第41話 アリステアの神獣②
「アリステア! 避けろ!!」
ラヴィが高く持ち上げた頭をこちらに向けて伸ばしてきた。鋭い牙に噛みつかれたら大穴が開く。蛇なら毒の可能性もある?
「ラヴィはそんな事せん! ラヴィ!! ウチやで」
間に合わない。そう思ったけれど、もうすぐで牙がアリステアに届くという時、ラヴィの動きが止まった。
「ほら、な? 大丈夫や。ラヴィ! ほら、戻ろう? いつもみたいに……」
アリステアが両手を広げラヴィの頭に抱きつこうとする。だけど、ラヴィは頭をまた持ち上げアリステアから離れた。
「ラヴィ!」
持ち上げた頭をぶんっと振り、近くの建物にぶつかり次々破壊していく。
「クー、人が残っていないか見てきてくれ!!」
ソラの指示に従いクーが駆け出す。
「ラヴィ、苦しいんか? 大丈夫や! だから戻ってきてくれ!!」
「アリステア! 近付くな! それでオレもっ」
ソラがアリステアの方に行きたそうなのに、ここにいるのはもしかして私がここにいるからなのかな。
「ソラ、行って! 私は自分で走れます。ライ、グミ、少し離れるよ」
温泉召喚するにしても、暴れるラヴィをお湯にいれる事が出来るだろうか。私が近くにいないとお湯がでない。となると近くに寄らないとなのよね。
ソラに誘導してもらう? でも、危ないよね。絶対……。
「わかった。アリステアを遠ざける事ができたら、――お願い出来るか?」
「はい」
ソラもきっと同じ事を考えてる。考えなきゃ。蛇を大人しくさせる方法……。
クーが戻ってきた。
「オレはクーと一緒にアリステアを引き離しに行く。あたりの人の気配は消えているようだが、すぐに近衛騎士団が出てくるだろう。それまでに決着をつけなければ」
今なら、見られても最低限。人が来てしまえば温泉召喚が使いにくくなる。私はコクリと頷き、ソラ達から少し離れた場所に移動した。
「気をつけて下さい」
「ああ。行くぞ! クー」
「ワン!!」
「
ソラとクーの魔法が発動して、ソラに耳と尻尾がはえる。やっぱり尻尾がふさふさで撫でてみたい。
でも今はラヴィを治すのが先決だ。
ソラはアリステアのもとに駆け出した。本当に一瞬の出来事。
ラヴィの尻尾が大きく振り上げられ、次々に建物の壁が薙ぎ払われていく。その攻撃がアリステアに届く直前でソラは抱えあげ、跳躍し、彼(彼女?)をラヴィから遠ざけた。
「アリステア、任せてくれないか? オレ達がもとに戻してみせるから」
「嫌やぁ、そう言ってみんな――」
「オレだけじゃない。今回は、ユウカも手伝ってくれるんだ」
「……お嬢ちゃんが?」
「ああ、信じてくれていい。オレのクーも治してくれた実績ありだ」
「嘘やん」
「嘘じゃない」
うう、どんどん期待値を上げられてる気がする。けど、もっと大きい
「任せて下さい! 私がなんとかしてみます!!」
そうそう、会社で桃香にこれでもかってくらい失敗を押し付けられてたんだ。それに比べればやり方がわかった仕事だし簡単! 弱音なんてはかないんだからね!!
「ユウカ、蛇は寒いのに弱いゾ。温泉じゃ、相性が悪クないカ?」
グミがヒントをくれたおかげでいい手を思いつく。
「ありがとう、グミ。なんとか出来るかも」
昼までのレベルアップで新しく呼び出せる温泉はあと一つ。使ってしまえば、服を着たまま入れる温泉の為にまたレベルアップしにいかないとかもしれない。でも、今使わなきゃだよね!?
「ユウカ、今行く!」
ソラが再び跳躍し、ラヴィのもとに着地する。
蛇に睨まれたカエルさながら動けなくなると思った?
「残念! 怖くないよ! もう蛇に睨まれるのは二回目だもの。しっかり動けるんだから」
「ボクは睨んでなイゾ」
「でも、グミの方が迫力はあるよね」
「当たり前ダロ。ボクは高位の神獣だゾ」
軽口を叩きながら、だんだんと近寄ってくるラヴィに対応出来るようグミとライが私の前に立つ。大きくなって戦うつもりなのかな。でも、サイズ的にそのままでいて欲しい。
「はいはい! ライ、グミ。ちょっと我慢してね」
「わかった」
「何する気ダ?」
「こうするつもり! 温泉召喚!!」
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