第6話 このお屋敷が僕のもの!
魔神ユピアーナ様が封印されていた巨大なお屋敷、
寝起き早々なぜか料理を作ってくれるというので待っている間、
魔王討伐の褒美で建てたというココを見回る事となった。
(ちっちゃいメイドとメカクレそばかす超巨乳メイドの案内だよ!)
まあ、このサンドリーヌさんとタマラさんについては後で色々と聞こう。
「宝物庫の隣は処刑場よ」
「……いきなり物騒な場所ですね」
「お仕置部屋です、拷問部屋でもあるらしいですぅ」
怖いなぁ、魔神って本来は人間をいたぶる種族なのか?
悪い奴を捕らえて吐かせるとか僕には出来ないんだけれども!
(むしろ粗相をして折檻されるのは僕の方か)
部屋の隅にはなんかそんな道具も置いてある。
「その隣は当然、牢屋よ」
「この村で悪い事をした人を閉じ込めています、今は誰も居ませんが」
「じゃあ使った事はあるんだ」「最近まで覗きの罪の男性を」
普通にそんな奴いたんだ。
(まあ、対象がタマラさんだったら、わからなくも無い)
犯罪は犯罪だけれども!
「次は地下一階よ」
「ええっと、この廊下の先は」
「行き止まりですぅ、各階、地下三階は別にして全ての階に、行き止まりの空間が設置されています」
なんでまた、逃げた囚人とかを追い詰めるためかな?
「こっちもこっちで倉庫があるわ」
「一応、室内の魔法練習場や組手の練習場もありますぅ」
「本当だ、下の階より天井が高い」
大雨の日とか、戦闘メイドを鍛えるのに良さそうだ。
「あっ、さっき貰った魔力を試す場所にもできそう」
「それは後で、中庭で試すわ」
「あちらの方がメインの訓練場ですぅ」
なんだか魔神の屋敷というより村の公共施設にもなってるなここ。
「後は魔法使いのアイテム調合室よ」
「隣は一般倉庫、がらくたばかりでごめんなさぁい……」
「いや僕に謝られても、うん、魔女がイッヒイッヒ言いながら調合しそうな、大きな釜があるね」
薬草の匂いがするからいつも普通に使っているのだろう。
「あっ、部屋の隅で誰か寝てる」
「もうナンスィー……ごめんね、一度寝ると起きないのよ」
「薬の調合は村一番の魔女ですがぁ、その、だらけ系とでも言いますかぁ」
うん、寝相でわかる、だらしない。
(服が半分、脱げてるからねっ!)
「では地上へ行きましょ」
「各階にあるトイレの紹介は省略しますねぇ」
場所は把握した!
(あっ、上がって早々、良い匂いが)
もう料理が始まったみたいだ。
「このロビーにある装飾品や置物は、魔王討伐時代の仲間からのプレゼントですって」
「どれが誰からかは、ユピアーナ様は見れば絶対わかるからって話だそうですぅ」
「うん、これそれぞれの子孫が見たら『返して』って言いそうなのもあるね」
このあたりは友情の問題だ、
もし僕が本当に主人としてここにある物が貰えるとしても、
ユピアーナ様そしてひい爺ちゃんのためにも、やめておこう。
(武器防具アイテムとか、どうしてもっていう物があれば借りるよ!)
「さっ、こっちが食堂で奥がキッチン、あっちが大浴場」
「男女の区別は無いんですぅ、あくまでもユピアーナ様のためのものでしてぇ」
「あー、じゃあメイドは入っちゃいけないんだ」「今後はね、そのあたりはユピアーナ様の判断だと思うわ」
どうやら大浴場は掃除中らしい、
中は興味が無い訳じゃないけど、今はいいや。
「あれ? あっちは」
「メイドのエリアだから駄目よ、男子禁制区域ね」
「あっ、住居ですか」「それは別ですぅ、住居棟が隣にぃ」
住み込みじゃないんだ、
いや隣にあればそれはそれで住み込みか。
「窓の外を見て、あそこが中庭よ」
「あっ、確かに戦闘訓練とかできそうですね」
「夏にはここから魔法花火を打ち上げますぅ」
そんな行事やってるんだ。
「ここが客間、準備中ね」
「誰か来るんですか?」
「目覚めたら村長さんが来る事になっていますぅ」
……ここのだよな?
ウチの方の村長さんが来ても不思議ではないっていうか、
ここの事はやはり知っているのだろうか。
(……さすがに地上階になると他のメイドとすれ違うな)
いったい何人居るんだろう、
眠り続けている主人のために……もう起きたけど。
「一階最後のエリアは書斎よ」
「うっわ、本がいっぱい!!」
「そして吹き抜けになっていますぅ」
つまり二階にもまたがっているのか、
螺旋階段まであって……あっ、子供が座って読んでる!
「こんにちは、いや、おはようだね」「……だ~れ~?」
「ダルマシオ=ダクリュセック、ダクリュセック辺境伯家の者でスゥクネィダ領の未来の領主だよ」
「……しらな~い」「こらルクセ!」「いやいやサンドリーヌさん、相手は子供ですから」
本に興味はあるものの螺旋階段で二階へ、
うっわ、めちゃくちゃ長い髪の毛を動かして本を取っている眼鏡熟女が!
物を持てる毛って……気になるけど今は案内されている最中だ、向こうもこっちに気付いてないし。
(あれも闇魔法なんだろうなぁ……)
二階どころか三階にまで繋がっているっぽい書斎、いやこれもう図書館だな、
でも僕らは二階へと出る……会議室まであるのか、そしてその隣りは、住居かな?
「ここはゲストハウスよ、とりあえず八組は泊まれるわ」
「三階にもありますぅ、そして四階と五階がユピアーナ様の寝室とか居間とかです!」
「そこ、勝手に入っても良いのかなぁ」「では後にしましょう、それから二階にはテラスがぁ……」
とまあ、こうしてとにかく広い館を一通り見て回った。
「さあ、更に魔物を飼える巨大小屋もあるわよ?」
「中庭の向こうですねぇ、ご覧になられますかぁ」
「いや、イリスお婆ちゃんがやってきたから、朝食ですか」
頷くウチの副メイド長、
どうやら準備が出来たらしいので食堂へと向かう、
別の大きな階段で下へ……あっ、肖像画が並べられている。
「これって七英傑、ですよね」
「そうよ、ちゃんとユピアーナ様もあるから八英傑ね」
「ユピアーナ様は別格ですぅ、七英傑の更に上だと聞いています!」
確かに最後に飾ってある魔神の肖像画が一番大きい。
(そして本当に良い匂い、スープ系かなぁ)
食堂に入るとサイズを合わせ直したメイド服のユピアーナ様が!
人の姿に変身したままだ、うん、ちょっとマッチョなメイドって感じ。
「さあ御主人様、早速料理を食べるが良い」
「ええっとユピアーナ様は」
「主人より先に食べるメイドがいるか! 一緒に食べるメイドは嫁メイドだ」
嫁メイドって……
まあ弱小貴族は元メイドが嫁だったりするし、
婚約者という立場だったらメイドでも一緒に食事はする。
(そう、僕の一応の婚約者みたいに、って言いたいけれども……)
まだなんだよなぁ、私はまだメイドですって頑なに拒まれたままだ、
学院へ行く途中で回収する時、今度こそは一緒に食事をするんだ!!
「さあ座れ座れ、御主人様は御主人様席だ」
「あっはい、ってユピアーナ様はまだこの屋敷、見回ってないですよね?」
「メイドとして後で見て回る、そして当然、この屋敷は御主人様のものだ」
やはりこのお屋敷が……僕のもの!!
(村の公共物じゃなくなっちゃうのは、心苦しいな)
それは区域をきっちり分ければ良いか。
「最初はサラダとスープだ」
「うっわ、黒いキノコのサラダと灰色のスープ!」
「味は保障する、さっき味見したからな!!」
……主人より先に食事しないって言ってたのに、
いやまあ味見ならいいのか、うん、味見って言ってめっちゃ食べてそう。
「それでは、いただきまーっす……うん、このサラダ普通に美味しい」
「そうだろうそうだろう、メイドの私が御主人様のために作ったのだからな!」
そんなサラダ程度で……
続いてスープは、うん、これも美味しい、
朝にしては濃すぎる気もするが、サラダとセットと考えればこれはこれで。
「スープの美味しいですよ!」
「そてはわたくしが」
「あっウラヌスさん」
勝手知ったるキッチンメイドでした。
(じゃあ濃いのは材料のせいか)
こうしてひとり先に朝食をいただいた僕、
メインのリザードステーキは朝から重たかったけど、
デザートの『闇桃』がやたら美味しく、おかわりまでしてしまった。
「ごちそうさまでしたー」
「うむ、では次は我々メイドの食事だ、ご主人様は部屋でくつろいでいてくれ」
「はあ、部屋っていうと」「どこでも構わない、ここは御主人様の屋敷だからな!」
そして僕の食べたのより五倍くらいの量が運ばれてくる。
(あれ、これってもしかして、ユピアーナ様の……?!)
「ダルマシオ坊ちゃま、こちらへ」
「あっはいアルメンさん」
「ここ、闇の村について、改めて説明してさしあげますから」
こうして僕は客間へと連れて行かれたのであった。
(あっ、おじさんが居る)
立ち上がって頭を下げた感じでなんとなくわかった、
この人は……闇の村の村長さん、略して闇の村長さんだろう。
「初めましてダルマシオ様……グザヴィエと申します、こちらの村長をしております」
やっぱりー!!
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