第28話 色で隠せないかな?
『レベルアップしました。呼び出せる温泉が一つ増えました』
「やったー! また一つ増えた」
順調に近場にいた小さな神獣達の黒くなる病の治療とレベルアップを続けていた。
レベルアップを告げるいつもの声。よし、新しい温泉を増やせるぞ。さて、何がいいかしらと考えてみる。
「服を着て入る温泉が思いつかないなら、お風呂に浸かってる間だけでも見られないような色付きの温泉なんてどうかしら!」
閃いて叫ぶ。けど、ライもグミも次の獲物(レベルアップの為の黒い神獣達)を獲りに行ったので誰もいない。あの謎の声さんも反応してくれない。
ちょっと寂しくなりながら、色付き温泉を思い浮かべる。そう、たしか金泉ならがっつり色がある。中に浸かれば肌色は隠れるんじゃないかしら。
「とりあえずやってみましょう。温泉召喚! 来たれゴールデンホットウォーターの湯!!」
関西圏にある、とある温泉を思い浮かべ呼び出す。ここには数回行ったけど、温泉気持ち良かったなー。
温泉召喚は見事成功し、赤茶色い見た目血の海のような怪しげな温泉が現れる。
「わーい。大成功!」
さっそく中に入り湯を堪能する。うん、思った通り。赤茶色の湯はしっかりと肌色を隠してくれた。そして、気持ちいい。
「ユウカー! 次持ってきたゾー! 温泉は出してるカー?」
グミの声が聞こえてきた。と思ったらすぐにのそりと大きな体を見せる。今回も黒い神獣ちゃん達がいっぱいだ。いったいどれだけの神獣が黒くなってるんだろう。
「あ、おかえりー。わー、いっぱいだねえ!」
ゆっくりと湯の中から立ち上がる。しっかりタオルで押さえながらね。あれ、ライがいない?
「ライはどうしたの?」
「ライは足が遅イからまだかかると思うゾ」
「そっか。このお湯は塩があるから指輪が濡れないように気をつけてって伝えようと思ってたんだけど」
「すごい色の温泉ダナ。まるで血みたいダ」
「そう、でも気持ちいいんだよー。赤茶色なのは温泉の中に鉄分があるからみたいだよ」
「この中に入れて大丈夫なのカ?」
「…………たぶん?」
「タブン……」
念の為なのか、グミは自分の尻尾の先を湯に浸けていた。私がこうやって浸かっているのに信用がない……。
「……まア、大丈夫カ」
確認が終わったようで、捕まえていた神獣達を次々に温泉に入れていく。
うん、傍から見たらきっと恐ろしい魔術でも開始する蛇使いの魔女に見えそうだ。でも、神獣達はちゃんと黒くなる病から元の色に戻って……。今度はちょっと赤茶色になっちゃったかもしれない。
「上がったら洗い場で一回流そうねー」
「そうした方ガ良さそうだナ」
グミと二人で笑い合う。
「僕も! 僕だって、いっぱい連れてきたからねっ!!」
笑い合っているとライが両手いっぱいに神獣を抱えて戻ってきていた。あれ、服を着ている。もしかして魔法のかかる範囲とかあるのかな。って、ちょっと待って! まだ指輪の事ライに伝えてない!!
なのに、ライは飛び込んできそうな勢いで走ってきている。ちょっと遅いけど……。
「待ってー! 飛び込まないで!」
「えええええ!?」
「まったク」
ベチンッといい音を響かせグミがライを止めた。セーフなのかな?
「✕✕✕✕✕! ✕✕✕✕✕✕✕✕!?」
私の叫びを聞いてソラまで飛んできた。
「何でもない! 何でもないのー!!」
指輪がないからソラに言葉が伝わらなくて、私は血の色の温泉の中にブクブクと沈んだ。
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