操り人形たちの屋敷
第22話 100スベリ1ウケ
つまり映像が必要である。しかし……この世界でそんなものが用意できるのだろうか?
ラーメンを食べ終わって店の外に出た。さらに夜になっていて、星がよりキレイに見えた。
「なぁ……この世界って映像を記録する媒体とかあるか?」
「……映像を記録?」
「あー……えっと、じゃあ写真とか」
「写真……あるにはあるけれど、とても高価なものよ。一部の特権階級でも年に数回しか使えないみたい。ワタシも実物は1回しか見たことない」
逆に1回は見たことあるのか……便利屋という職業柄珍しいものには敏感なのか、あるいは……
しかし写真がそこまで高価なものとなると、ビデオカメラなど夢のまた夢だな。まだ発明すらされていないかもしれない。
「写真が必要なの?」
「ああ……ワシのネタには必要やな。映像に向けてツッコミを入れていくタイプやから」
笑いのニューウェーブに憧れて芸人になろうと思ったのだが……
仮に映像が撮れたとしても、ある程度の遠隔操作ができないと間が一定になってしまう。それでは相手に合わせてリズムを変えられない。
……笑いのニューウェーブはまだ遠いようだ……
……
しかしどうする? 映像が使えないとなると……
悩む
「他に手段はないの?」
「うーん……漫談は苦手やからなぁ……コント仕立てにはなると思う。1人でやるか、あるいは……」
「……コンビって、誰が……?」
「……」
「……」
しばらく無言の時間があって、
「……ワタシしかいないわね……」パラエナはため息をついてから、「……ワタシがお願いする立場だものね。頑張るわ」
「お、おう……ありがとう……」
「これも謝礼金のためよ」
金のためと割り切ってくれるほうがありがたいな。スベっても立ち直れる可能性が高い。
「じゃあ、さっそくネタを考えてみる。明日から練習やな」
「全力でやるけれど……あんまり期待しないでね? ワタシ、お笑いはよくわからないから……」
「安心してくれ。ワシもよくわかってない」
「安心できる要素がないのだけれど……」
「奥が深いってこと。どんなに面白い人でもスベることはある」
つまらなくたっていい。スベったっていい。ボケることに意味がある。ボケなければ絶対に笑いは生まれない。
打席に立ち続けるのだ。それこそが笑いの秘訣である。
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