第10話 今度は僕が情報を教えましょう、八大派閥とは、そしてメイドバトルとは!
「それで、こちらのメイドに粗方聞いたのだが……八十年後の世界は、どうなっている」
「はい、それはもう平和に、と言いたいですがダンジョンがまだ点在していて」
「魔王をひとり倒したくらいでは無理か」「でも人が滅ぼされる脅威は、当分無いかと」
逆に強い魔物を求めて、
こんな辺境まで来る高レベル冒険者が居るくらいだ、
そのお陰で我が領地(予定)は潤っている、父上にめっちゃ奪われてるけど。
「確かにこの村の周辺からは弱い魔物の気配しかしないな」
「はぁ」
「やはり戦うならば対人か、私に闘う機会は与えて貰えるのか?」
思わぬ所で僕の望む言葉が出てきた。
「ええっと、まずこの国においてですが、八つの派閥に別れています」
「それは領地的にか、人種的にか」
「色々ですが、八十年前の魔王討伐が関係しています」
ややこしいから自分でも確認の意味で説明しよう。
「ふむ、国名は変わっていないようだが」
「そうですね、まずは国王派閥が二つありまして、
ロシュフォール王家派とルブラン教会派に別れています」
……さっきの話を聞くと複雑な気分になるけれども!
「勇者派と聖女派か」
「基本的には同じグループですね、これが合せて最大派閥と見られています」
「イスマエルとロリーヌの子孫だな」「そうなるかと」
元々は勇者と聖女の間に生まれた兄弟喧嘩が原因とかなんとか、
でもきっちり手を結ばないといけない所は組むという、そんな関係らしい。
「後は冒険者や兵士などの武闘派閥、父上は脳筋連中とか言っている、
アルベルト派略してアル派、アンドリューペイズ略してアド派、
これも同じグループでありながら争う時は争ったりしている関係です」
こっちはこっちで兄弟というより、
罵り合える親友みたいな関係らしい、
ひい爺ちゃんや爺ちゃんがそう言っていた。
「ハヴェルともう片方は……?」
「二グレアム様ですね、魔王討伐後、家名が」
「では剣士派と戦士派か」「もうそのへんは、ごっちゃかと」
でも直の子孫は受け継いだりしているのかな。
「そして自称『エルフの血を受け継ぐ者たち』ことペリグリム派、
ただここは変な所というか、色白だったり耳が少し尖ってるだけでスカウトされるそうです、
遠距離攻撃が得意な人も喜ばれるとか、ここもここでエルフ教とも呼ばれています」
実際にエルフを崇拝している教会も建ててるし。
「ホーリーマリーは長生きできたか」
「ええっと、それは……」
「百七歳まで生きたそうですよ」
カタリヌさんが助けてくれた、
ひい爺ちゃんの前に亡くなった七英傑なんだよな、ホーリーマリー様。
「そうか、本人は『エルフの血が流れているから最低でも百歳までは生きる』と言っていたが、本当だったと言っておこう」
「純血のエルフは千年以上前に滅びたとか」
「私の子供の頃は、よく遊んで貰っていたぞ」
……冗談かな?
本当なら何歳なんだろうこの魔神様。
(まだ百年前までは、隠れたエルフ族が生き残っていた、という線もあるし)
「ちなみにテイマーが多いのもこの種族ですね」
「マリーは犬系が苦手であったぞ」
「そ、そうですか」
知らないってそんなの。
「そして色々と噂のあるエルデルン派、これは嫌な兄上から聞いた事があって、
アサシンのヘルムート一派ですね、半分ギャングで半分、国の暗部みたいなものだとか」
「そんなに嫌なのか、ご主人様の兄が」「それはまあ、おいおい……甥じゃないですよ?」
表向きは遊び人だけど、
それはカモフラージュなんじゃないかとも言われている、
あそこのメイドはハニートラップに注意、とかなんとか。
「……そうか、そういうことか」
「あっ、何か気付かれましたか」
「のちほどを意味する『追々(おいおい)』と、親戚関係の甥(おい)を賭けたのだな」
(そこですかーーー!!!)
「えっと、そしてウチのひい爺ちゃん一派、僕も一応は直径というか、
いや九男だから違うのかな、まあギリオスひい爺ちゃんの、長男の長男の九男です」
「その光魔力の濃さは間違い無い、私の御主人様に相応しいと言えよう」「はあ、まあ」
褒めて貰えてるのかな、一応。
「我がダクリュセック派は魔法特化というか、特に光魔法が貴重がられています、
おかげで光属性を持つメイドが狙われて大変で……まあ僕の所は闇属性らしいので大丈夫というか、
むしろ全属性持ちでもない限り、それを隠さないと王都では物も売って貰えないかも」
そう、闇属性差別が酷い、
このスゥクネィダ地方以外では……
ダクリュセック家の領地でも実の姉上んとこ以外はマズいだろう。
(何せウチのメイドが僕にまで隠してたくらいだからね、ややバレてたけど)
それでも闇魔法の恩恵はみんなそこそこ受けているという、
現金な物だねほんと、人間とはそういうものかって十五歳ながら思う。
「なるほど、七英傑の全てがそれぞれ派閥になっているのだな、それで派閥は八つと聞いたが」
「あっはい、あとはその他です、と言いたい所ですが……反七英傑派です」
「そんな者達が居るのか」「正確には反国王貴族、その一部が集まった一派ですね」
この連中は国王派、
すなわちロシュフォール王家派ルブラン教会派と激烈に仲が悪い、
場合によっては過激な手にも出るらしい、詳しくは知らない。
「なるほど、呼び名は『反国王派』で良いのか」
「確かどっかの公爵の家名がついてたはずですが、後で調べておきますね」
「そうかわかった、その八つの派閥が争っているのだな」「そうなります、魔王を倒して平和になったのに」
むしろ魔王を倒して平和になったから、とも言えるのか。
「御主人様、それで私はどうすれば良い」
「それがですね……実は結構、貴族同士は本人が直接戦ったりはしません」
「つまり、どういうことだ」「はい、代理戦争です」
ほうほう、と軽く頷くユピアーナ様。
「衛兵同士、貴族の私兵同士が戦うのか」
「基本的にそれは禁止されているんですよ、
また魔王が現れたり、戦争になった時に戦力が減っていると、もったいないので」
あと、本当にいざとなったら、団結しないといけないからね。
「では戦うのは誰だ、いや、どう戦うのだ」
「はい、それはですね、戦わせるのは……それぞれの、メイドです」
その言葉に、ほくそ笑むユピアーナ様!
「私の出番ではないかっ!!」
「はい、戦えるメイドがひとりは欲しかった所で……
一切そういうのに関わらないつもりの貴族でも、ひとりは持っていないと」
なんだお前は貴族として自分を護る気も無いのか、って話になる、
その貴族本人がいかに強くても……これはほぼメンツ、プライドの問題となる、らしい。
(僕の一応の。保険の婚約者メイドも、登録上は戦闘メイドだったりする)
だから連れて行く予定なんだけどね、学院に。
というかすでに行って帰ってきているはずだ、
実姉であるブリジット姉さんの卒業と一緒に……
(今から会うのが楽しみだな)
「よし、私に闘わせろ」
「学院に行くまで待って下さい、あ、学院ってわかりますよね?」
「学校や学園なら知っているが」「はい、六歳から学校に六年、そのあと学園に三年です」
そして僕は学園を卒業したばかりだ。
「ではその次、学園の上か」
「そうです、特に貴族になるには、領主になるには学院の卒業は必須です」
「私が封印される前は学園までしか無かったが」「そうなんですか」
じゃあ貴族になれる基準が低かったのだろうか。
「御主人様が学院へ行けば闘えるのだな」
「はい、メイド同士のメイドバトルです」
「勝つとどうなる」「相手のメイドが貰えます」
そして負けると奪われる、と。
「そんな方法で手に入れて、言う事をきくのか」
「きくのも居ればいかないのも居て、その場合はお金で解決ですね」
「交渉が決裂した場合は」「奴隷ですね、このあたりの詳しい事はちょっと説明できません、ごめんなさい」
別に変な話があるんじゃなく、
僕が憶えてないだけですごめんなさい、
正確に言うとそこまでの詳細は知らないというか。
(うちの街に卒業生いたっけな、卒業生についていたメイドでもいいや)
「よしわかった、メイドバトルに備えよう」
「いや、そこまでのやる気は……」
「……そうか、わかった御主人様、これはこれからのとても重要な話なのだが……」
ずいっと僕に迫ってくるユピアーナ様、
人間サイズになったとはいえやはり背が高く、
迫力を感じる……こ、こんなメイドが夜伽だなんて、いったい何をするのだろう?
(って、なんでそんなことを考えているんだ僕は!!)
「ダルマシオ、これから、たった今から……ふたりの『ルール』を決めよう」
「ルール、ですか」
「ああ、魔神ユピアーナと契約を結んだダルマシオとの、大切なふたりの、ルールだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。