第7話 闇の村の秘密!
朝食後、客間へとやってきたこの『闇の隠れ村』とでも言おうか、
その村長グザヴィエさんがやってきた、黒いローブの豪華版といった感じで。
(しっかり黒い杖も持参だ、うん、闇の魔法使いって感じ)
よく見ると威厳がある、
遅れてウチのハウスメイド、オチュアさんもやってきた、
確か母親なんだっけ、並んで頭を下げる、そしてお互い、いやみんな席に着く。
(僕の横にウチのメイド長アルメンさん、正面にグザヴィエさんでその隣がオチュアさんです)
さあ、何から聞こうか。
「ええっとダルマシオ=ダクリュセックです」
「存じ上げております、実はお姿だけでしたらダクスヌールで何度かお見かけしております」
「あっはい、ご挨拶していただいても良かったのに」
ダクスヌールはウチの街ね、僕が住んでる。
「あちらは闇の空気が薄くてどうも馴染めなくて」
「……普通、逆ですよね」
「はい、しかし我々、闇の魔力を持つ者はこの村の空気の方が過ごしやすいのです」
改めて基本知識を確認すると、
忌み地とまで言われるこの僕の治める予定であるスゥクネィダ地方は、
土地自体が闇属性の空気を発していて耐性の無い者は酔ったり気分が悪くなる。
(母上は『目と頭がグルグル回る』とか言って、来て三時間で逃げて行ったっけな)
もう相当昔の話だけれども。
入口の街、唯一の街だけあってダクスヌールはマシな方のはずなんだけどなぁ……
確かにこの闇の村は、はっきり見える訳では無いが『臭気』というレベルで闇の気配を感じる。
コン、コンッ
「失礼致します」
お水と紅茶セットをワゴンで持ってきてくれたサンドリーヌさん、
真面目なメイドモードなのに、ちっちゃ可愛いのでつい和んでしまう。
「あれ、サンドリーヌさん朝食は」
「私達はすでに済ませました、皆様が来る前に」
「そうなんだ、他の皆さんはユピアーナさんのお世話中だよね」
メイドがメイドに世話されている、
いやこの場合は魔神様だ、まあそれは置いといて。
「ダルマシオ様坊ちゃま、昔はこういった村がいくつも点在していたのですよ」
「そうなんですかアルメンさん、それで今は」
「ほとんどこちらに集約されております、皆で結界を張った方が安全ですので」
うん、忌み地と言われるだけあって奥は闇属性の魔物が相当強いらしい、
だから絶対、勝手にダクスヌールから森や荒地の方へ行くなと昔から言われた、
北の方、忌み地から離れる方向ならいくらでも行って良いからって言われたぐらいに。
(お付きはちゃんとついてきたけどね)
「そこまでして隠しておく理由は、まあ大体予測はつきますが」
軽く頷くグザヴィエさんが説明してくれる。
「闇の土地で育った魔薬や毒草、毒キノコや闇属性魔物の血は、
ごく少量や調合次第では貴重な薬、大変必要な薬となります」
「うん、ウチってそれで潤っているんだよね、採取大変だろうなとは思っていたけど」
てっきりたまに来て入るのを許されているA級以上の冒険者頼みかと思っていた、
あと一応、そこまでキツくない毒草はダクスヌール周辺の畑でも作っている、ここへ来る途中で見たやつね。
ここでオチュアさんが口を開く。
「ウチの息子は闇属性が高すぎて、ここでしか生きられませんのじゃ、
ダクスヌールの街もあそこは闇が薄く、日帰りが精いっぱいで……それと村に万が一の事があれば闇魔法で護るうちのひとりで」
「あっ、ここって冒険者とかには見つからなかったの?」「逆に……」
言いかけたオチュアさんを手で制し、
代わりに息子のグザヴィエさんが答えてくれる。
「ここは基本的には隠れ村ですが、冒険者たちが本当にピンチに陥った時、
必死で逃げればここへ行き着くようになっております、そういう魔法が」
「そうなんだ、よく漏れなかったですよね」「A級冒険者以上の方は守秘義務を守って下さいます、しかし……」
お水をひとくち飲むグザヴィエさん、
確かになんとなくオチュアさんの息子だなっていう顔立ちをしている、
おじさんだけれども。
「しかし?」「A級以上の『パーティー』ですか実力も無いのに無理してついて来た人も居て」
「あー、ここってウチの街もそうだけれども、元から闇属性を持っているか、
闇の土地に耐えられるレベルの光属性、光の魔力を持っていないとキツいもんね」
僕は『存在的光の魔力』が相当らしい、
しつこいようだけれど魔法自体は使えないよ!
(まだね、王都の学院で憶えたいな)
「そういった方が『いざとなったらここへ逃げ込める』というのを噂にしないように、
他言しそうな方を助けた場合は闇魔法で記憶を消してからダクスヌールの街へ」
「冒険者ギルドは知っているの」「もちろんです、当然ギルマスレベルだけですが」
僕の知らない所でそこまで、
これだと当然、ダクスヌールの村長さんも知っているんだろうな、
いや正確には町長さんなんだけど、街の感じがどうしても村の域を出ないのでつい村長さんって呼んじゃう。
(ダルマシオさんなら平気ですよって言われてるけど、直した方が良いかな)
おっと話を戻そう。
「それとやっぱり最大の理由は」
「はい、ユピアーナ様ですね、目覚めるまで護れとギリオス様のご命令で」
「ダルマシオ坊ちゃま、この村の存在意義はそこにあると言っても過言ではありませんよ」
アルメンさんはそう言うけど、ここの住民、特に子供たちを考えると、
強い闇の魔力持ちなせいでここでしか生きられない子達が居るとしたら、
その子のためにも大切に護りたい村なのはよくわかる、僕だって未来の領主だ。
(それは身体的にも、差別的にも……)
「みんながみんな、ここから出られない人ばかりっていう訳では無いですよね」
「はい、ただ出稼ぎにしても大きな街に出たいと言う人にしても、
やはり闇の魔力持ちという事実は基本的には隠して出て行っております」
メイドお婆ちゃん達も一応は隠してたもんな、僕も薄々勘付いてはいたけど……
闇持ちで許されるのは僕のひい爺ちゃんみたいに『全属性を極めている』って人とかだ、
それだとある意味、コンプリート的な意味で許されてしまう、まあめったに居ないんだけれども。
(あっ、サンドリーヌさんがにこにこしながら僕の方へ)
「お姉さんは単純に、一度王都を見てみたいわ、
ここの子供達の面倒を見るのが嫌になった訳じゃないけど、
ほら、新しい血も入れたいから、お婿さん探しっていうヤツ?」
うん、小さな村あるあるだね、
狭い所で人数が少ないからそこだけで完結した生活を送っていると、
どうしても血が濃くなっちゃうっていう。
(僕も王都の学院へ行く理由のひとつが、お嫁さん探しでもあるんだよなぁ)
最低限の保険があるとはいえ。
「それで、それが理由でサンドリーヌさんは僕のメイドに」
「そうよ、王都へ連れて行ってくれるでしょう?」
「えっと、子供メイドは大丈夫だったっけ」「もうすぐ23歳よ!!」
……タマラさんみたいな属性てんこ盛りと違って、
サンドリーヌさんみたいなのもそれはそれでアリな人も多そうだ、
これって何て言うんだっけ、ええっと学園で聞いたな、確か『合法少女』とかいうやつだ。
(見た目も身体も少女なのに、年齢は大人っていう)
……彼女が嘘ついているっていう可能性もあるのか、
ついて行きたいばかりに。
「いやん、お姉さんをそんなにジロジロ見ないでよ」
「身分証名称はありますか?」
「あるわよ、ダクスヌールの商業ギルドで作って貰ったわ」
メイドの免許証だ、
ちゃんとこっちの村長さんが認めたやつだ、
審査も通っているなら年齢は偽り無さそうだな。
「えっと大体わかりました、話をまとめるとですね……」
・闇属性、闇魔法差別から逃れる村
・毒(貴重な薬)を取り扱っているのを隠す
・魔神ユピアーナ様の封印を護っていた
・レアな魔物、貴重なアイテム目当てで来た上位冒険者の避難所でもある
・存在を知っているのは村外だとごく限られた人、僕も今日初めて知った
「あっ、そういえばウチの教会に、まれに客人が来て治療して行くのは」
「呪い解除ですね、この村の闇魔法使いが、最ももう四人しかその呪文は唱えられませんが」
「イリスの旦那様がそうですよ、解呪が得意だそうで」
アルメンさんによればウチの副メイド長、
その夫がそんな大魔法使いだったのか、知らなかった、
いやたまに見ない老人が出入りはしてたから、その中のひとりかも。
(結構な金貨を払って行っていたはず、かなり父上に巻き上げられているけど)
残りは教会の運営費である。
いやもちろん術者にもそれなりに、
そのあたりはこっちの村長さんの管轄だ、あと神官長。
「それでダルマシオ様、この屋敷の今後は」
「あっはい、ユピアーナ様と相談ですが、グザヴィエさんの悪い用にはしないかと」
「助かります、この村の子供達にとっては重要な、学びの間でもありますから」
学校みたいなものか、あの書斎こと図書館。
(いっそ、ここに学校を作るとか……すでにあったらごめんなさいだけれど)
とまあ、後は村長さん達とこの村について雑談しつつ、
お紅茶もすっかり飲み干していると……
コン、コンッ
「ダルマシオ様、そろそろユピアーナ様が」
「あっタマラさん、魔神様がお呼びですか」
「四階の、ユピアーナ様の部屋へ来るようにと」
うん、いろいろとお話をしなくっちゃ。
「ではグザヴィエさんの希望は伝えておきますので」
「はい、よろしくお願い致します」
こうして僕は合法お子様メイドと、
性癖がややこしくなりそうなメイドと一緒に、
魔神ユピアーナ様の待つ四階へと上がるのであった。
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