第24話 神獣の王と神子
「そうか、ありがとう。よろしく頼む」
私が頷いたので、ソラはホッとした表情になり手を放してくれた。自由になった手が空中で改めて人差し指ツンツンを始める。
「あの、あまり期待とかしないで下さいね。あと私、桃香さん……後輩を待たないとなので今日の昼過ぎくらいまではここにいるつもりなんですが……」
「もちろんその後でいい。コウハイもこのあたりで出会った人間と一緒に行ったのだったらおそらく行き先は一緒のはずだ。ユウカが思う時間までオレはこのあたりでクーとともにカイの捜索をしておくよ――」
行き先が一緒なら、さっさと行ったほうがいいのではないか。――――待っててもこない気がする。だって、夜が明けるまで放置されているのだもの……。
ソラだって出来るだけはやく行きたいと考えているだろうし……。
はあ、あまり
「じゃあ、お昼まで待ってこなかったら行きましょう。メモを残しておけば誰か気がついてくれるでしょうし」
「わかった」
「指輪ってお借りしたままで大丈夫なんですか?」
「もちろんだ。オレがそばにいればいつでも返せるだろう? それに必要があればその時に――ッ!?」
突然また手を掴まれた。痛くはなかったけどびっくりする。
「あの――、ソラさん?」
「……どういうことだ?」
「どういうこと?」
いきなりだったからライも何事かと私とソラの間にきて毛を逆立てた。
「ああ、すまない。驚かせたな……。いや、でも……ユウカの守護神獣はどちらかというと黒獣の見た目だ……。何故……?」
ソラは手を放し考える素振りを始めた。
「あの、いったいどうしたんですか?」
「ユウカ、キミはもしかして赤獣の神子かもしれない……」
「神子?」
「ライ、神獣の姿を見せてくれないか?」
前に聞いたような。でも、神子って何だっけ。ライが神子という言葉に反応し、すぐにしがみついてきた。
ソラの問いにも答える素振りは見せない。
「どうしたの? ライ」
ふるふると頭を震わせている。置いて行かれた時のように。
「大丈夫。行く時はライもグミも一緒だよ」
そっと撫でてあげる。くっついたままだけど震えは止まった。
「ソラさん、その神子っていうのはなんですか?」
「……神子というのはだな、四神獣それぞれにも王がいて、その神獣の王のマスターに選ばれた者の事だ。神獣の王に選ばれし子で神子」
「あれ、でも神獣の王ってあの鳥にも言ってませんでしたか? なら、そのマスターが神獣の神子なのでは?」
「あれは形式的なものなんだ。王家の中で一番強い赤獣、……鳥の神獣を授かった者が王になり、その神獣も神獣の王であると」
「えっと、つまり神獣の王は二種類あるって事ですか?」
「そうだ。そして王家とは違う、言い伝えの神獣の王は人の姿をとる事があると聞いている」
「人の姿……」
まさしくいましがみついているライが目の前で亀から人の姿に変身した。なら、ライは神獣の王様なの!?
「伝えられているのは他にもある。神獣の王が現れる時、それすなわち国が乱れている時である。それを治める為に選定されし神子とともに国を巡る。最近でも実際にあった話がある。大雨が降り続け沈みかけた国を青獣の王と神子が救ったんだそうだ。今も王の側近として国を回り平穏を保ち続けているらしい」
「そ……、そんなすごい人のわけが……私、ただの……」
「神獣の神子は神の言葉を使うとも聞いている。ユウカのそれが神の言葉なのではないか? その指輪も過去の赤獣王とその神子が遺した神獣石を加工したものなんだ。次の神子が現れた時、赤く輝くと言われている。それと、神子と意思疎通が出来るように言語通訳の魔法を封じ込めてあるんだ」
「赤く輝くってでもこれは最初からこんな感じの綺麗な赤色でしたよね?」
「いや、二日前までは赤錆色だった。昨日の早朝から宝石が段々と赤く輝き出したんだ。そして今宝石の中に赤獣の印が出ている」
「あ、本当だ。宝石の中に小さな鳥マークがありますね」
小さな赤い宝石の中に燃える炎の鳥が飛び立とうとしてるみたいな光が見える。
「一度外してみてくれないか?」
「あ、はい」
指輪を外そうと掴む。
「…………あの」
「どうした?」
「ごめんなさい。
外れなかった。寝不足が祟ったのだろう。だって昨日はするっと入ったんだよ? 急に太るなんて、ないよね? ないよね!?
「無理に外すのは良くないだろう。自然に外れるようになるまでそのままで。ただ、つけている時と外している時の違いを確かめたかっただけだ」
「すみません」
石鹸で外せないかあとで確かめよう。
「それにしても、神子ならばますますユウカにはともにきてもらわないとかもしれないな」
「どうしてですか?」
指輪と格闘しながらソラに尋ねる。
「……国中で異変が起きているんだ。神獣が姿を消し魔法が使えなくなった者や体に黒い痣が出ている者がいる。もしかしたら、ユウカはその異変から国を救う為に神に選ばれここに呼ばれたのかもしれない」
うう、話がますます大きくなってないですか? 国中で起こってる? ということはそのたくさんの人達の前で温泉召喚を……。無理いいいいいいいい!! 考えるだけで頭が痛くなる。
「すまない」
頭を抱える私を慮ってか、ソラが頭を下げる。
「ううう、ソラさん! 時間まで私レベルアップします! レベルアップして服を着たまま入れる温泉を召喚してみせます!!」
「え、あ、そうなのか?」
「はい! なので、その間は出来れば、その……見ないで下さいっ!!」
「わかった。警戒しつつ気をつけよう」
やるしかない。きっと出来るはずなのだ。答えがもうすぐ出てきそうなんだもの。でも――。
そうだ、先にソラの服を借りて温泉召喚してみよう。だって、ソラの服は温泉召喚してもそのままだったんだもの。きっとあの服には何か秘密があると思うの!!
「ソラさん、もう一つお願いがあります」
「なんだ? 出来ることなら何でも言ってくれ」
「では、服を脱いで下さい」
「…………は?」
しまった! 服を脱いで下さいって、何言ってるのよ! 私!! どう考えてもめちゃくちゃ危ない人じゃないっ!?
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