第27話 神獣との絆、契約を交わす
「オレは少し離れたところで探している。何かあったら呼んでくれ!」
ソラとクーが離れたのを確認し、お仕事開始だ。まずは洗濯。ランドリーコーナーのある脱衣所込みで温泉を呼び出す。電源って入るのかしら?
ソラの服を持って洗濯機の前に立つと勝手に電源が入った。うん、魔法だ。これも魔法。気にせず中に服をいれる。洗剤は自動投入されるのかな。信じてみよう。スタートボタンを押し、次の工程に移る。
まだ試してなかった、脱衣所で服を脱ぐとどうなるのか。脱衣所のロッカーに服を脱ぎ畳んで置いていく。
「これは普通にできるのね」
置いていく服は少し心配だけど、次だ。指輪を外す。
中に入ってしまうと服判定され消えてしまうんだっけ。思い出せない。そういえば指輪はそのままあったかも……。だってソラと話せていたもの。この指輪も魔法の力があるから?
でも念の為、外の手洗い場で試しておこう。
石鹸を泡立てる。指と指輪の隙間に泡を滑り込ませる。
「取れたー!」
良かった。無事指輪は外れた。外れたけど、石の色や輝きは変わらない。私が持ってるからだったり?
「ライ、グミ。どっちかこれを持っててくれる?」
「ライの方ガ適役だロ」
確かにグミだと頭から通して首が締まったら大変よね。尻尾もはまって取れなくなったら大変だ。
「ライ持ってくれる?」
「うん」
ライの手に乗せる。
「変わったね」
「そうね」
指輪の石の輝きが見てわかるくらい減った。鳥みたいな光も無くなってる。
いやいやいやー、やっぱり偶々だよ。偶々、指輪が疲れて輝きたくなくなったから。……指輪が疲れる事ってあるのかな。
「まア、気にしててもしょうがなイだロ! レベルアップならまたボクの出番だロ!」
「そうね。グミ、またお願い出来る?」
「任せロ!」
グミが大きくなって準備する。よし、いっぱいレベルアップして知ってる温泉総当たりだわ!!
もしかしたら、いつか服を着て入れる温泉に当たるかも!
「頑張るぞー」
「行ってくル」
「……」
露天風呂から外に出ていくグミをライと私で見送る。
ライが頬を少し膨らませているように見えた。
「どうかした? ライ」
「僕だって、契約さえしていれば……」
「契約? そういえばグミも言ってたね」
ライの手を引き、露天風呂へと向かう。
「契約って何?」
「……神獣は守護する者に、守護する者は神獣にお互い加護の口づけをするんだ。そうすればお互いの絆、力が強くなる。本当は生まれてすぐするんだけど、僕は――」
「あ……」
本来のマスターはたぶん桃香だけど置いていかれたから。辛い事を思い出させてしまったかもしれない。
「ごめんね。そっか。そういうのがあるんだね」
桃香はここにいない。契約を結ぶ相手がいない。なら私は何も出来ないのだろうか。
「ユーカ、僕達のマスターになってよ」
「ん、え? え? 私でもいいの?」
ライが私の目をじっと見てくる。
「だって、僕達はまだ契約してない。だから、ユーカがいい!」
「え、でも口づけって」
キス? キスするの? ライと? えええ?
ここに来てからの何度目かの頭の中のぐるぐると戦う。えーっと私ファーストキスもまだなんですけど。これは数に入りますか?
「ユーカ、してもいい?」
黒くて丸い可愛い目が、ライの顔が近付いてくる。
「あー、えーっと、ちょっと」
ここで嫌だって言ったら傷つけてしまうだろうか。
「契約はしてあげたいけど、ファーストキスはっ!!」
「ほんと!?」
「うん。だからちょっと待ってー!」
「やだ!」
ちゅっとほっぺたにライの唇が当たった。
「はい、次ユーカだよ」
あ、うん。そっか。ほっぺたでもいいんだー。それなら……。
ライの柔らかそうなほっぺたに軽く唇を当てる。
「えへへ。これで、ユーカの本当の守護神獣になれた」
「そうなのかな?」
「すぐわかるよ!」
ライが駆け出す。
「グミー! ユーカが僕達のマスターだよ!!」
グミに報告にでも行くのだろうか。でも、服くらい着て行こうよ――。
「まったく……。って、ああああ!?」
気がつけば露天風呂の水が溢れんばかりに勢い良く出ている。すごい水量だ。
まるでライが喜んでるのに呼応するみたいに水が溢れてる。
勢いが凄すぎて湯口から出てくる水が噴水になってたのには笑っちゃった。
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