第7話 お前が喋るんかい……!

「よーし。まずは状況の把握やな」智介ともすけは言う。もちろん独り言である。「この世界についての情報を集めなアカンな。ここがどんな世界なのか、動やったら元の世界に戻れるのか。人に聞かなアカン」


 智介ともすけが言っていると、ガラガラと馬車の音が聞こえて来た。


「お……さっそく馬車が来たっぽいな。よっしゃ、あの人にこの世界について聞こう」遠くから近づいてくる馬車を眺めながら、「……なんか遅い馬車やなぁ……もうちょっとスピード出してもええのに……」


 こんな見通しのいい道で事故が起こることもないだろう。それと衝撃に弱い商品でも運んでいるのだろうか?


 智介ともすけは待ちきれず、自分から馬車に近づいた。


 ……


 。そして


 思わず叫んだ。


「逆や……!」


 なんで馬車を人が引いとんねん。いや……人が引いてるなら人車? どっちでもええわ。


 馬車を引いている人間は困惑したように智介ともすけを見つめて


「✕✕✕✕✕✕?」

「あ……言葉が通じへんタイプの異世界? なんかすいません……突然大声を出して……」


 智介ともすけの言葉に、キャビンにいた


「気にすることはない」

「お前が喋るんかい……!」


 急に渋い声で喋るな。ビックリするから。


 馬は悠々とした様子で、


「なんだ? 喋る馬が珍しいのか?」

「あ……この世界じゃ一般的なんや……」

「いや、私だけだ」

「あ、そうなんや……」……なんの会話をしているのだろう……「あのー……馬が馬車を引いたほうが早く移動できるんちゃうの……? なんで人間に引かせてんの?」


 馬が人を支配してる世界なのだろうか? 馬の惑星?


 なんてことを考えていると、


「そ、その手があったか……!」

「……は?」


 ツッコむことすら忘れた。


 馬は大真面目に、


「そういえば遅いと思っていたんだ……どう見ても人が引く形状じゃないし、キャビンは狭いし……」

「なんで気づかへんの……?」


 よく見たらキャビンにいる馬はかなり窮屈そうだった。そりゃ人間用に作られたキャビンに座っていれば狭いだろう。


「行くぞ!」馬はキャビンから飛び降りて、「おお……なんてスピードだ……!」


 そのまま周囲を駆け回った。当然そのスピードは人の歩行速度より早く、滑らかなものだった。


「感謝するぞ人間よ」馬は智介ともすけの前に立って、「礼と言ってはなんだが……この剣をやろう。国宝に指定されている伝説の剣だ」

「もらわれへんって……」


 こんなんで国宝がもらえてたまるか。


「なんと思慮深い人間だ……」思慮深いとかじゃなくて……「そなたのような賢者がいた事、一生忘れん。では……さらばだ!」


 そのまま馬は走り去っていった。


 、走り去っていった。


「いや馬車を置いていくな!」


 ……


 ……


 なんだこの世界……


 イカれてるのか? 陣◯のコントでもこんなことないぞ……?

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