第31話 異世界の市場を歩こう①

「……入れない、ですか」

「すまない。やはり神子の再来かもしれない件で警備が厳しくなったようだ。身分証がないユウカと赤獣ではない神獣の二人は城の中に入れることは出来ないと」

「まあ、そうですよね」


 お城の中なんて、社長室よろしく重要な人や物、機密で溢れてるだろうしどこから来たのかもわからない怪しい人間なんて近付けたくないよね。


「僕達が赤獣じゃないから、ユウカが困る?」


 ライがしょんぼりとしてる。グミはそんなライの事など気にせずあくびをしているけども。


「違うよ。ライ、私は別に困らないのだけど。うーん、ソラが困るのかな?」

「そうだな。彼がいまどうなってるのかもまだ確認も出来ていないし」

「どうしましょうか」


 と、言っても私達が中にはいるのは難そうだ。なら、ソラだけ一度中に入って様子だけでも見てくればいいのではないだろうか。


「ユウカ達はここで待っていてくれないか。オレは中に戻って彼の様子を見てくる。そして、直接ユウカ達を迎え入れるように頼んでくる」


 そうそう、それが……って、ええええええ!?

 彼に直接頼むって、ソラはよほど上の人間? まさか、社長に次ぐ部長クラス!? 偉い人なの!?


「ここで待つのはいいんですが、ちょっと目立ちすぎませんか?」

「ああ、そうだな。ならこのあたりで――」


 手を持ち上げられ、チャリンチャリンと硬貨を数枚渡される。


「これでそれなりの買い物が出来るだろう。あたりの店でも見て待っててくれ」

「はあ……」


 そう言われても、これがいくらになるのかわからないし、きっと使えない。ウィンドウショッピングになるだろう。


「すぐ戻る」

「いってらっしゃーい」


 小さく、あまり頑張らなくていいですよーと呟きながらソラとクーを見送った。


「ユーカ、どうするの?」

「ユウカ、腹減っタ」


 グミの言葉に反応して私のお腹まで鳴りだした。


「そうね。食べ物買えたら買おうか」


 お買い物出来るかしら。まるで小学生のおつかいでもしてるみたい。お金の価値がわからないし、どうやって買い物するかもわからない。それが食べ物かどうかも。まあ、やってみて無理だったらキャンプ魔法に頼ろう。


「行ってみよう」

「うん!」


 そうだ。この街にきているなら桃香を探す事もできる。私と似た格好の人を見なかったか聞いてみよう。

 指輪のおかげで皆喋ってる言葉がわかる事だし。指輪を返して欲しいと言われる前にしておかないと。


「ユウカ、あっちにいい匂イするのがあるゾ」

「ユーカ! キラキラピカピカしたのがある!」


 さっそく通りに出て並んでいる店を眺めて歩く。パンや果物なんかを置いてる食べ物屋、アクセサリーや護身用で使えそうな小さめの武器なんかが並んでいる道具屋。他にも色々なお店がたくさん並んでる。

 きっとお城に近いほど場所代もかかるんだろうな。近いところほどきれいで置いてるものもすごく多い。たぶん、お値段も……。だけど端っこまで見て回ったらきっとソラが探す時に大変になってしまう。出来るだけ離れないようにしないと。


「と、思ってるのにもー! ライー、グミー! まってよー!」


 二人は元気いっぱいで次々に店を見て回っていた。子どもってこういう時は素早いのよね。私も小さかった時は、旅行帰りで疲れてる父を置いてさっさとお土産コーナーに走っていったりしてたっけ。思い出しながらくすっと笑い、私はライとグミを追いかけた。

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