第28話 修行の日々

 あれから俺は盗賊ギルドを拠点に活動を続けている。

 盗賊ギルドは便利な施設が揃っていた。

 宿泊所に休憩所、アイテム屋と魔法屋、武具屋、スキル習得所。

 カルマの上昇という意味では使えないが、それ以外の生活は大助かりだ。


 特にアイテム屋と魔法屋の品揃えがいいのが助かる。

 アイテム屋ではポーションを買い込んで、ダンジョン攻略に役立てている。

 魔法屋ではマジックアローの魔法書の他、戦歌の魔法書も買うようになった。


 この二つの魔法はどちらも初心者用で、戦歌の魔法は腕力と器用に一時ボーナスを与えてくれる。

 戦いのポーションと同じ効果だが、魔法の練習も兼ねて覚えてみた。

 攻撃魔法のマジックアローと違って、自己バフタイプの戦歌であればスキマ時間でちょいちょい魔法の練習ができる。

 たとえば町なかの移動中とか、寝る前のちょっとした時間を活用するわけだ。

 俺は少しでも強くなりたい。時間は無駄にはできないんだ。

 おかげで読書スキルや詠唱スキル、戦歌の魔法自体も扱いが上手くなったと思う。


 そんなわけで盗賊ギルド加入前よりずいぶん暮らしやすくなった。

 余裕が生まれた勢いで、ノルマ達成を兼ねてダンジョン通いを再開してみた。


 ダンジョンは自然発生する魔法の洞窟で、ときどき塔や砦のような建物の形を取ることもある。

 ダンジョンのボスを倒したり、そうでなくてもしばらく時間が経つと崩壊して消滅。

 また次の新しいダンジョンが生まれてくる。


 いったいどういう仕組みでダンジョンが成り立っているのかさっぱり分からないが、稼ぎ場として便利なので冒険者は皆通っている。

 ダンジョン内はアイテムや武具が落ちている他、ほとんど無限に魔物が出現する。


 本当にダンジョンって何なんだろうな。

 時々思うがこの世界はゲームそのものだ。

 まあ、いちいち気にしていても始まらない。

 利用できるものは利用し尽くして、生きる糧にしなければ。

 この世界はすぐに理不尽をふっかけてくる。それに負けないための人間の意志力、つまり根性だ。


「よしっ。ボス撃破」


「ギャアアァァ……ッ」


 今日も順調にダンジョンのボスを倒した。

 ここは野生動物ばかりが住み着いたダンジョンで、ボスはクマ吾郎の親戚みたいな熊だった。

 熊好きの俺としては心が痛んだが、当のクマ吾郎が殺る気まんまんで突撃していったので、気にしないことにした。


 ボスは倒すと宝箱を落とす。

 最近はやや難易度の高いダンジョンに挑むようになったせいか、宝箱に鍵がかかっているケースが増えた。

 初心者向けのダンジョンじゃあこんなことはなかったのにな。


 で、ここで鍵開けスキルの出番である。

 キーピックを取り出して鍵穴に差し込み、慎重に探る。

 カチリと音がしてキーピックが嵌ったら鍵穴を回してやる。これで完了!


 ガバガバの鍵なら簡単に開くのだが、中には難易度が高いものもある。

 そういうのに当たったらキーピックを何本も無駄にした挙げ句、結局鍵を開けられないこともある。

 俺の鍵開けの腕前はまだまだ覚えたてで、難しい鍵はまず無理。

 なのでそんなときは、盗賊ギルドに宝箱を持ち帰って売り払うことにしている。

 盗賊ギルドはさすが鍵開け熟練者の集団。普通の店より宝箱をいい値段で引き取ってくれるのだ。


 そんなわけで俺はダンジョン攻略をメインに暮らしている。

 カルマももう少し上げたいので、週一くらいのペースで町の依頼を引き受ける日を作っている。

 おかげでカルマの数値はだいぶ戻った。

 そろそろ犯罪者ではなくなったのではないか? と思うのだが、盗賊ギルドの生活が快適で稼ぎもいいため、ついこっちを優先してしまうのだった。


 秋も深まって冬になっても、俺はダンジョンに通い続けた。




・現在のユウのステータス。


 名前:ユウ

 種族:森の民

 性別:男性

 年齢:15歳

 カルマ:-4


 レベル:18

 腕力:21

 耐久:13

 敏捷:19

 器用:18

 知恵:11

 魔力:17

 魅力:1


 スキル

 剣術:8.8

 盾術:2.2

 瞑想:4.5

 投擲:6.3

 木登り:4.1

 隠密:5.4

 鍵開け:3.3

 罠感知:1.5

 罠解体:1.2

 軽業:2.8

 釣り:1.7

 魔道具:3.5

 詠唱:4.9

 読書:5.6


 装備:

 鉄の剣(剣術ボーナス付き)

 蔓草の盾(瞑想ボーナス付き)

 鱗の軽鎧(魔道具ボーナス付き)

 丈夫な布のマント

 鱗のブーツ(敏捷ボーナス付き)


 お財布の中身:金貨換算で約九枚(銀貨なら九十枚)


 ダンジョンで戦闘を繰り返したため戦闘系のスキル・ステータスがけっこう上がった。

 戦闘スタイルは相変わらず、クマ吾郎を前衛にユウはサポートで立ち回っている。

 ポーションの投擲もだいぶ精度が上がってきた。

 遠くの標的でもそれなりに命中させられる。


 魔法もなるべく使っているおかげで、魔力や詠唱スキルも上昇している。(当然、魔法書の解読もずっと続けている)

 今ではマジックアローは九割以上の確率で成功するようになった。


 鍵開け、罠感知、罠解体、軽業は盗賊ギルド限定のスキル。

 鍵開けと罠二つは名前通り。

 軽業は素早い身のこなしに対応するスキル。敵の攻撃の回避の他、高いところに飛び上がったり飛び降りたり、空中でバク転をしたりといった幅広い動きに関連している。


 ダンジョンで拾った装備品が徐々に増えている。

 今のユウの実力は、そろそろ中級冒険者に届きそう……といったところ。

 最弱の魔物グミ程度なら、何匹襲ってきてもきちんと倒せるようになった。


 ただし魅力だけは相変わらず死んでいる。



ユウ「魅力の鍛え方が分からないんだよ……」


クマ吾郎「ガウガウ(わたしのほうが魅力が高いのよ)」※クマ吾郎は女の子

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