第30話 無事、街に到着する。
「うわあ、大きな街ですね」
外国風の街並み。ビルや近代的な物がない。映画のセットみたいな少し古い時代にありそうな洋風な建物が並んでいる。中央にお城があって街全体を見渡せるようにしてるのかな。
「ここまでは手続きなしでも入れるんだが、ここから先、城の中に行くにはユウカ達の通行証を発行してもらわないとなんだ」
「あ、そうですよね。セキュリティ大事です!」
「それにしても何だか街が騒がしいな」
「そうなんですか? にぎやかでみんな笑顔で嬉しそうで、これが普通ではないんですか?」
「いや、少し前まではそうだったが……神獣が黒くなる奇病が流行ってからは」
「あ、そうだ。国中で人も黒くなってるって言ってましたね」
「そう、それで最近はここまでのにぎやかさはなかったんだ。どこか暗い顔をした人がたくさんいたから」
ソラが馬からおりて私一人馬上に置いていかれる。お願い
「あれ?」
見覚えある神獣がこちらを見ていた。温泉に浸かっていったタヌキっぽい神獣。良かった、マスターのところに帰れたんだとちょっと嬉しくなる。
タヌキ君の横に立ってるマスターらしき人物のところにもソラが歩いていく。まだかかるのだろうか。
馬を刺激しない様に氷のように固まっていると話し終わったようでやっとソラが戻ってきた。
「おかえりなさい」
「ああ」
ソラは仮面を外し、馬上に戻ってきた。
この仮面にも何か魔法でもかけてあるのかな。ソラの服と外套に魔法がかかってるからきっと何か効果のある道具なんだろうな。
仮面を取ったソラはまた難しい顔をしていた。
「どうかしましたか?」
「え? いや……先ほど聞いた話の内容が気になってな」
「いったい何が?……って、あまり聞かない方がいい内容だったりしますか?」
「そういうわけではないが、――――昨日赤い鳥の神獣を連れた女性が城に入っていったそうだ。それからすぐ、街中で起こっていた神獣の行方不明や黒くなる現象が次々に解決していっているそうだ。その為、城に連れていかれた女性が神獣、赤獣の神子なのではないかと噂が広がっているようだ。神子の再来に次は自分のところを解決して欲しいという期待と再来の祝福を送りたいという人々で賑わっていたんだそうだ」
「あー、えっとそうなんですか」
赤い鳥を連れた女性って、もしかして桃香のことだったり? 桃香もしくはその神獣の神子が問題解決してくれているなら、私は別に温泉召喚をしなくてすむのでは? それってとってもいい事ではないでしょうか。だって、私が温泉召喚した場合受ける精神的ダメージが大きすぎるから。
「――急ごう。もしかすると城に入るのに手間取るかもしれない」
「え? でもその人がいるなら私は必要なくなったのでは?」
「あくまで噂だ。この目で確かめていないのだから、確かめるまでは一緒にいて欲しい」
「……はい」
確かめてもし本当だったら、もうソラにとって私は何でもないただの他人なのかな。確かにちょっと前まではそうだったけど……。
もうお別れなのかと少し寂しく思うのはきっと、お願いをきく代わりに守ってもらえる頼れそうな人と縁が切れてしまうのが怖いからなのかな。
私一人で桃香を探して、元の場所に戻る方法を探せるかな。不安な気持ちを持ちながら私は正面に立つ大きな城へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます