第5話 魔王討伐のご褒美をみんなで分けあおうって! 後編!
「うっわ、旧金貨がいっぱい!」
「なんだ、今は新しくなったのか」
「あっはい、三十年くらい前でしょうか」
確か魔王討伐五十周年を記念してだ、
コインの絵柄も討伐最大の立役者とされていた、
勇者王子イスマエル=ロシュフォールが裏に、表は王家の紋章だ。
(でもこっちは知らない爺さん、確かこれも大昔の王様だったはず)
そして王家の紋章も微妙に違う、
更に隣の宝箱からは旧銀貨、こっちの絵柄は女神様だ、
今でもたまに、ごくまれに紛れ込んで来るが、こんなに大量は見た事ない。
(現代版の方は絵柄がルブラン教会です)
そう、光の聖女ロリーヌ=ルブランの。
まさかその二人が魔王討伐の立役者ではなく、
留守番が多かっただなんて……このあたり、後で詳しく聞こう。
(あれ、ユピアーナ様が怪訝な顔をしている)
「こっちは銅貨か、金貨が思ったより少ないな、アルメン」
「申し訳ありません、この建物を作るのに使わせて頂きました」
「なら仕方ないか、武器防具の類は売ってはいないだろうな?」
さすがにここ現地だけの材料じゃ無理だったのかな、
あと建設してくれた方々へのお給金とかも必要だっただろうし。
(それでもウチの、我がスゥクネィダ領で何十年分の予算になるのだろうか)
実家であるダクリュセック辺境伯家に一旦渡すとかしなくて大丈夫かな、確認しよう。
「ええっとアルメンさん、これって」
「魔王討伐の分け前だそうですよ、ユピアーナ様への報酬だそうで」
「そうだぞ、王子と聖女がサボりにサボっていた口止め料でもある」
ならいいのか、見つかったら理由付けて奪われそうだけれども。
(母さんとか喜んで全額、父さんに渡しそうだ)
あんなのでも実母だ、
いやこれについてはまあ、後で言わなきゃならないかな。
「これ、一度に両替したら疑われたりしませんか?」
「ダルマシオ坊ちゃま、言い訳はいくらでも考えましょう」
「うん、まあ王都へ持って行けばなんとかなるかぁ」
運ぶのが大変そうだけれども。
「次は武器防具にアイテムだ」
「はい、見た事ないのばかりですね」
「闇属性の物が中心だ、おそらく誰も取りたがらなかった残りだろう」
とはいえ適正さえ合えば強いはず、
世間的に表だって闇属性とは言い難いけど……
剣に盾、鎧に弓矢、ヘルムもあるな、今のユピアーナ様なら角が無いから被れそう。
「御主人様、こっちを見てくれ」
「はいユピアーナ様、どの装備でしょうか」
「私に合いそうなのを選んで欲しい、私の御主人様だからな」
そう言って更に奥の宝箱から拡げたものは……!!
「こっ、これは!!」
「闇のランジェリーだ、闇魔法で相手を魅了する」
「透け透けじゃないですかー!」「どの種類が良い? 黒か青紫か、血の色をした赤もあるが」
(……単なるセクシー下着の選抜会ってだけじゃあ?!)
「あらこれ、お姉さんも欲しいわ!」
「サンドリーヌさん……」
「御主人様の命令ならばな、サイズを合わせたら二着は作れそうだが」
お子様にこんなの着せたら、
犯罪臭が凄いっていうか……あっ、22歳だから合法か。
「私も着たいですぅ」
「タマラは胸の部分でかなり生地を使うな」
「ダルマシオ様が喜んでいただけるならぁ……」
いやいやいや、
そんなこと言われても!!
(僕には刺激が強すぎるよう……)
ある意味、これが一番のお宝かも知れない。
「よし、メイド服がサイズが合わなくなったゆえ、ここで着替えさせて貰おう」
「えええええ、じゃ、じゃあ、あっち向いています」
「なんだ、メイドの着替えを視姦するのは御主人様の特権では無いのか?!」
いや何この魔神様の、
メイドに対する偏ったイメージは!
「ええっと、アイテムを確認していますね」
「おそらく危険な物も多い、注意するのだぞ御主人様」
「では私が見てさしあげましょう」「エクドナさん、ありがとうございます」
闇のアイテムをひとつひとつ確認する僕、
エクドナさんの解説を受けて重要そうなのを仕分ける、
なんだよこの『闇のローション』って、感度爆上がり効果とか!
(などと時間を潰していると……)
「御主人様、着替え終わったぞ」
「はい、ってええええええええ?!」
「これで外を出歩いても大丈夫なはずだ」
そう言ったユピアーナ様のお姿は、
闇のランジェリーを何重にも重ね着した姿だった!
確かに透け透け度はかなり無くなったが、で、でもぉ……
(よーく見ると、その、なんだ、うん、セクシー過ぎる)
「ええっと御主人様命令です、元のメイド服を採寸し直して着て下さい」
「そうか、ではアルメン」
「いえ、ここはわたくしめが」
ハウスメイドのオチュアさんが受け取った、
お裁縫得意だもんな、一日でやってしまいそう。
「まだ奥に宝箱があるな、こちらは何だ」
そう言ってユピアーナさんが開けると……!!
(うっわ、こっちはランジェリーというより、下着がぎっしり!)
ブラとショーツばっかりみたいだ、やはり黒が多い。
「これは全て新品ですわね?」
「生地の心地が良さそうだわ」
「お姉さんもこれくらいのが丁度良いわね」
二十代メイドの上三人が喰いつく喰いつく!
一歩下がって見ているタマラさんはと言うと……
「……下はともかく、上は私に合うサイズは」
「もちろんあるだろう、私への褒美、分け前だからな」
「でしたら試着してみたいですぅ」
うん、そういうのは後でこっそりやってもらおう。
「私達も、いただけますでしょうか」
「これを着ければ若返りますのぅ」「ほんに」
「久しぶりにじじいと」「あって困る物ではありませんゆえ」
(なんでメイドお婆ちゃん達まで喰いつくのーーー?!?!)
「……よし、ではその奥、これが本当に最後の宝箱だな」
「また下着ですか、これ以上にセクシーなのがあったら、それはもう紐では」
「御主人様が望むのであれば喜んで着るが……どれ」
開けると中にあったのは……!!
「袋、ですね……もしかして、ひょっとして!」
「ああ、アイテム袋だ、これは皆には嬉しいのでは無いか?」
「はい、容量にもよりますが、今の時代でも貴重品です」
見た目の十倍以上入る袋だ、
商人や冒険者の必須品だが、
闇魔法で造るのでなかなか出回らない。
(ウチの特産品ではあるんだけれども……)
製造できる職人が高齢化で、
なかなか数が作れなくなってきていると聞いた、
失われた技術も多いとか、でも、古いアイテム袋という事は……!!
「三十袋か、それぞれ好きに分けるが良い」
「ユピアーナ様の分は」
「私か? 私ならこれがある」
そう言って腕を何も無い所へ伸ばすと、
空間の中に吸い込まれて、おどろおどろしい剣を出した!!
「うわっ、それって伝説の」
「ああ、アイテムボックスだ」
「ひい爺ちゃんが使っていたスキルだ!!」
そう、袋すらいらないアイテム収納魔法だ。
「後で御主人様にも教えよう」
「えっ、これ僕も出来るんですか?!」
「闇魔法と光魔法を合わせれば可能だ」
うっわあ、僕、領主になれなかったらポーターでもやろうかなぁ、
いや商人向きだな、爺ちゃんは馬車くらいのサイズまで収納できるとか言っていた、
さすがに生きた馬は無理らしいけど。
「……ではとりあえずもう良いか、御主人様」
「そうですね、上で、ちゃんとした所でお話でも」
「腹が減った、何か作らせて欲しい」「えっ、ユピアーナ様が?!」
魔神様が自ら料理を!!
「メイドだからな、当然だ」
「キッチンメイド志望ですか」
「いや、あえて言うならオールマイティーメイドだな」
雑用では無くオールマイティー、
全てを完璧にこなせますよっていうプライドというか、
意識高い系な感じがする、実力が伴っていれば良いのだけれども。
(そこはまぁ魔神様だから、期待しちゃおうかな)
「では、わたくしと一緒に」
「うむ、ご主人様は好きな場所で待っていてくれ」
「あっはい、じゃあこの屋敷を見回ってみます」
キッチンメイドのウラヌスを浮かせながら先に行ったユピアーナ様、
あのお婆ちゃんがついているなら大丈夫だと思う、どんな料理が出てくるやら……
「ではダルマシオ様、私が案内しますねっ!」
「うんサンドリーヌさん、手が届かない高い所は任せて下さい」
「んもう、そこはタマラに頼むわよ」「私達の住居でもありますから」
そうなんだ、ここは身を任せよう。
(さあ、このばかでかいお屋敷を探検だ……僕のものでもあるって、本当かなぁ???)
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