第18話 ドラゴンを見ている時、ドラゴンもまた僕を見てるううううう!
「うん、食事は美味しい、独特の味だけれども」
「そうでしょ、村の外から来たに人は好き嫌いが極端に別れるのよ」
「なんとなくわかります、これも闇の属性による土地柄でしょうか」
と会話しているのはこの『闇の食堂』の従業員、
サンドリーヌさんのお姉さん、サンドリヨンさんだ、
背が高くてスタイル抜群、うん、『本物のセクシー』と心の中に刻んでおこう。
「確かに、食べると魔力が回復するな」
「えっアンヌさん、この料理ってそんな効果が」
「ただし闇属性に耐性の無い者は最悪、腹を下すだろう」
だからトイレが多めにあるのか、男女別で。
(それは良いんだけれども、窓の外では……)
サンドリーヌさんやそのお母さん(らしき人)が、
例の『闇のキクラゲ』を大量にドラゴンの口へと放り込んでいる、
凄い量だな、後から後へと補充される、ってドラゴンが食べながら僕を見てるううううう!!!
(視線に敏感なのかな)
「ハイ、デザートの黒ゴマアイスです!」
「あっ、ありがとう、って貴女は」
「妹のサンドリズムです、姉がメイドとしてお世話になるようで」
これまたセクシーな!
サンドリヨンさんがスリム系セクシーなら、
こっちはなんというか、健康的セクシー? 出るとこ出てる系だ。
(こんな姉と妹が居たら、自分もセクシーと勘違いするはずだわ)
あっ、当のサンドリーヌさんは勢い余ってドラゴンの口の中へ!
そしてペッと吐き出される、大丈夫そうだけれども……
と僕が見ていると、今度はドラゴンの子供達が僕を見てるううううう!!!
(美味しそうだからかな、雑食って事は人間も食べるのか?!)
「ええっと、闇のキクラゲだけで足りるんでしょうか、あのドラゴン」
黒ゴマアイスをひと口で食べ終え、口を拭きながら話すアンヌさん。
「美味そうにしているから良いのではないか、よほど腹が減っていたのだろう」
「なら良いのですが、量は足りるのでしょうか」
セクシー姉妹を見ると姉のサンドリヨンさんが答える。
「あれは、『闇のキクラゲ』は育ちすぎて持て余していました、
栽培用の洞窟も奥で増えすぎて困っていたくらいで、もちろん美味しいんですよ?
でもあまりに量が……だからむしろ、助かっている、まであります!」
うん、それならいいや、値段も安そうだし。
(だからいちいちこっち見るなドラゴン!)
「ティムしたってことはアンヌさん、ウチで飼うんですか?」
「御主人様が許してくれるなら、そのつもりだが」
「餌、のキクラゲだけじゃ可哀想かなあ」「気にする必要は無いと思うが」
ドラゴンの子供達もウマウマ状態、
って見ると見られるからもう気にしないようにしよう。
「ドラゴン種ってティムはほとんど不可能なはずなんですが」
「私にとっては造作も無い事だが」
この場合の『私』はユピアーナ様のことね、
拳闘士姿で言われると違和感がある、ティムは基本、魔法使いの魔法だ、
もちろん剣士や戦士がある程度、戦って弱らせてからという前提もあったりなかったりだけれども。
「ええっと、上手く躾ければ馬車の代わりになったりは」
「別に可能だが目立って仕方がないぞ」
「あっ、見つかったら父上に取り上げられちゃう」
売られるか解体されて素材にされるな。
「散歩は必要だ、この村の周辺を飛ばすくらいなら問題は無いだろう」
「あと、立派なティムモンス小屋もありますからね」
「身体が大きすぎてダンジョンには連れて行けないが、どうだ、名前を付けてやってくれ」
そんなのアンヌさん、いやユピアーナ様がティムしたんだから自分で……
とも思ったが。あくまでメイドが主人に献上したって形になるのか、
うーん、ドラゴンの名前ねえ、確かギルドで登録も必要だったはずだから……
「わかりました、考えておきます」
「何でも良い、何なら『ドラゴンA』『ドラゴンB』でも」
「それはさすがに、可哀相かと」
ちらっと見るとちらっと見返してくるドラゴン、
いったいどういう仕組みで反応しているんだろうか、
それだけ敏感ということは屋敷の、いや村の警備にも、もってこいだ。
(育ててあげたいけど、食事が一生、『闇のキクラゲ』だけというのは問題ありそうだ)
「すみませんアンヌさんじゃなくユピアーナさん、あのドラゴン達が喜ぶ果物とかどこかにないですかね」
「こればかりは本人に聞かないとな」
「喋れるんですか?!」「いや、食べさせてみるだけだ」
そりゃそうか、
喰いつき具合で確認しよう。
「……嫌ですよ、『人間の味を知ってしまった』みたいなことになるのは」
「雑食だかたな、無くは無い」「ひっ!!」「冗談だ」
食べないでね、って感じでドラゴンを見る、
なんだか鼻で笑われたような気がするぞ?!
(まさか、ね)
「ふう、ごちそうさまでした」
「よし、落ち付いたら今後の予定を教えてくれ」
「えっ、僕にですか?!」「学院とやらへ行くまでのスケジュールを組もう」
……今日会ったばかりなのに忙しいな、
それだけ封印が解かれた事が嬉しいのだろうか、
このあたり、今一度なんというか、心境を、心情を確認したい。
(そもそも御主人様が僕で良いのかって問題もあるし)
今更だけれども。
「ふう、餌やり終わったわ」
「あっサンドリーヌさん、生還おめでとうございます」
「……食べられてたの見たわね」
姉と妹が笑ってら。
(三姉妹並ぶと、まあ顔から言えば本当に血が繋がっているのは、わかる)
ただ身長差が、ねえ。
「じゃ、屋敷へと戻りましょう」
「私も後から行くわ」
「えっ、なんで」「昼食がまだだからよっ!」
ああっ、そうでした!!
「ごめんなさい、じゃあお先に、って食事代を!」
「未来の領主様からは取れないわよ」
「いやいや、まだ領主じゃないしぃ」
結局、ユピアーナ様ことアンヌさんが旧貨で払った。
(さーて、お屋敷へ……って後ろ、後ろ!!)
でかいドラゴンの母子がトコトコと歩いてついてくる、
これにはさすがに村人も困惑してたり驚いてたり引いてたり、
ただ敵意が無いのは感じるのか、攻撃してくるような人は居ない。
「そういえばダルマシオ」
「あっはいユピアーナ様」
で良いんだよね関係性?!
姿形はアンヌだけど『ダルマシオ』呼びだから、
魔神ユピアーナ様としてのお言葉掛けのはずだ。
「学院にティムモンスターは連れて行けるのか」
「ですね、普通のティムモンスターならペット程度に、
当然、使い魔登録を別で学校に提出しないと、ですが」
確かあと、寮にも。
黙って連れ込んだのがバレると退学もあったはず。
「そうか、使い魔バトルとかあれば勝てそうだな」
「連れて行けませんよ、ここじゃあるまいし小屋が無いです」
「何なら現国王に掛け合って、城の庭でも」「やめて下さい!」
そんなこんなでドラゴン達をティムモンス小屋へ収納、
いや小屋なんてスケールじゃないな、まあ普通に暮らせる大きさだ、
さっそく、水飲み場に水を流すタマラさん、うん、ガバガバ飲みはじめている。
(さて、スケジュール決めかぁ)
僕も自分自身の整理のため、
このあたりをはっきり確認しておかなくちゃ。
「じゃあ、ええっと……会議室は堅苦しいかな」
「では居間か」
「ダルマシオ様、アンヌ様、ここは談話室を使いましょう」
(えっ、そんなのあったっけ?!?!)
「ではなドラゴンA(仮)よ」
「アンヌさん、『かっこかり』って!!」
「グエエェェェ……」
あっ、吠えた!
そして何となく感謝している感じ。
(子供達も口だけ空けて、サイレント吠えだ)
さてさてこれから、
今日から学院へ出発する日までの間に、
するべき準備についてメイド達と打ち合わせだー!!
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