第8話 そういう流派もあるのか?
そのまま人間が馬車を引いて去っていった。馬がいなくなった馬車は軽くなったようで、先程よりスピードが早かった。
……
馬車要素はないな……もう馬もいないし。
そしてまた1人になって、
「うわ最悪や……! 意味わからん世界に来てしもうた……」陣◯のコントの世界より狂ってる世界だ。しかも彼のコントほど面白くない。「いったいどうしたらええんや……街に行くのが不安でしゃーない……」
最初に出会ったのが、あの馬車の人と馬なのだ。街に行けば、どんな狂った世界が待っているのだろう?
そもそも街はどっちやねん……さっきの馬に聞いとけばよかった……いや、あれの言う事を信用してもいいのか……?
「まぁしょうがないな。次に通る人はちゃんとした人かもしれんし、次の人を待とう」というわけで
現れたのは腰に刀を帯びた男だった。精悍な顔つきで、かなりの実力者であるように見えた。
しかも手のひらには無数の傷が見えた。かなりの鍛錬を積んでいるのだろう。あるいは死線を越えてきたか。
「あの、すいません。街がどっちにあるか、聞きたいんですけど」
「……」言葉が通じないのかと思ったが、「北に歩けば行き着く」
ぶっきらぼうだが答えてくれた。しかも北の方角まで指さしてくれるという優しさである。
「ありがとうございます」
「お前は旅人か?」
「旅人……まぁ、似たようなもんですかね」
「ならば……1つ質問に答えよ」質問……この人には助けてもらったし、恩返しをしよう。「俺は見ての通り刀を使って戦うのだが……今まで一度も勝利したことがなくてな」
その雰囲気で?というツッコミは踏みとどまった。真剣に戦っているのなら失礼だろう。
サムライは続ける。
「旅人なら、多少は腕に覚えがあるだろう? 俺と手合わせをして、勝利できない原因を探ってくれ」
そう言ってサムライは刀を抜いた。
いやワシは戦闘能力とかないんで……と言い訳しようと思った。
だが、それより先に別の言葉が出てきた。
「逆や……!」何度このツッコミをすることになるのだろう……「なんで刃のほう握っとんねん……! 柄を握って」
サムライは刀の刃がついた場所を握っていた。そして柄をこちらに向けていた。
当然のことながらサムライの手からは血が溢れ出ていた。
……
ボケやとしたらおもんないし、真剣ならアホすぎる。
「む……?」サムライは真面目な表情で、「なんの話だ?」
「いや、だから……」
「そういう流派もあるのか? 世界は広いな」
こっちのセリフである。
ともあれサムライはアドバイスのとおり柄を握って、
「な、なんと……!」感嘆の声を上げていた。「手が痛くないぞ!」
「はよ気づけ……!」遅すぎるやろ気づくの。「なんで今まで気づかへんの……?」
サムライは尊敬の眼差しを
「あなたは天才だ! まさに革命だ! 救世主様だ!」
「恥ずかしいて……」こんなことで天才とか言われる必要はない。「……いや……ホンマになに? この世界……」
完成度の低いWEB小説の世界? いやいや……Web小説もネタにされること多いけど、なんだかんだおもろいからな? こんな意味不明な世界はないからな?
それと動画投稿サイトやらでWeb小説発祥の作品を貶してるやつと、コメント書き込んでるやつら。文句があるなら自分で書け。あるいは見るな。なんでお前一人のために作品が提供されてると思ってんだよ。好きな作品だけ読んでればいいんだよ。
閑話休題。
「ありがとう旅人よ」サムライは感動冷めやらぬ様子で、「お礼に、この国宝に指定されている刀をやろう」
「だからもらわれへんって……」というか国宝多いな……「この程度でお礼とかいらんから……」
「むぅ……なんと思慮深いお人だ。やはり賢い人間は懐が深い」
「いや、あの……」
だから恥ずかしい。この程度でべた褒めされんのは恥ずかしい。
今回はどう考えても納得できる成果ではない。アホみたいな状態にツッコんだだけだ。
……
いったい自分の異世界生活はどうなってしまうのだろう……こんなアホみたいな世界に来てしまって……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。