第14話 新しい温泉?
水に沈んでそのままなうさぎ。うさぎって泳げるのだろうか。心配になってきた。
「うさぎさん、大丈夫ー?」
噛まれたくはないのでゆっくりと近づく。すると、ライが私より先にうさぎに近付きすくい上げた。ミルクコーヒーのような毛色のうさぎが姿を見せる。
さっきまでの怒ったような表情は消え、穏やかな目がこちらに向けられる。
「濡れちゃったね。ちょっと待ってね」
ライはうさぎに言葉をかける。水がうさぎの体からぷかりぷかりと球になり離れていく。
「これで大丈夫」
ペコリとお礼でもするように頭を下げてうさぎが森の中に姿を消す。
「決定的だナ。ユウカの力で黒いのガ取れるゾ」
「そう、みたいだね」
確信に変わったところで、ソラの前で使える魔法じゃないのだけれど。
もう一度肩まで浸かりなおす。どうしたらいいのだろう。
その時突然、頭に浮かぶ言葉があった。
『レベルアップしました。温泉レベルが2に変更されました』
「え?」
聞き覚えある変な声。ここに来る前の変な場所で聞いたあの声だ。
『レベルアップにより、呼び出せる温泉が1種類増えました。温泉の効能がパワーアップしました』
「レベルアップ? なにそれ」
『…………』
変な声の返事はなかった。
「ユーカ、レベルアップしたの?」
「レベルアップ持ちなのカ。珍しいナ」
「珍しいの?」
「珍しイ。大体の子は生まれた時に能力も守護神獣も決まっていル」
「ねえ、守護神獣って何?」
「守護神獣は僕達みたいな存在。子どもが生まれた時からずっと一緒にいるんだ。ただ、力は弱くて姿が見えない神獣もいてそういう子は別名精霊獣。いるけど見えない守護神獣なんだ。大体の人は精霊獣が守護神獣なんだ。姿があるっていうのはそれだけで力が強い神獣で、すごく希少なんだ」
「そう、ボク達ハすごく強いんだゼ」
「そうなんだ」
守護神獣……、オカルトでいう守護霊みたいなものなのかな。能力が私のキャンプや温泉召喚みたいな魔法の事なのかな? ふむふむ。
「レベルアップすればたぶんイメージ通りの魔法が使えるようになるよ。ユーカの魔法ならすごく大きな事や細かい事まで再現出来るようになるかも」
「本当!?」
「試してみればいいじゃないカ」
イメージで再現……かぁ。なら、もしかして服を着たまま入れる温泉も出来たりする!? それなら服を脱がなくてすむよね。我ながらナイスアイデアと満足気に三度頷き、さっそく試すために立ち上がる。
「へっくしょんっ」
くしゃみが出た。ついでに長湯しすぎた。少し休憩したい。
よし、一度スーパー銭湯君には消えてもらって新たに服を着て入れる温泉、温泉っと。
手を前に出して想像する。服を着たまま入れる温泉……。着たまま入れる温泉……。
「温泉召喚!!」
『新しい温泉が確定しました』
成功したのかな。服は着たまま謎の声とともに湯気が立ち上る温泉が現れた。
やったあ! これで服を着たままでいられるわ。
さっそく、湯の中に足を入れる。ちょうど靴は先に脱げていた。うーん、いい湯加減。
「……いい湯加減だけど、これって足湯ー!!」
温泉街によくある座って足だけ浸かる温泉。確かに服を着たまま入れるけど、このサイズじゃあ――。
「小さいお風呂だね。ユーカ」
「これじゃア、あノ大きい神獣は入れないナ」
「だよねー!!」
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