イカレた世界に転生させられたので、謎を解き明かします!
烏城 彰
第0話 プロローグ
母親が国花の蜜を飲んだことで俺は勇者として生まれた。
勇者の家系で勇者の子孫として僕は生まれた。
私は勇者ではなく、ただ魔法使いだった。
俺は、勇者になるために教育され、強制的に勇者にさせられた。
——そして、魔王をたおして、死んだ。
***
目を瞑っていても聞える波の音。
ザッパーンと心地の良い音だ。
魔王を倒して魔王城が落下してからの記憶がないが、どこかに流れ着いたのだろうか。
目を開ければ空は茜色に染まり、やっとこの世界に平和が訪れたのだと実感する。
今まで空は紫色で、太陽はこの世のものではないような形をしていたが、沈んでいくものが丸々としているのを見て安心する。
「よぉ、勇者セピア・ロペスさん」
声が聞こえたと同時に瘦せこけた青年の顔がヌルっと視界に入ってくる。
「うわっ、え?」
「あっちゃぁ、動けちゃうんだ……へぇ」
俺は驚きのあまり飛び起き、二歩三歩と青年から遠ざかる。
え、足音とか聞こえなかったよな。気配だってなかった。
「——君は今からあのイカレた世界で
「は、はぁ」
「そして、あの世界の謎を解明してほしい。俺でも解明出来なかった意味のわからん世界だ」
青年は俺の肩をがっしりと掴み、言う。
「ジョーテル・ジョーカーという奴を頼れ。そいつが仲間になってくれる」
頼んだ。
その言葉が聞こえた次の瞬間、耐え難い痛みが全身を襲う。
「っ……くっ……ゔっ」
痛いの一言で済ませるには惜しい痛みだ。
まるで全身に張り巡らされた血管を引き裂かれているような、心臓を握りつぶされているような、そんな感覚だ。
徐々に痛みが強くなり、奥歯がメキメキと割れ始め、身体は硬直し、食道を伝って胃液が口から溢れ出す。
——これは、ヤバい。死……ぬ……。
そう思った数秒後、目の前が真っ暗になり、誰かが遠ざかる音だけが耳に残った。
イカレた世界に転生させられたので、謎を解き明かします! 烏城 彰 @Ujo_akira
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