第42話 どちらかというと好みになるだろう
闘技場はなかなかの盛り上がりを見せていた。
とにかくうるさいほどの大歓声だった。それだけで心臓が痺れるくらいの感覚だった。
「どれくらい動ける?」
「今なら太陽でも喰らい尽くせるよ」
「それくらい強がれたら上出来やな」言葉の意味はわからなかったが。「で、どれくらい動けそうや?」
レフィは一瞬自分の左膝を見て、
「……正直に言うと……左膝は限界に近い。まともに動けるかどうか……怪しい。体力的にもかなり厳しいだろう」
「そうみたいやな……」
「開放したいところだが……
その刃こぼれした短刀では
レフィは言う。
「……勝算があっての助太刀なのでは……?」
「難しいこと考えるのは苦手やねん」勝算がどうとか、考えるのは苦手だ。「美人の前でカッコつけたい……それで行動する理由は充分やからな」
「軟派な男……」
「嫌いか?」
「どちらかというと苦手になるだろう」素直な人だ。「個人的には……強いと言われるほうが好みだな」
「それはレフィさんの実力次第やろ?」
「硬派な人だ」
「嫌いか?」
「どちらかというと好みになるだろう」
素直な人だ。
よくわからん会話を終えて、
「話し合いは終わり?」ソプラノが軽くリズムを刻みながら、「そろそろいいかな?」
「あと1時間待ってくれ……って言ったら聞いてくれるのか?」
「聞くと思う?」
言って、ソプラノは地面を蹴った。
強烈な踏み込みだった。地面が足の形にえぐれていた。凄まじい衝撃音とともにソプラノは
ソプラノの拳は
「げげ……」
ソプラノの攻撃を受けた壁には巨大な穴が空いていた。パラパラと砂煙が巻き起こって、屋敷の外が見えるようになった。
……
この穴から逃げるか? いや、レフィの友達が人質に取られているのだ。逃走なんて選択肢はまだ選べない。
……
ソプラノの攻撃を一撃でも受ければ終わりだろう。
「レフィ」
「なんだ?」
「助けてくれ」
「なにをしに来たんだキミは……!」王道のやり取りをしてから、「だからキミだけでも逃げてくれ。そこの穴から逃げればいいだろう」
「地下の怪物ってのを拝んだあとに、やな」
「……強情だな……」
レフィには言われたくない。
ともあれ今のレフィに攻撃の矛先を向けさせるのは得策ではない。
というわけで挑発してみる。
「どうしたソプラノ少年? お前の相手は壁やないで? まぁワシには、そんな大振りの攻撃は当たらへんけどな」
「挑発に乗ってあげるよ」なんで挑発だとバレたのだろう。「……でもキミ、そこまで強くないよね……? 別に弱くはないけど……その自信、どこから来るの?」
「うーん……」思うように体が動かないのだ。パラエナが言うにはステータスの問題らしい。「自信満々でも弱気でも、結果は変わらへん。なら……自信満々でやられたほうが笑えるやろ」
「……? よくわかんないけど……」わかってもらうつもりはない。「キミのその目……まだ切り札があるって目だ」
切り札……脱ぐのか? 下手こくのか? そんなの関係ねぇのか? 全裸に見えるポーズを披露する時が来たか?
切り札……切り札かぁ……
「切り札ってもんでもないけど……」
場合によってはこの巨大大阪城ごと破壊することになる。
現在の
行くぜ……ステータスオープン!
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