第15話 魔神の居ない隙に人間だけで話し合い!
「では私はナンスィーと地下で、残りの魔法について確認してくる」
「ほかぁのまふぉぉ~~もぉ~~……あぁ~~しゅ~ちゅ~~~がぁ~~~」
あー、眼鏡を外しちゃった、
これは時間がかかりそうだな、
思考まで下がらないと良いのだけれども。
「ええっと、どこへ行きましょうか」
「この館はダルマシオ様のものになったようですので、お好きな場所へ」
「メイド長がそう言うなら、じゃあ、それならいっそ……」
寝室で、とか言いそうになったがさすがに引かれそうだ、
いや、まだ見てないからだよっ! うん、見学ついでっていうか、
ここに泊まるならちゃんと確認しておいた方が……脱ぎだしたらどうしよう。
(変な妄想は、止め止め止め!!!)
もうちょっと親密になったら試しにやってみよう、
おそらく何もないだろうけど、ってその前に断られるか、
いや眠る前ならワンチャン……ベッドを取り囲まれたら圧迫感が凄そうだ。
「坊ちゃま、ここは会議室へ」
「あっはい、副メイド長様のおっしゃられる事なら」
「……早く手懐けて『お姉ちゃん』と言うように躾けないといけませんわね」
いやいや何を言っているんだか。
そして僕らは二階の会議室へ……
あえて転移魔方陣を使ってみよう。
「これって僕単体じゃ無理なんだよね、でも一応……二階へ、えいっ!!」
……魔方陣が光った?!
「ひいっ!!」
「あっ、メイドの子供! 驚かせてごめんね」
行けちゃった……
一旦静まってまた光り始めた、
慌てて魔方陣から出る、すると続いてメイド達が!
「んもうお姉さんびっくりしちゃったわ、ダルちゃん、闇魔法使えたの?!」
「いや初耳、ってダルちゃんはちょっと! 腹違いの、嫌な方の姉の思い出が」
「ええー、でもダルマシオちゃんって長いし、私の事もドリーちゃんって呼ぶしー」
……まあいいや、しばらくは上書きだと思って我慢しよう。
「それよりダルマシオさまぁ、闇の魔力が目覚めたのでしょうかぁ」
「タマラさんはどう思う?」
「実は潜在的に持っていらしたとか!」
うーん、そんな心当たりは無いな、
ひょっとして実は持ってたのをまわりが隠していたとか、
でもそれなら本家(辺境伯家)で調べた時からって事になるし、うーん。
(赤ん坊の時点で大体わかります)
「考えられる事はですね、ダルマシオ様」
「あっごめん、メイドの子供が掃除中だったみたいだから会議室に入っちゃいましょう」
「坊ちゃま、メイドの子供とか子供メイドとか言わず、ちゃんと『ロミーナちゃん』って呼んであげて」
コクリと頷いている、
長い箒を持って大変そうだ。
「ごめんねロミーナちゃん、ダルマシオだよ、一応はこの館の主になるらしいよ」
「……ロミーナです、十一歳です、よろしくお願いします」
「良い子だね、お掃除ありがとう、それじゃあまたね」「ダルちゃん、十一歳はダメよ」「何がですかっ!!」
年齢倍のくせにロミーナちゃんとそんなに身長変わらないくせに!
むしろ並べて計ったらドリーちゃんの方が低い、までありそうだな、
そんなことよりさっさと会議室に入って、っと……座る場所はまあ、適当で。
(うん、他のみんなも会議っぽいポジションに座ったぞ!)
「えっとじゃあ……さっきの話の続きから」
僕がなぜ、闇魔力持ちでないと使えないらしい転移魔方陣を使えたか、だ。
「ではコホン、失礼をして」
眼鏡を直しつつメイド長のカタリヌさんが考察してくれるみたいだ。
「まず、実は闇魔力を隠し持っていたという話は聞いてはおりません」
「うん、僕もその実感は無い、あるのは光魔力だけ、それも使えないやつ」
まあ、ここ闇の臭気が出ているスゥクネィダ地方で平気っていうだけで、
ある意味では『使えている』と言えない事もないんだけれど、それはまあいいや。
「実は他の手段でも使える、といった事が無いのであれば、
考えられるのはまず、ユピアーナ様の封印を解いた時に、
口付けした時に魔力を奪わ、与えたのと引き換えに闇魔力も逆流で入ってきた可能性が」
あー、うん、濃厚だったからね!
「でもそれなら、すぐ切れるんじゃ」
「ですから、今から行ってももう転移できないかもしれませんわ」
だからといって試しに行くのは、今は面倒くさいかな。
「次にダルマシオ様はユピアーナ様と、契約魔法を結ばれたようですわ」
「うん、何やらメイド服の上から紋様が光って下腹部に吸い込まれて行ったね」
「あれで魔力が繋がったとなると、ダルマシオ様も同じ魔力を持つ事になるのかと」
……でもユピアーナ様はそんなこと言ってなかったよね、
これから説明するっていう可能性もあるけれども、
あとはあれだ、聞かれないと答えないっていうやつ、うん、駄目なメイドでよくある。
(でも、そういう契約じゃ無い気がするんだけどなぁ)
あくまでも主従契約みたいな。
「それと最後の考察なのですが」
「はいはい、あとまだ何かありましたっけ」
「ダルマシオ様は、ギリオス様の生命力を」「それだーーー!!」
むしろ、それしか無い!!
「坊ちゃま、落ち着いて」
「いや、どう考えてもそれでしょう、だって」
「んもう、お姉ちゃんの胸に強制的に埋もれされちゃうわよ?」
……なぜかタマラさんを見てしまう僕。
(具体的にどこを見たかは聞かないで!)
「ひいお爺ちゃんの魔力全般を吸収しちゃったんだっけ」
「おそらく死ぬまでダルマシオ様の体内に、留(とど)まり続けるでしょうね」
「それで闇の魔力か……一気に解決した、ありがとう」
一応、あとでユピアーナ様に答え合わせはしようっと。
「では坊ちゃま、改めて確認したい事がありますわ」
「はいサエラスさん、サエラスさんの事を『サエラスお姉ちゃん』と呼べる程、まだ親密にはなっていません!」
「んもう、私の番が来たら覚悟してよね」「は、はあ」
番ってなんだよ、番って。
「本題に入るわ、ダルマシオ坊ちゃまは、
魔神ユピアーナ様を、本当にメイドとして受け入れるつもりかしら?」
「かしらも何も、もう受け入れて契約しちゃってるので、どうしようも出来ないんじゃ」
……その言葉に、
真剣な表情でゆっくり、
声を抑え目にして発するサエラスさん。
「実は、再封印する方法があるの」
「えっ?!」
「どうしてもユピアーナ様の遊びに付き合うのが嫌だというのであれば……」
コンコン、コンコンッ
(うっわ、誰だー?!)
「失礼致します、お水をお持ちしました……」
随分と落ち着いた感じのメイド、
おっとこれ子供、いや少女かな、
黒髪だから闇魔力が濃いのだろう、たぶん。
「ありがとうねブランカ、あっダルちゃん、彼女も一応はこの館のメイドよ」
「ブランカ十六歳、よろしくお願い致します」
「う、うん、よろしく、ダルマシオ十五歳です」
(僕よりひとつ年上かぁ)
表情が冷たい、けど美人だ、いや美少女か、
ユピアーナ様が変身したアンナは鋭い冷たさだったけど、
こっちはなんというか、無表情に醒めた冷たさだね、感情が薄そう。
「ダルマシオ様、私も連れて行っていただけますか」
「えっ、どこへ」
「王都の学院です」
淡々とした感じで言ってきた、
なんだろう、なぜかわからないが、ちょっと怖い。
「ブランカちゃん、駄目ですよぉ、もうメンバーは決まっていますっ!」
「タマラさんに聞いているのではありません、ダルマシオ卿(きょう)にお伺いしているのですが」
「卿(きょう)って……えっと、魔法は」「闇魔法は得意です、特に幻覚系が」
うっわー、王都へ連れて行ったらいかにも差別されそうな、
まあそれを言ったらウチのはみんなそうか、魔神様も含めて全員、闇メイドと言える。
僕に頭を深々と下げてくるブランカちゃんにメイド長カタリヌさんが……
「ブランカ、貴女はこの土地から離れられない身体でしょう?」
「はい、でも魔神ユピアーナ様のお力を借りれば、あるいは」
「貴女は都会に、帝都に憧れているだけでしょう、大人しくこの館の仕事だけをしていなさい」
あー、なるほど、
うん、確かにこういう村だと、
憧れの帝都に出てみたいって気持ちがあっても、おかしくない。
(しかも十六歳の少女だからねっ!)
ここでサエラスお母さん(失礼)も声をかける。
「お付きメイドって普通のメイドじゃないの、夜伽って何をするかわかっているのかしら?」
「……弟や村の子供達の寝かしつけなら、得意です」
ええっと、無表情で歌でも歌うのかな、
それはそれで恐そうだ、いや目を瞑っていれば平気か。
(ていうか弟さんが居るんだ)
ここは僕も忠告しよう。
「ええっとブランカさん、王都では、いや王都に限らず、闇魔法使いに対しては差別、迫害が……」
ドン、ドンッ!!
(うっわ、ドアの高い位置からノックが!)
「ど、どうぞー」
僕の声に入って来たのは……!!
「紅茶を淹れてきてやったぞ!」
「ユピアーナ様、その、ナンスィーさんは」
「途中でな、疲れて眠ってしまった!!」
とまあこうして、
魔神の居ない隙にしようとした会議は、
終わざるを得なくなってしまったのでした。
「あの、ユピアーナ様、メイドのブランカです、私を、私も王都に連れて行って下さい!」
「それは御主人様次第だ!!」
「ええっと、じゃあメイド長判断で」「却下ですわ」
あっ、無表情がしょぼんとした顔になっちゃった。
(一応、メイドは生徒と同い年以上なら許されるんだけどね、学院へ連れて行くの)
後の細かいルールみたいなものは、またのちほど。
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