第35話 創世神の眷属1
任命式が終わってみんなは早速修練場と魔物を狩る部隊に分かれ、力を増すために動き出した。
もちろん非戦闘員のザナークさんとファルマナさん、リアとアリアとハイネ君、それから交代で食事当番のナルカとスフォードの二人は厨房に向かったよ?
美味しい料理も又、大切な戦力だもんね。
まあ、ザナークさんもファルマナさんも実は相当強いんだけど。
リアは彼らの補助をしてくれている。
ハイネ君は……癒し枠だ。
うん。
ちょー可愛い♡
コホン。
さて、ここからが勝負。
私は気合を入れた。
「リンネ、エルノール、アルディ……ちょっといいかな?」
「美緒?うん」
「はい」
「なになに?美緒ちゃん?」
動き出す皆を見送った後、私は3人に声をかけた。
大切な話がある。
「聖域に行きたい」
「「「っ!?」」」
「聞かなくちゃいけない事があるんだよね。……お願い」
きっと今わたし怖い顔してる。
だって……
これを聞いてしまえば本当にもう戻れない。
「ふう。皆、近くに……転移!!」
エルノールが転移魔法を使用し、4人は聖域へと消えていった。
※※※※※
聖域―――
ギルド本部内にある秘匿されている創世神アークディーツと創造神ルーダラルダが作成した秘密の部屋だ。
もちろん転移でしかたどり着けない。
ソファーに4人で座り、今この部屋は静寂に包まれていた。
「…………」
「……………」
「……美緒?……何を………!?」
私は今、目を瞑り、あり得ないような膨大な魔力を練り上げ放出していた。
(………………っ!?………捕まえたっ!!)
「限定召喚!!『ルーダラルダ』」
「「「っ!?っっっっ!???」」」
聖域である部屋の隅―――
まるで祭壇のような作りの一角に光があふれ出す。
そして……
フードを目深にかぶった老齢の女性が目をぱちくりさせ、立ち尽くしていた。
「なっ!?ルーダ…さま?!」
「!?おばあ様??!!!!」
「………ふう。まったく……せっかちじゃな、美緒」
私が『今』覚えた限定召喚で呼んだ人物―――
初代創造神ルーダラルダ。
そして…
「あー、うん。……不思議……初めて会ったのに………写真でしか見たことなかったのに……懐かしくて涙が出ちゃうよ……ヒック……ぐすっ………会いた…かった……よ?…ぐすっ…おば…あ…ちゃん」
「「「っ!?」」」
※※※※※
私が生まれた時。
もうおばあちゃんは亡くなっていた。
私の苗字、守山。
お母さんの一族の苗字。
お父さん、天涯孤独だったから結婚した時お母さんの苗字を名乗ったんだよね。
かつて禁忌に溢れた「御山(おやま)」を守る一族。
おばあちゃん、守山沙耶(さや)香(か)は最後の守り人、祈祷師だった。
大きすぎる運命を背負わされた、凄い人。
おばあちゃんと大地さんとの出会いが、全ての始まり、ううん、虚無神への最後の抵抗手段だった。
※※※※※
前、リンネが言っていた。
「私たち神は平行世界の自分と共有できる」
そう。
それはこのゲームの世界だけじゃない。
地球もその範疇だった。
「時間はあなた達だと理解できない」
うん。
全然ピンと来ないよ?
でもね。
『バイステンダー』の称号。
『傍観者』の力で理解できないけど理屈は分かったんだよね。
真理は、時間は『繋がっている』のではない。
同時に存在している。
現在・過去・未来……
ただし今自分がいる世界線を除いて。
※※※※※
おばあちゃんは小さいときに出会っていた。
創世神アークディーツ。
黒木大地。
覚醒しすべてに存在した彼に。
全てを創生した始まりの神様に。
そしておばあちゃんはすべての世界線の自分と共有したんだ。
立ちはだかる虚無神。
絶望した彼女はもう一度創世神と出会う自分と共有し、そしていくつもの道、世界を創造した。
最終的にすべての世界が虚無神に滅ぼされた。
だから……唯一の希望である『ゲームマスター』の称号を持った私を殺す未来を作ったんだ。
嘆き悲しみ苦しみ自分の無力を心に刻ませて……
本当に良く判らないけど……この世界の真理は2面性、そして三つ巴。
悲しみを知り、悔やんだいわば失敗の私。
だから次にあるのは……今の私は……成功する私。
取り戻すべきは調停者『ミディエイター』
これで三つ巴が完成する。
それこそが唯一。
真の『ゲームマスター』黒木優斗の望むもの。
今の優斗じゃない、本当の優斗。
封印されながらも彼の心を守り続けている大地の願い。
そしておばあちゃんの願い。
はあ。
自分で言っているけど……
良く判んないよ?
取り敢えず色々聞こうかな。
※※※※※
「ふむ。流石私の孫だね。あんたの推測はほぼ正しい。聡明だね、あたしゃ嬉しいよ。……アルディ、良いよ。教えてあげな。あんたのもう一つの称号『オブザーバー』観測者の事を」
「ルーダ様、今言っちゃったじゃん?僕が言う前にさ。はあ」
「うん?まあ細かい事は気にしなさんな。という訳で美緒?こいつ上手く使いな。今のコイツは有能だよ」
お茶を飲みほっと息をつくおばあちゃん。
いきなりばらされたアルディは涙目だ。
「あ、あの……おばあ様?わ、私……」
「ふむ。リンネや。あんたもよく頑張ったねえ。あたしゃ嬉しいよ。おいで」
「っ!?……おばあ様、おばあ様……」
泣きながら抱き着くリンネ。
良かったね。
私も泣きそう。
でも待って?
これって……私とリンネ、血は繋がってないけど……従姉妹ってこと?
リンネはルーダラルダさんの孫で、私は転生する前の孫で……むむ?
「おばあ様?お母さまは、マナレルナ様は……もういないのですか?」
「ん?マナレルナかい?……んーレルナ、いや真奈はね。地球に逃がしたんじゃよ。美緒の母親としてな」
「「「「っ!?」」」」
ええっ!??
お母さん?!!
お母さん……真奈、マナだ。
そういえばアルディ乗り移られていた?時『マナさん』って言っていた。
従妹どころか姉妹じゃん!?
私はアルディを睨み付ける。
「アルディ?……私に言う事……あるよね?」
「ひぐっ……あー、えっとー………もう、ルーダ様!!全部言っていいの?まだ早くないかな?主の許可とか……」
「かまわないよ。さっさと言いな。大体あんた、もう『コーディネーター』の称号ないんだろ?じゃあちゃんと『オブザーバー』観測者の役目を果たすんだね。……言っとくがあたしゃ本体である封印してあるあんたをこれっぽっちも許してないからね。……何が『幼女は正義』だい。私の大事な美緒を腐った眼で見るんじゃないよ。……いい機会だ。リンネたちにも見せてやろうかね。……『封印解除!』……実は小学生の美緒を見て興奮していたド変態『篠崎琢磨』」
「なあっ!?えっ?えっ?うあ、うああああああああああああああああああああああ」
突然光に包まれ頭を抱え苦しみだすアルディ。
………篠崎琢磨?
お父さんの会社の人????
うー完全にキャパオーバーだよ?
……小さい頃の私に……こ、興奮??!!!!!
刹那私の脳裏ににやりと笑い、私を舐めるようにじっとりと視線を向けた彼の顔がフラッシュバックした。
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…」
やっぱりこいつ、ちょん切ろう。
そう決意し私は意識を手放した。
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