第7話 お前が喋るんかい……!
「よーし。まずは状況の把握やな」
「お……さっそく馬車が来たっぽいな。よっしゃ、あの人にこの世界について聞こう」遠くから近づいてくる馬車を眺めながら、「……なんか遅い馬車やなぁ……もうちょっとスピード出してもええのに……」
こんな見通しのいい道で事故が起こることもないだろう。それと衝撃に弱い商品でも運んでいるのだろうか?
……
人が馬車を引いていた。そして馬がキャビンに座っていた。
思わず叫んだ。
「逆や……!」
なんで馬車を人が引いとんねん。いや……人が引いてるなら人車? どっちでもええわ。
馬車を引いている人間は困惑したように
「✕✕✕✕✕✕?」
「あ……言葉が通じへんタイプの異世界? なんかすいません……突然大声を出して……」
「気にすることはない」
「お前が喋るんかい……!」
急に渋い声で喋るな。ビックリするから。
馬は悠々とした様子で、
「なんだ? 喋る馬が珍しいのか?」
「あ……この世界じゃ一般的なんや……」
「いや、私だけだ」
「あ、そうなんや……」……なんの会話をしているのだろう……「あのー……馬が馬車を引いたほうが早く移動できるんちゃうの……? なんで人間に引かせてんの?」
馬が人を支配してる世界なのだろうか? 馬の惑星?
なんてことを考えていると、
「そ、その手があったか……!」
「……は?」
ツッコむことすら忘れた。
馬は大真面目に、
「そういえば遅いと思っていたんだ……どう見ても人が引く形状じゃないし、キャビンは狭いし……」
「なんで気づかへんの……?」
よく見たらキャビンにいる馬はかなり窮屈そうだった。そりゃ人間用に作られたキャビンに座っていれば狭いだろう。
「行くぞ!」馬はキャビンから飛び降りて、「おお……なんてスピードだ……!」
そのまま周囲を駆け回った。当然そのスピードは人の歩行速度より早く、滑らかなものだった。
「感謝するぞ人間よ」馬は
「もらわれへんって……」
こんなんで国宝がもらえてたまるか。
「なんと思慮深い人間だ……」思慮深いとかじゃなくて……「そなたのような賢者がいた事、一生忘れん。では……さらばだ!」
そのまま馬は走り去っていった。
馬車と人間をその場に残して、走り去っていった。
「いや馬車を置いていくな!」
……
……
なんだこの世界……
イカれてるのか? 陣◯のコントでもこんなことないぞ……?
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