このエピソードを読む
2024年12月9日 11:13
外科系入院患者さんの細菌感染症による発熱、としては、「なるほど」と思います。当方は、高齢者の亜急性期患者さんを入院管理しているので、先ほどのリストでは「ランク外」だった、胆道系感染症の頻度が上がります。呼吸器、腎尿路系、消化器・胆道系ともいわゆる「外界」とつながっている臓器なので、安定していた患者さんに、急に高熱が出た、という場合は、細菌感染症としては、肺炎、急性腎盂腎炎(男性ならばそれに急性前立腺炎を加える)、胆道系感染症の3つと、全身をざっと観察して「蜂窩織炎」「褥瘡感染」を考えます。後者二つは「見ればわかる」ものなので、後者二つが除外されれば、各種培養を取って、ある程度広域の抗生剤を使います。ウイルス感染として問題になるのは、インフルエンザ、COVID-19となりますが、発熱直後に検査をしても、偽陰性になることが多いので、少しタイミングをずらして検査をしています。感染性ではない発熱として、比較的よく出会うのは、「偽痛風(結晶性感染炎)」です。ただ、十分な検査設備のない小病院なので、「結晶性関節炎」なのか、「化膿性関節炎」なのか、即座に鑑別できません。大規模の急性期病院なら、グラム染色と、偏光顕微鏡での観察で鑑別ができると思いますが。圧倒的に「結晶性関節炎」のことが多く、発症関節はほとんどが膝関節なので、関節穿刺をして培養検査と病理検査(偏光顕微鏡での観察は、大手検査会社では「病理検査」でオーダー、となります)を提出し、ステロイドを入れてしまい、後は、化膿性関節炎ではないことを、「お祈り」しながら経過を見ています。重症感に乏しい発熱では、CRP、血沈の両方が陰性であれば、経過を見ています。ただ、まれに珍しい感染症もあり、現在、数年来訪問診療をしていた方で、COVID-19感染と期を一にして発症した、右咬筋群の関節内膿瘍、という方を診ています。COVID-19感染の隔離期間を終えても高熱が引かず、炎症反応も高く、「口が痛くて開かない」と訴えておられたのでCTを撮り、診断がつきました。大学病院の耳鼻咽喉科・頭頚部外科に紹介しました。debridementしてくれるか、と思っていましたが、高齢のため、側頭筋部での切開排膿と抗生剤投与のみで当院に帰ってこられました。右頬部、膿瘍は消えましたが、壊死組織と思しき高吸収が残存しており、いつまで抗生剤を投与するか、悩んでいるところです。
作者からの返信
コメントありがとうございました。私もこの5大感染症から胆道系感染が抜けているような気がしていました。呼吸器感染、尿路系感染の次に多いものと感じています。また偽痛風にもよく遭遇します。疾患リストについては、自分の印象に従って頻度順に並べ替えたいと思います。
外科系入院患者さんの細菌感染症による発熱、としては、「なるほど」と思います。
当方は、高齢者の亜急性期患者さんを入院管理しているので、先ほどのリストでは「ランク外」だった、胆道系感染症の頻度が上がります。呼吸器、腎尿路系、消化器・胆道系ともいわゆる「外界」とつながっている臓器なので、安定していた患者さんに、急に高熱が出た、という場合は、細菌感染症としては、肺炎、急性腎盂腎炎(男性ならばそれに急性前立腺炎を加える)、胆道系感染症の3つと、全身をざっと観察して「蜂窩織炎」「褥瘡感染」を考えます。後者二つは「見ればわかる」ものなので、後者二つが除外されれば、各種培養を取って、ある程度広域の抗生剤を使います。ウイルス感染として問題になるのは、インフルエンザ、COVID-19となりますが、発熱直後に検査をしても、偽陰性になることが多いので、少しタイミングをずらして検査をしています。
感染性ではない発熱として、比較的よく出会うのは、「偽痛風(結晶性感染炎)」です。ただ、十分な検査設備のない小病院なので、「結晶性関節炎」なのか、「化膿性関節炎」なのか、即座に鑑別できません。大規模の急性期病院なら、グラム染色と、偏光顕微鏡での観察で鑑別ができると思いますが。
圧倒的に「結晶性関節炎」のことが多く、発症関節はほとんどが膝関節なので、関節穿刺をして培養検査と病理検査(偏光顕微鏡での観察は、大手検査会社では「病理検査」でオーダー、となります)を提出し、ステロイドを入れてしまい、後は、化膿性関節炎ではないことを、「お祈り」しながら経過を見ています。
重症感に乏しい発熱では、CRP、血沈の両方が陰性であれば、経過を見ています。
ただ、まれに珍しい感染症もあり、現在、数年来訪問診療をしていた方で、COVID-19感染と期を一にして発症した、右咬筋群の関節内膿瘍、という方を診ています。COVID-19感染の隔離期間を終えても高熱が引かず、炎症反応も高く、「口が痛くて開かない」と訴えておられたのでCTを撮り、診断がつきました。大学病院の耳鼻咽喉科・頭頚部外科に紹介しました。debridementしてくれるか、と思っていましたが、高齢のため、側頭筋部での切開排膿と抗生剤投与のみで当院に帰ってこられました。右頬部、膿瘍は消えましたが、壊死組織と思しき高吸収が残存しており、いつまで抗生剤を投与するか、悩んでいるところです。
作者からの返信
コメントありがとうございました。
私もこの5大感染症から胆道系感染が抜けているような気がしていました。
呼吸器感染、尿路系感染の次に多いものと感じています。
また偽痛風にもよく遭遇します。
疾患リストについては、自分の印象に従って頻度順に並べ替えたいと思います。