第22話 漆黒に染まる赤獣の王③
呼び出したのはでっかーい湯。炎に囲まれているのは変わらないけれど私達はすでに温泉の中に浸かっている。
「いくゾ! ライ」
「わかった。グミやるよ」
ライは湯の中に手を突っ込み、何かを唱える。
「いっけえええええええー!!!!」
手を引き上げ黒い鳥に向かって突き出す。その腕の動きに合わせて大量の湯がまるで蛇のような形をとり黒い鳥へと発射された。
「やった、当たったよ!」
黒い鳥の胴体に温泉の湯がかかりそこの黒色が赤色になった。赤色、私の持っていた卵の子と同じだ……。
ただ、湯が当たらなかった場所は黒いまま。
「カイ!! もとに戻ってくれ!! お前のマスターが――」
バサッと上から強い風が吹く。黒い鳥が羽ばたき高く舞いあがったからだった。
あそこまで高いと声なんて届かなさそう。さっきの風の影響だろうか、まわりの炎はすべて消えて危機的状態からは脱したみたいだ。残ってるのは、ライとグミと私とソラ達が温泉に浸かってるのほほんな景色?
…………、うん。私、服は着てない。ライも――、ってまって!? ということは、ソラ達も!?
ソラの顔を見る。目が合った。そしてすぐ、ソラは顔をそらした。
「……これが、見ないで欲しい理由か?」
「は、はい…………」
タオルで前を押さえつつ湯船に体を沈める。なんなら頭まで沈んでしまいたい気分だ。
だけど、あれ? ぱっと見だったけどソラは服を着たままだった。消えたのは靴ぐらいだろうか?
どうして?
「オレを治癒してくれた時も?」
「……ソウデス」
恥ずかしくてソラから距離をとりつつ温泉の中にある飾り岩の裏へと隠れる。
ソラの顔が少し赤いのは気の所為だろうか。何を思われているんだろう。別に私、裸を披露したい変態じゃないんです。これは仕様なんです!!私、確かに一緒に行って治すって言いました。だけど、ほんと堂々と見せるつもりなんかこれっぽっちもなくて、むしろ服を着たまま温泉召喚ができないか調べてた途中でっ!!
頭の中がぐるぐるする。次の言葉を探しながら、ちょっと泣きそうになる。
「ユウカ」
「は、ひゃい!!」
「詳しく話を聞かせてくれないか? とりあえず、カイはいなくなったようだ。この魔法をといてもらっても大丈夫だろう。オレも何があったのか詳しく話したいんだ」
「わかりました」
ソラがこちらを見ないようにしてくれているのを確認して私は温泉を消した。
ソラの服はやっぱりそのままで、靴だけ戻ってきていた。もしかして、服を着たまま温泉を呼び出すヒントをソラは知ってたりするのかな。それならまずそれを聞きたい。私もそうなりたいんです!! 切実に!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます