第13話 これが僕専用のメイド軍団だ! 後編
今日から正式に発足した僕個人のメイド集団、
まずは見知った二人と今日会った二人の四人が自己紹介を終え、
いよいよ、ある意味でメインと言っても良いメイドの自己紹介である。
「私の名はアンヌ、戦闘メイドで女拳闘士だ、戦いは私に任せて貰おう、
ちなみに祖母のユピは七英傑の魔王退治に前衛として参加していたそうだ、
あくまでも控え、二軍だったゆえ七英傑に入れて貰ってはいないが……」
その口調で行くんだ、
そしてキャラ設定は繰り返して言い続ければ固まるだろう、
髪の色は魔神ユピアーナの時みたいな燃えるような赤紫じゃなく、薄い紫だな。
「……という事情もあり、戦いに明け暮れた結果、二十六年間恋人は無しだ、
キスも気を失った時に蘇生のため一度だけして貰ったが、あれをキスと言って良いものか」
「細かいですね」「ちなみに実際はダルマシオによる封印解除の事だがな!!」
ええっと、話を誤魔化そう。
「でも女舞踏家で行くなら、長い髪の毛が邪魔では」
「それならば、こうしよう」
おお、アイテムボックスから太いリボンを取り出してポニーテールにした!!
「これで後は不自然な動きさえしなければ平気だろう」
そう言って結んだ髪の毛を旋回させている。
「……それって、どういう方法で髪の毛を動かしているんですか」
「当然、魔力によるものだな、正確には光魔法と闇魔法のミックスだ」
「強度はどのくらいで」「魔力を目一杯込めれば、人の身体くらいは貫けるぞ」
髪の束をヒョコヒョコ動かして遊んでいる、
隣りのタマラさんのカチューシャを持ち上げたりして……器用だ。
「あっ、学園で聞いた話だと、王都でのメイドバトルは殺しは無しだそうですよ」
「まあ、そうだろうな」
「勝ったら相手を貰える訳ですからね、それ以前に人命の問題ではあるのですが」
まあ、相手方に取られるくらいなら死んだ方がマシってメイドも居るだろうし、
逆にメイドに、敵に奪われるくらいなら自ら死ねとか命令する……さすがにそんなクズは、
でもあの七英傑の勇者と聖女の話を聞いちゃうとなあ、だからこその『殺し厳禁』というルールか。
「それで今夜はこの姿で良いか」
「ええっと、あれですよね、夜伽とかんとか」
「筋肉のある女は嫌いか?」「いやその、なんというか」
そもそもそういう女性が、というのもよくわからないというか、
じゃあ好きなタイプの女性はって聞かれるとですねえ、
母上連中や実の姉以外の、腹違いの姉や妹はみんな苦手だ。
(じゃあメイドでいうと、ってなると基本、全員お婆ちゃんだったし)
だからこそ、たまに来るカタリヌさんサエラスさんにときめいたし、
実姉の所に居る最低限の保証、事実上の婚約者メイドに対しても……
「どうした、はっきり言ってくれ」
「……恥ずかしいです」
「それは女性のタイプ関係無しにか」
僕は顔を熱くしながら頷く。
「ふむ、私だって正真正銘はじめてだ、だが知識はある、リードしてやろう」
「……確かにそういうメイドが居るのは知っています、その、欲望のぶつけ先とかじゃなく、
女性を知っておくための勉強的な、お嫁さんを迎え入れた時にうまく出来るようにとか」
学園でも居たなあ、
十二歳で学校卒業と同時にメイドにそういうことして貰ったっていう、
あっちは侯爵家の息子で男は彼だけだって話だから、失敗できないんだろうな。
「……まあ、そのあたりは、急がなくても」
「そうだな、ではメイドを代えよう、次のメイドだ」
「えっ、まだ居るんですか」「待っていてくれ」
部屋から出て行ったユピアーナ様、って今はアンヌさんか、
扉が閉まって一息つくと残った四人のメイドがそれぞれ喋りはじめる。
「……私も初めてですが、ダルマシオ様のためでしたら、是非その使命を」
「お姉ちゃんに任せてくれても良いのよ? ダルマシオ坊ちゃまに私の初めてを、ね?」
「ここはこのセクシーなお姉さんに任せて! 経験は無いけど一緒に練習しましょ、ダルマシオちゃん!」
「ダルマシオさまぁ、なんだかダルマシオさまなら怖くないんですぅ、その、私、わたしぃ……」
なんだなんだこの『初めてです』アピールは、
サンドリーヌさんなんかは王都で男漁(おとこあさ)りしそうな勢いだったのに!
僕が知らないだけで、メイドってみんなこういうものなのか?!
(いや違う、はずっ!!)
コンッ、コンッ
「……失礼致します」
今度は魔神ユピアーナ様のメイド第二形態、
お胸をゆっさゆっさしてクールな感じの女性が入って来た。
「……私は名をアンナと申します……ダルマシオ様の曽祖父ギリオス様の弟子……
アンナ大婆様(おおおばあさま)のひ孫にして最後の弟子……私も一応、全属性使いです……
修行にあけくれていたので……男の人とは手を振れた事もありません……でも、御主人さまのためなら……」
冷たく暗い感じの性格にしたいのか、設定的に……
陰のある感じ、それでいてなんというか、ちょっと重そう、
いや胸じゃなく、いやいや胸は重そうだけれども! 身長や筋肉をそっちに回したか。
「あっ、全属性使いってバレるとよほど全体の魔力が低く無い限り、狙われるかと」
「……むしろ……良い餌になって……優良なメイドが……」
「うーーーん、最初は隠そうか、二人同時に出現させられないし」「……そうでもないです」
ええっ?!
「出せるの?!」
「ああ、おそらくな! ギリオスには魔王討伐の出発前、私が封印された時に備えて頼んでいた事がある、
それをやってくれてさえいれば、私が今まで出来なかった様々な魔法が実現できるはずだ!!」
急にユピアーナ様の声と口調が出てきてびっくりした、
姿も形も、アンナとしての濃い紫の髪色も変わってないけど。
ちなみに髪型は普通のロングだ、髪を動かすならこっちの姿の方が説得力あるのでは。
「ええっと細かい設定ですが、アンヌの髪の動かし方はあくまで第三の腕、第三の拳として、
アンナの髪の動かし方は緻密に、なんというかこう、触手みたいなテクニシャン的にというのはどうでしょう」
「……こういう感じでしょうか」
そう言いながら髪の毛を十本くらいの束にして伸ばしてきて、
僕の首や腋や服に入り込んできて、くすぐりはじめた!!
「ひゃひゃひゃ、やめてー!」
「……敵を拘束するのにも良いかと」
「くすぐりはっ、メイドお婆ちゃんのせいでっ、すっかり弱くっ、あひゃひゃひゃひゃ!!」
お仕置じゃないのであっさり解放してくれた。
「はぁ、はぁっ、はぁ……」
「……髪の毛は様々な事に利用できます……今夜……試してみますか」
「いやいや、その雰囲気、ちょっと怖いから!」
アンヌはユピアーナ様の豪快な感じそのままな性格で行くとして、
アンヌの暗い感じはそういう性格を演じていて、ユピアーナ様も大変そうだな。
「ええっと、無理していませんか?」
「……何も無理していない……むしろ……楽しい」
あっ、冷たい表情がニヤッとして、ちょっと怖い!
(これはこれである意味、強そうだ……魔女的に)
「わかりました、これで行きましょう」
「はい……では夜伽は……わたくしが……」
「そ、それはまたその、なんていうか、うん、これで全員揃ったね!」
コンコンッ
(えっ、まだ誰か居るのーー?!)
「はい、どうぞ」
僕の声に入って来たのは、
黒髪をぼっさぼさにした女性だ、
メイド服を着ているが見た憶えあるな、ええっと……
「ナンスィー、珍しいわねメイド服とか」
「いちばんマトモな服がこれしかなくってぇ~えへへ~」
サンドリーヌさんの声にへらへら笑って返事、
うん、服は綺麗だが顔がだらしない、ちょっとヨダレが出てるし。
「あっ、さっき寝っ転がっていた! 半裸で……いえ失礼」
「いいですよぉ~、わたしもいちよ~メイドですから~」
「えっ僕の?!」「ゆぴあ~なさまのですぅ~」「なら問題ないな!」
ユピアーナ様の声だけ響いてくる変な感じ、
アンナさんの姿で喋っているから別人がどっかから声を出してるみたい。
「ナンスィー、自己紹介を」
「はい~カタリヌさまぁ~、まほ~あいてむかいは~つ~、のメイドでい~のかな~
ナンスィーにじゅうろくさいですぅ~、しょじょで~~す、よろしこ~~~」
……なんだこれ。
「ええっと僕はダルマシオです、ダクスヌールの街で……」
「しょ~らいのりょ~~~~~~~~しゅさまですよねぇ~~」
「なんだか伸ばしてますがそうです」「よびちしきはもってまぁ~~~」
なんだろこの、とろけたお姉さん。
「ひょっとして、僕と一緒に」
「さいしょはついていきます~~、アイテムふくろの~の~ひんに~~」
「えっ、作れるの?!」「さいき~んのせ~さくは~~、ぜんぶわたしでぇ~~くふふ」
最後、なぜ笑った。
「じゃあすぐ帰るんだ」
「ど~~~~~~してもいてほし~~~っていわれたらかんがえますよぉ~~」
「いやいや、とにかく顔見せに来てくれたんだ」「いえ~ユピアーナさまにぃ~~」
その言葉にスタスタと部屋から出るアンナさん、
おそらく廊下で着替えかな、その間にナンスィーさんがアイテム袋から書類を出す、
続いて眼鏡も……かけると急にキリッとした表情になった。
「ダルマシオ様、本日は私のお婆様、お母様から引き継いだ、ユピアーナ様が封印される前に残された、
新しい魔法の開発について、本日までの報告に参りました、よろしくお願いしますっ!!」
「ちゃんと喋れるじゃないですかーー!!」「あまり長くは持ちませんがっ!!」
こっちの方がよっぽどキャラが立ってるよ……。
(大丈夫なのか、僕のメイド軍団は!!)
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