第34話 仮面の女からの依頼は受けますか?
「あら、貴女が魔女ですの」
「はふぇ?」
クッキーをかじってる時にこの場に似つかわしく無い艶やかな格好の女がやってきた。ソラが使ってた様な仮面をつけている。この世界では仮面を持ち歩くのが常識なのかしら。仮面の奥に見える目、美人そうだけど赤のアイラインが厳しそうにも見える。唇も赤色できつい印象だ。可愛い系メイクの方が似合いそうなのにちょっともったいない。その女が魔女か?と聞いてくる。両隣は空だしここには私しかいないから私に聞いているんだろう。
「ひょっほ、ふぁっへふははい(ちょっとまってください)」
急いで口の中のものを飲み込みコーヒーで流す。
「魔女じゃなくて私の名前は優花ですが……」
「ふぅん、囚われているというのにずいぶんと図太そうですわね。こんなところでくつろげるなんて」
「はあ、まあ……」
正直わけもわからず牢屋にいれられたのだ。不安ではあるけれど、私には
「貴女が魔女なら
「えっ、ここから出られるんですか!?」
出られるならライ達を探しに行ける。けど、お願いってなんだろう。どこかに一緒に行かないとだったら先にライ達と合流して説明しないとかな。
なんて考えていたら、とんでもないことを彼女は言い出した。
「ある人物を消して欲しいのです」
見張りに聞かれないようにだろう。私にだけ聞こえるように小声で囁く。
「消して……」
「そう。出来て?」
「無理無理無理です」
人を消してって、そういう意味だよね!? そんな事出来る訳無い。
「ああ、別にどこか遠くに連れて行ってもらうだけでもいいのですよ?」
「無理無理無理です!」
それも誘拐っていう立派な犯罪ですっ!!
私が首を横に振りまくるものだから、相手は呆れたように蔑み、立ち去っていった。
「なんなの、いったい……」
私、面倒事に首突っ込んでる? あんなに簡単に消したり誘拐したりをお願いするような危険な場所にようこそ状態なの!? あ、私が今まさに誘拐軟禁中だったっけ。
………………よーし。
「温泉召喚」
こんな時はあったまろう。そうしよう。
足湯を出して、寒くなったからだを足から温める事にした。はー、あったまるう。
うん、ここは危ない世界なんだわ。ぬるま湯日本にはやく帰ろう。その為には、ソラと合流して帰り方を一緒に探してもらって桃香を見つけて引っ張って帰らないとなのよね。うーん…………。でも、私が帰っちゃうとライとグミを置いていくことになっちゃうんだよね。地球にはライやグミみたいな生物はいないしなあ。でも蛇と亀なら小さくなってもらえば一緒に住めるかな。まあ、まずは帰る方法とこのからだの事を調べないと――。顔はちょっと若返ったから化粧品が変わったで通じるかしら。髪は染め直せば。何とかなるかな。
…………でも、ここから戻ったらソラとはもう会えないんだよね。守ってくれるって言ってた。日本に帰ることが出来たとして、そんな事言ってくれる人に今後私は出会えるのかな……。
私がカイとそのマスターを助けることが出来て、ソラに日本に帰る方法を探してもらって実際に帰るまでの関係なのに期待なんかしないほうがいいのかな。
「もっと知りたいな……」
まだまだ知らない事がいっぱいだもの。神獣の事もこの世界の事も、ソラの事も――。
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