一章 予言
第4話 ???時間 怪奇屋敷で全員集う
地を這うような低い音で脳みそにシミを広げていくような言葉が響く。
『──こっちにおいでよ』
「またかよこの怪奇! ホントしつけぇな!!」
リディエンハルトは片腕にノエを、もう片方の腕にプラチナブロンドヘアーの少女ルヴィを抱えて屋敷の中を走り回っていた。
どれだけ速く走ろうとも、後ろの気配は背後にぴったりとくっつき、裸足で廊下を歩むぺたぺたという音を響かせる。
不気味なことこの上ない。こちらは全力疾走で、向こうは歩いているのだ。
さらに、ずる、ずる、と何かを引きずる音が歩く音の後ろから付いて回る。
「きゃあああああああ!!!!」
「いやあああああああ!!!!」
可憐な女子二名がリディエンハルトの顔面に抱き着きながら大声で悲鳴を上げる。
「前が見えねぇって。怖いなら目をつぶっていろよ」
「なんかいた!! 今角からひょいって顔出して!」
「あああありえない角度に首が曲がって!!」
ノエとルヴィは一生懸命に状況を説明してくれるが、そろそろリディエンハルトの首も彼女たちの手によって締まりそうであった。
仕方なく、ここは戦力になるルヴィだけは自力で走っていただこうと、とりあえず両方とも床に降ろす。
「いやあああああ!! 総団長見捨てないでください!!」
右から大きな胸を押し付けて抱き着いてくるのはノエだ。
「きゃあああああ!! 総団長さまぁああ!! ルヴィも怪奇に殺されるのは嫌ですぅうう!」
左からウエーブのかかったロングのプラチナブロンドのヘアーをなびかせて抱き着くのはルヴィだ。
この状況でなければ両手に花で嬉しかろう。
「落ち着いてくれ。ノエもルヴィも見捨てねぇから。ノエは抱え直すだけだ。このままじゃ剣を握れねぇだろ。ルヴィは悪いがハルバードで自衛してくれ。サポートはするから」
そういって宥めた瞬間、リディエンハルトの背後にあった窓からバンッと音が響いた。
「ひぃっ」
「きゅぅ……」
振り返ると真っ赤な血で濡れた顔の女がこちらを見ていた。白くなるほど力を込めた両手で窓に張り付き、真っ赤な血で染めた顔は絶叫しているかのような恐ろしい形相。雨に濡れた黒い髪の女が血走る目玉をぎょろぎょろさせて外からこちらを見ている。
苛立つリディエンハルト剣を構えると窓に向かって刺突攻撃を加える。
しかし、窓は結界が張ってあるようで、傷一つ付かない。
『──中においでよ』
後ろからは裸足でぺたぺたと追いかけてくるおぞましい怪奇が袋を引きずってくる。
「もういやあああああああ!!!」
ノエは全力で走って逃げた。正直、ありがたい。なぜなら、ルヴィは窓の女を見て気絶したからだ。
やれやれと肩をすくめるリディエンハルトはルヴィを抱え直してノエの後を追う。
しばらく走っていると前方に階段が見えた。
「ノエ上れ!!」
「はい!!」
ノエはつんのめりながらもひたすら階段を駆け上がる。下からはぴちゃぴちゃと水滴が滴り落ちり、溢れかえる水の流れが上へ上へと迫り来ていた。
「そ、総団長!? 水が!?」
「構うな!! 捕まれば呑み込まれるぞ!!」
今はひたすら出口を目指して階段を上るしかない。
そして、扉が見えた。金属製の扉。赤い字で『非常口』と書かれている。
「下がれノエ!!」
ノエが半身をずらして場所を空けた。すかさずリディエンハルトは剣を薙ぎ払う。
スパアアアッン!! 扉は崩れ落ちた。ノエとルヴィを抱えたリディエンハルトは同時に中へ飛び込んだ。
光だ。まぶしい光に一瞬、視界が白く染まった。
「ノエ! 生きてたのか!」
「ノエ先輩!!」
「うおおお!! よっしゃああ!!」
「ははは! ノエは生きてるって言っただろ!」
数名のノエを迎え入れる仲間の声。
「総団長殿!!! ご無事で何よりです!」
「ここ何なの!? ぼくたち死ぬかと思ったよ!?」
どうやらデュオルギスもニアも無事だったとわかった。
目が慣れてくると、ここは屋敷の中のリビングだとわかる。
ここだけ明かりもついており、テーブルセットやソファーも用意されていた。
グーニーの無事を喜ぶディーウェザーのそばで、ゆったりとソファーに腰掛けるクローマー中将は当然といった表情でリディエンハルトに問いかけた。
「それで、総団長。これは一体どういう状況かね?」
リディエンハルトは腕に抱える不幸感染少女ルヴィの寝顔を見ながら、思う。
少女たちは天使の寝顔を見せながらも怪奇を起こす。
それは存在しないはずの悪意に違いなかった。
☆☆☆
新エピソード追加です!!
どうぞ怪奇をお楽しみください( *´艸`)
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