第41話 特殊スキル
季節は夏を過ぎて秋になり、冬に差し掛かる。
それぞれの役割を忠実に果たし続けた俺とクマ吾郎、それに奴隷たちは、努力に見合った成果を手に入れていた。
俺とクマ吾郎は戦闘能力がかなり上がった。
一流冒険者としてどこへ行っても恥ずかしくない実力だ。
「俺は一流。クマ吾郎は超一流かもな」
「ガウ!」
奴隷たちはおのおののスキルを磨いた。
錬金術のレナのポーションは、店で売っているポーションより一回り高い性能を発揮する。
宝石加工のバドじいさんのアクセサリーは、冒険で大きな効果を出している。
エリーゼも裁縫の腕を上げて、みんなの服を作るようになった。
イザクは農業スキルを上げて、見事に畑を耕した。
家の裏手はよく整えられた畑が広がっている。
秋まきの野菜が植えられて、もう少しで収穫できるという。楽しみだ。
子供のエミルと女戦士のルクレツィアは、そこまで変化はないな。
エミルはまだまだ幼い。
ルクレツィアは元からけっこう強かった上に、まだうちに来てからそんなに経ってないし。
「それにしても、みんなすごい成長ぶりだよなぁ」
ダンジョンから家に帰った俺は、レナとバドじいさんの新作を見ながら言った。
「世の中に錬金術師や宝石加工師は、たくさんいると思うんだけど。レナやじいさんは修行を始めてまだ半年そこらだろ。それが標準より良い性能のものを作るんだから、びっくりだよ」
「そうですね……。実はわたしも、ちょっと不思議で。やっぱりご主人様の人徳でしょうか?」
エリーゼがほおに手を当てて考えている。メイド姿だとどんな仕草もかわいいな。
「人徳はないだろ。なんかそういうスキルでもあるのかなぁ」
久々にステータスを見てみた。
名前:ユウ
種族:森の民
性別:男性
年齢:16歳
カルマ:11
レベル:28
腕力:35
耐久:24
敏捷:33
器用:36
知恵:25
魔力:29
魅力:13
特殊スキル
統率(小)
スキル
剣術:16.5
盾術:9.3
鍛冶:1.0
瞑想:12.8
投擲:14.4
木登り:5.3
隠密:10.4
鍵開け:9.1
罠感知:5.6
罠解体:5.1
軽業:13.2
釣り:3.3
魔道具:9.5
詠唱:11.2
読書:10.7
歌唱:0.6
装備:
鉄の剣(剣術ボーナス)
水晶の盾(魔力ボーナス++)
鱗の軽鎧(魔道具ボーナス)
魔法銀繊維のマント(詠唱ボーナス)
鱗のブーツ(敏捷ボーナス)
ルビーの護符(体力回復ボーナス)
お財布の中身:金貨換算で約三十枚
「え! なんだこの『特殊スキル、統率(小)』って!」
メダルで習得した覚えはないし、それっぽい行動も特に覚えはない。
思わず声を上げると、エリーゼも不思議そうに言った。
「でも、何となく味方がパワーアップしそうな名前ですね。統率」
「確かに」
いつの間にこんなの生えてたんだろうか。
俺たちは首をかしげながらも、分からなかったので保留となった。
統率のインパクトがすごすぎて忘れていたが、ついに魅力が上がったのも地味に嬉しい。
エリーゼが教えてくれた歌唱スキルのおかげだと思う。もう音痴とは言わせない。
後日、王都で色々と調べた結果。
統率は多くの仲間を引き連れたリーダーに与えられるスキルだと判明した。
仲間の数と忠誠心によって会得する。
効果は仲間にさまざまなボーナスを与えるのだという。
俺は今年になって奴隷をたくさん買った。
奴隷というより仲間に近い感覚で彼らに接していた。
そりゃあそんなに甘やかすつもりはなかったけど、彼らはあくまで人間。仕事仲間だ。その思いは変わらない。
だからみんなも俺に心を開いてくれた……と思う。
それが忠誠心という形で表れて、統率スキルになったのか。
確認されている統率スキルの効果はさまざまだが、その中に「仲間の潜在能力を引き出し、成長を促す」というのがあった。
ここ最近のみんなの急激な成長はそのおかげだろう。
そういえば、俺自身の成長よりもクマ吾郎パワーアップのほうが上なんだよな。
統率スキルの影響だったのか。
「そんなことってあるんだなぁ」
思わずつぶやくと、
「ガウガウ!」
クマ吾郎が得意げな顔で鳴いた。
まるで「分かってたもんね!」とでも言いたそうだ。
そんな顔をされると俺まで嬉しくなってしまう。
みんなが俺を信頼してくれるなら、俺も期待に応えないとな。
レナが作ってくれたポーションは性能が高く、高レベルの魔物にもよく効いた。
バドじいさんの護符も使い勝手がいい。
おかげでダンジョン攻略がはかどって、素材もお金もよく集まるようになった。
家に帰るとおいしい料理が待っている。
イザクが耕した畑で採れた野菜をメインとした、体に優しいメニューだ。
本日のメニューはロールキャベツと大根の煮物。
冬野菜がおいしい季節である。
「うまい!」
疲れた体に野菜の甘味が染み渡る。
俺が思わずじんわりしていると、レナとエミルが笑った。
「今日のお料理はエミルがほとんど一人で作ったんですよ」
と、レナ。
エミルは横で照れくさそうにしている。
「すごいじゃないか、エミル。いつの間に料理ができるようになったんだ」
俺が言うと、エミルははにかんでいる。
彼はしっかり食事を取るようになって肉付きと肌ツヤが改善されると、美少年になった。かわいい。
パルティア人にしては珍しいくらい色の薄い金髪、青い目。
少し毛色が変わった感じがするから、外国人の血がまじっているのかもな。
「レナおばちゃんに、少しずつ習ってたの。前も作っていたよ。今日は上手にできたから、ユウ様に食べてもらいたくて」
そうか、健気な……。
ところでレナは三十歳そこそこなんだが、おばちゃん呼びされて平気だろうか。
そっと顔色を伺ってみるが、特に気にしていないようだった。
「エミル、ありがとう。とてもおいしいよ。腕を磨いて、また作ってくれ」
「はい!」
大人たちはほっこりした表情で少年を見守っている。
冬の季節、外は雪のちらつく寒さ。
けれども家の中はどこまでも暖かだった。
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