第26話 その服の効果はありますか?
言ってしまった言葉は取り消せない。私は意を決して説明を試みる。ソラの顔が驚きと気恥ずかしさからだろうか少し赤いのが本当に申し訳なく思う。
「あの、脱いで欲しいのは裸になって欲しいというわけではなくてですね。温泉を呼んだ時その、服が消えてしまう現象がありまして――」
「ああ、あの――」
「ハイ、あのアレなんですが、ソラさんの服はなぜか靴以外はそのままでしたから。もしかしてその服を着ながら魔法を使ったら服を着たまま温泉が呼び出せるのではないかと思ったんです」
「なるほど、わかった。だが、オレの血で汚れてしまっている。これをユウカに着せるのは――」
「大丈夫です! 出来るかどうかを確かめたいだけなので、心配なら中に合羽を着ればいいですし!」
リュックサックの中に雨具は入ってるはずだ。合羽だけ消える可能性はなくはないけど、試してみないと何もわからないよね。
「そうか、なら――」
上着を脱いで渡される。中にもう一枚服を着ていたのでホッとした。
「この上着だけ借りますね!」
そうだ、外套を返さないとと思い出し畳んで置いていたそれをソラに渡した。彼はすぐに貸してもらった上着の代わりにと外套を羽織りなおしていた。
「それじゃあ試してきますね!!」
ソラから距離を取り見えない位置に移動する。
「み、見ないで下さいねー!」
お願いは忘れず、一声かけるとすぐに「ああ」と返ってきた。
ソラの上着を上からばさりと羽織る。私が着るにはやはりかなり大きい。ダボダボだけどこれなら上着だけでもしっかり全身隠れる。
「お願いします!! 温泉召喚!!」
すぐに結果はわかった。だって、スースーするから。
駄目だったかあ。温泉を消すと服は元通り。上着を脱いで畳む。ふぅとため息をついてからトボトボと三人が待つ場所まで戻った。
「どうだった?」
「顔を見れバわかるだロ。失敗ダナ」
「そうなのか」
「はい、その通りです。ダメでした」
私が着ると私の服として認識されてしまうのかな。私だけダメなの? でも、ライも消えるから、どうしてだろう。
「すまない、期待に応えられなくて」
「いえいえ、ソラさんのせいじゃありませんから」
やっぱり自分で服を着て入れる温泉を呼び出せるようにならないとなのかもしれない。よし、レベルアップしよう。
「――もしかしたら、その服では意味がないのかもしれない」
「え?」
結論づけようとした時、ソラが言った。
「どういうことですか?」
「この服には魔法がかけられているんだ。着ている人間以外の魔法への抵抗力。その為、オレが着ていた時はユウカの魔法に対して抵抗したんじゃないか? ユウカが着ると着ている人間の魔法になってしまうから、意味がなくなったと」
「そうだったんですね」
それなら確かに意味がない。魔法ってそんな事もできるんですねと新たな知識を得ただけか。
「それならユーカもそういう服を作ってもらえばいいんじゃないのかな?」
ライが私の袖を引っ張りながらソラに聞いている。
「そうダ、その魔法をユウカの魔法に対する抵抗力にすれバ」
「そんな事出来るの?」
一筋の希望の光が見える。慌ててソラを見ると難しい顔をしていた。
「出来る……とは思うがこれは気難しい人物が作った
「出来るかもなんですね!!」
「ああ、そうだな。ユウカに必要な物だ。よし、オレから頼んでみよう」
やったー!! 希望が見えた。これで服を着たまま温泉召喚の可能性が増えたのでレベルアップにも気合いが入る。
「よーし、ライ! グミ! レベルアップしにいこう」
そうだ、そういえば思い出した。
「ソラさん、これもう少し預かってても大丈夫ですか?」
「駄目だったのにか? 別に構わないがいったい何に使うんだ?」
「はい、洗濯しようかと!」
スーパー銭湯「湯〜屋」併設コインランドリー。そう、脱衣所のところに洗濯乾燥機コーナーがあるのを私は思い出したのだ。
レベルアップしながら洗濯、浮腫んだ指からの指輪外し、やることはいっぱいだ!
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