第4話 魔王討伐のご褒美をみんなで分けあおうって! 前編!
かなり身長のでかい魔神ユピアーナ様、
いや、もう僕のメイドになったんだっけ、
周囲を見回すと壁にくっついていた魔石が回転しながら集まってきた。
「さあご主人様、この魔石、何だと思う?」
「えっと、七英傑が亡くなって光るということは……魂?」
「さすがご主人様、だがこれは言うなれば『魂の残り香』とでも言おうか」
ユピアーナの手の平に、
器用に縦に並ぶ七つの魔石たち、
それぞれ様々な色だが上ふたつが白系統だ。
(透明感のある白と、クリーム色……このふたつって、まさか)
「それって意思疎通はできるんですか、ひい爺ちゃんと話せるとか」
「いや、これはあくまで魂の一部、身体で言うと服、いや皮膚といった感じだ」
「生皮ですか」「とはいえ持ち主の『能力』を一部だが、貰い受ける事ができる」
一番下の濃い紫が、ひい爺ちゃんかな。
「それの分配って、全てユピアーナ様が貰って良いのでは」
「これは元々、私が彼らに分け与えた物だ、もう私の中には戻らない」
「あー、それを取り戻した訳ですね」「死んだら戻ってくるようになっていた」
能力かぁ、魔神様の与えてくれる物って凄そう、だけれど……
「あの、僕って大して強くないっていうか、魔法が使えません」
「これで使えるようになる、さすがに全て与えるとダルマシオが魔神の眷属となるからな、それは無理だ」
「いやいや、そういう形で無理して強くなろうとは」「そうか?闇魔法だけでも貰っておけ」
濃い紫の魔石だけがこっちへやってきた、
くるくる回って……この中に闇魔法が入っているのか。
「これって、ひい爺ちゃんの意志ですか? ってこれに意志は無いんですよね」
「だが子孫に受け取って欲しいとは言っていた、聞いてはいなかったか」
「えっと、あっ、遺言書みたいなのに」「書いてありましたよ、後でご確認くだされ」
うん、アルメンさんが言うのであれば間違い無いのだろう。
「でも僕、魔法自体は使えませんが光魔法属性を持っていて……」
「何もぶつかりあう事は無い、良い具合に包み込むであろう」
「闇魔法が光魔法をですか?」「闇の魔力を元からある光の魔力が、だ」
うーん、
これもまたひい爺ちゃんの遺産で、
僕に受け取って欲しいというのであれば……!!
「害は、無いんですよね」
「能力的にはな、ただ闇の魔力を持っているという事実が知られると……」
「あー、はいはい、でも隠せるんですよね?」「自ら語ったりしなければな」
他のお婆ちゃんメイドたちも頷いている、
ここは素直に貰っておけっていう空気らしい。
「ならその、いただきます」
「よし、メイドは主人の許可が無ければ実行できないからな、それっ!」
あっ、魔石から濃い紫の霧が出てきて、
僕の胸の中へ入っていった……なんだろうこれ、
ほのかにひいお爺ちゃんの気配、温もりみたいなのが入って来た。
(やっぱりこれ、一部とはいえお爺ちゃんの魂だったんだな)
カランカラン、と透明になった魔石が床に落ちた。
「……これでご主人様は闇魔法を使えるようになった、
また、魔法が使えると言う事は、本来持っていた光魔力も魔法として使えるという事だ」
「えっ、本当ですか?!」「後で教えてやろう、私のご主人様だからな」
……メイドが主人に『教えてやろう』って!!
(なんなんだ、この関係は)
でも、武闘派メイドというか戦闘メイドの中には、
その力が強すぎるゆえ主人より立場が上なメイドも居るとかなんとか、
あとは単純に小さな頃から親代わりのメイドとか逆らえないよね、うん。
(学園でクラスメイトだったレックは、お仕置でメイドにお尻叩かれてたって言ってたし)
ちなみにウチのメイドお婆ちゃん達の、
僕が幼い頃のお仕置は、くすぐり攻撃である。
「それで残りは」
「ダルマシオのメイドに授けよう、誰がどれを貰う」
「えっと、その説明からお願いします」
七つの魔石を上から順に説明して貰った結果……
勇者イスマエル→光の攻撃魔法
聖女ロリーヌ→光の回復魔法
剣士ハヴェル→火の攻撃スキル
戦士二グレアム→地の防御スキル
弓使いホーリーマリー→風の攻撃スキル
アサシンのヘルムート→水の補助魔法
大魔導師ギリオス→闇魔法全般(これは僕が取得済みだからもう無いよ!)
「なるほど、それを習得できると」
「今度はご主人様がメイドを紹介して欲しいのだが」
「あっはい、お婆ちゃん達を順番に」「いや、それで良いのか」
ここで副メイド長のイリスさんが近づいてきた。
「ダル坊や、よく考えなされ」
「えっ、何を」
「学院にメイドを連れて行くのじゃろ?」
あっそうだそうだ、
王都の学院にはメイドを連れて行くんだった、
でもそれは実姉のブリジット姉さんがひとりくれるはず……
「すみません、これってひとりにひとつですか」
「そうだ、ふたつは人間の身体では耐えられない」
「うーん、与えるのは後程(のちほど)、というのは」
ここでイリスさんの隣りに、
ざざざざざっと若いメイド四人が整列した。
(いや、若いと言ってもみんな僕より年上の二十代だけれども!)
「ダルマシオ様付きメイド長、カタリヌですわ」
「ダルマシオちゃん専用の副メイド長、サエラスです」
えっ、いつのまに?!
「ダルマシオさまのメイドに予定されております、サンドリーヌですっ!」
「同じくダルマシオ様のメイドに立候補しました、タマラですぅ」
知らない間に、更に増えてるううううう!!!
「ふむ、眼鏡に母性的に子供風に男の餌か」
「言い方! ユピアーナさん、略し過ぎですよ!」
「……メイド長以外は鍛えれば戦闘向きだな、カタリヌは回復特化で行こう」
そう言ってクリーム色の魔石が前へ。
「サエラスは魔法が一番、見所があるな」
「はいユピアーナ様、剣術もそこそこ」
「バランス型なら私が居る、最も私は全特化型だが……」
ふわふわと透明感のある白い魔石、光の攻撃魔法か。
「私は素早さが得意ですっ!」
「その低身長でか」
ユピアーナさん、はっきり言うなぁ。
「狭い穴を走って潜り抜けたりできます!」
ラット型モンスターかよっ!!
「では風の攻撃スキルだな」
濃い青の魔石がサンドリーヌさんの前へ、
いや頭の上へか、ちょっと意地が悪い気も。
「最後にタマラと言ったか、三つ残っているが」
「私は、弱いのでどれでも構わないですぅ」
「そうか、先陣を切るとして相手に攻撃を与えたい派か、相手の攻撃を受けて疲れさせたい派か、どっちらだ」
あー、これはそうか、
先手取って相手を倒そうとする時、
もし自分が負けるにしても、ダメージを負わせたいか相手のスタミナを奪うか……
(前者なら火魔法、後者なら地魔法かな)
「さあ、どっちだ」
「ええっと、そうですねぇ……選べません!」
「ならば、こちらだ」
水色の魔石、まんま水属性か。
「よし、ダルマシオご主人様、これで良いな?」
「ま、まあ、特に異論は……でも……」
「どうした」「姉さんに貰う予定のメイドにも、あげたいかも……」
むしろ、最優先はそちらに回したい。
「それはどのようなタイプのメイドだ」
「あっはい、一応は戦闘メイドもやれるらしいですが、
やさしくって、よく気が付いて、僕の、その……一応、婚約者候補です」
そう、僕に嫁の来る手が無かった場合の、
最後の最後、最終手段としてのキープされた婚約者、
それがブリジット姉さんに仕えているメイドの……!!
「その戦闘タイプは」
「わかりません、ただ僕はあまり戦わせたくは無いです」
「それならば、無理に与える必要はあるまい」
でも、本人が欲しがるかもしれないし、
あくまでも自身の防御として……いや、僕が護れば済む話か、
僕の所へ来たら通常メイド、非戦闘メイドとして傍に置いておこう。
「じゃあ、それでお願いします」
「よし、ご主人様の許可が出たのでメイド共、受け取ってくれ……
おっと私もメイドになったのであった、同僚の皆、受けて欲しい」
そしてまた魔力がそれぞれに、
全てが吸収されるとカランカランとまーた空の魔石が四つ落ちた、
残る魔石は二つ、紅い火の魔石と黄色い地の魔石だ。
「では残る二つは私が預かっておこう」
「えっユピアーナ様、持ち運びできるんですか」
「二つ程度なら、分厚いカードを胸の両内ポケットに挿入するようなものだ、そこまで邪魔では無い」
そう言って手の平へ魔石ごと吸収してしまった……
うん、二択になっちゃったけど、どっちか欲しいか会ったら聞けるな。
「さて、では部屋を出ようか、しかしこの身体では少し難儀だな」
うん、特に魔神の角とか引っかかりそう。
「身体のサイズは……これ位か」
「うわっ、縮んだ!」
それでも、どのメイドより身長は高いけど……
あっ、メイド服がちょっとぶかぶかになっちゃった。
「次は人間の姿だが……そこの四人、年齢は」
「28ですわ」「24です」「22のお姉さんよ!」「20ですぅ」
「ではバランスを考えてだな、26歳の拳闘士メイドで行こう」
とまあ、いかにも素手で殴りそうな逞しい女性の姿になった、
肌も当然、人の……ってメイド服のサイズ、早く正しいのに着替えた方が良いな。
「名前も変えた方が良いだろうがそれは後だ、アルメン、外はどっちだ」
「はいはい、あそこの階段へ……魔王討伐の物理的な分け前も置いてありますよ」
「そうか、楽しみだが全てご主人様のものだ」「えっ、僕の?!」
さあ、メイドお婆ちゃん達に気を使いながら階段を上がろう、
と思ったらアルメンさん達、五人とも宙に浮いた?!
「ユピアーナさんの力ですか!」
「これくらいならな、ダルマシオに魔力も貰ったし」
「え? えっ? えっ??」
(ひょっとして、あの口付けで?!?!)
いや口付けなんて甘いレベルじゃなかったけれども!!
「では私が先導します!」
タマラさんが張り切って階段を駆け上がって行った。
(あの地下二階にあった宝の数々かな……??)
出来ればそれも、みんなで分けあいたいな。
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