンヌに戻るとしよう」「姿はずっとアンヌのままなんですから」
……続けて『ユピアーナ様が出るのはやめて下さい』と言いたいけど、一回我慢、と。
「ダルマシオ様、それでダルマシオ様は、Aクラスを目指されるのですか?」
「そこなんだよなぁ、成績は良いに越したことは無い反面、目立ちすぎると兄さん達に虐められる」
「第一夫人から第三夫人までのですか」「うん、もっと言えば弟にも虐められる」
悲しいけど学院は三年、腹違いでも兄弟姉妹と付き合うのは一生だ。
(今は実姉に護ってもらえてるけど、学院卒業ともなるとなぁ)
「ダルマシオ坊ちゃま、だからといってFクラスは」
「うん、下げ過ぎるのも違うと思う、貰える爵位も違ってくる可能性があるし」
「そうなると、中間あたりかしら」「うーーーん……わかんない」
このあたりも行きの途中で姉上と相談かな。
「じゃあ私達はダルちゃんに勉強を教えれば良いのね?」
「筆記試験はそうですね、でも実は実技試験があるのですが、そこでメイドに出番が」
「私達も一緒に闘えるの?!」「はい、あくまで『持参した武器』のひとつとして」
その分、減点もあるって入学のしおりに書いてあったけど。
「そうなるとぉ、私達も強くならないといけませんね!」
「タマラさん武術に自信は」「比較相性が、あまりなくってぇ」
「さっきの、森の奥ではなかなかのセンスだったぞ」「褒めていただいて光栄ですぅ」
アンヌさん(ユピアーナさん)がそういうのなら期待できるか、
よし、こうなったらいそ、僕の方から……!!
「ユピアーナ様、王都へ連れて行くウチのメイドを鍛えてやってくれませんか」
「わかった、死なない程度に訓練してやろう、良いか?」
「私は非戦闘メイドですのでお断りを」「私は構わないわ」「私もよ」「私もですぅ」
メイド長のカタリヌさん以外、三人はやる気だ。
「……私もやります」
急に声を出したブランカさん!
「貴女は却下したはずですよ?」
「行きたいんです、王都に、お願い致します」
「その件はメイド長の私に一任されました、却下は却下です!」
正確にはユピアーナ様が僕に一任して、
その僕がメイド長のカタリヌさんに一任したんだけれども……
(投げられたのを投げた僕のせいもあるし、ここは!)
「よし、ユピアーナ様でもアンヌさんでもアンナさんでも良いので、
とりあえず訓練してあげて下さい、それで王都で使えると判断すれば考えましょう」
「良いのか?!」「ええ、ただし基準は厳しめに」「わかった」「ありがとうございます!!」
一度は一任したカタリヌさんに頭を下げる僕。
「ごめんなさい、でも実際、やらせてあげてみたいなと」
「わかりました、これで駄目ならあきらめもつくでしょう」
「なんだ、落とすための参加か、それとも連れて行くための参加か?」「両方です!」
それを見極めて欲しいって話なのですよ。
「わかった、それで次の準備は」
「衣食住ですね、この場合の衣はメイドですが、話がそのまま繋がります」
「連れて行けるメイドに制限があるのか」「あるような、無いような、ですね」
このあたりの説明は全部、いっぺんにやった方が良いだろう。
「そういえば坊ちゃま、以前、どこかで何かで四人までと聞いた覚えが」
「サエラスさん、それは寮によるんですよ、学院生の寮はメイドルームもあって、
S・Gは寮自体あるのか知らないけど、A・Bがメイド四人部屋、C・Dが二人部屋、E・Fが一人部屋」
と、書いてあった。
「ではそれ以上を入れたい場合は」
「寮じゃなく個人で家を借りるか、
あと『四人部屋』ってだけで定員は決められてないぽい」
だから姉上はEクラスの寮だったけど、
連れて行ったメイド二人は一人部屋に窮屈にさせていたらしい、
まあ、二人ならぎり常識の範囲内だな、あと生徒の部屋で一緒に、もアリらしい。
「ならお姉さんが一緒に寝てあげるわよ!」
「察し良いですねドリーちゃん、でもユピアーナ様の旧金貨があれば、屋敷を借りようかな」
「御主人様の希望なら構わないが、今の物価はどうなっているんだ」「そこですよねー」
そもそも、財力のある所はもうすでに借りているだろう、
卒業生と入れ替えならワンチャンあるけど、ウチの辺境伯家には頼みにくい。
「わかった、それも含めて準備だな」
「あっはい、早速、明日からでもしましょう」
「まずはその前に、今夜は……わかっているな?!」
……アンヌさん、目だけユピアーナ様って感じで光って、なんか怖い。
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