第36話 創世神の眷属2

「うう、酷いでござる。あんまりでござるううう……ちらっ」


号泣しつつなぜか私を見てニヤつくアルディ。

どうやら封印を解かれ前世の記憶を取り戻したようだ。

私はマジで鳥肌立ってるけどねっ!


「ふん。美緒。こいつは生粋の変態だ。だけどあんたにゃ指一本触れないよ。そうだね?琢磨」

「ふっ、真の紳士は『YES!ロリータNoタッチ』なのでござる。ぐふふ、美緒殿、以前の貴殿はこの世のものとは思えないほど可憐で可愛く、美しかったでござるよ?……まあ、今も……その面影が……はあ、はあ……ふう」


何故か気持ち悪く体をビクビク震わせ恍惚の表情を浮かべるアルディ。

ベロンと自分の唇を舐める。


「ひいいっ。お、おばあちゃん?これ、どうするのよ!?……怖すぎる」


何で超絶美形なのに、こんなに気持ち悪く見えるの???

リンネもエルノールも思いっきり引いてるし?


「む!?待つでござる。確かに拙者、幼女が大好きでござるが……女体の神秘には興味があるでござろう?今の美緒殿はすでにお・と・な。……ぐふ、ぐふふ。ならば触っても良し!!もとい、確認が必要、であるな?」


目を光らせ手をワキワキさせて私に近づくアルディ。

ひうっ、怖すぎて腰が抜けた。


動けない?!


うああ、恐い、恐いよっ。


「あう、い、いや……こ、来ないで……やだ、いやあ…」

「おっふ。……ぐふふ、これはそそるっ!!!はあ、はあ、はあ……何を恐れる事があるのです?なーに。その可愛らしいお胸を、臀部を、開放する時が来たのである。さあ、吾輩の物になるといいでござる。ぐへへ、痛いのは最初だけでござるよ?天井のシミ…ぶべらっ!?」


鬼が立っていた。

しかも二人。


「腐った手で美緒さまに触れるな。ドクズが。貴様は死でも生ぬるい」

「何お前?そんなに死にたいの?いーよ。私が1万回殺してあげるわ」


エルノールとリンネの殺気が聖域を覆いつくす。

そして始まる圧倒的な暴力。

まるでギャグ漫画の様にマジで吹き飛びボールの様にバウンドするアルディ。


「ひ、ひいいいいいい。出来心でござるううう―――」

「死ねっ、むしろ死ね!!」

「あんたのち〇こ、ちょん切って喰わせてやるわっ!!」


あーあ。

リンネもエルノールも……


目がイッチャってます。

はい。


私は静かに手を合わせた。

なーむー


「後生でござるうううう―――――」



※※※※※



「まあそういう訳さ。美緒、あんたこいつが被害者だと思ったろう?あんたは優しいいい子だ。だけど世の中には決して解き放ってはいけないものもいるんだ。だから雁字搦めにした。……まあ、奴の呪縛もあったんだけどねえ。……どうする?このままで良いのかい?」


私はボコボコにされ意識を失っているアルディをちらりと見て大きくかぶりを振った。

てゆーか、なんでお尻出してるの?!


「……様式美……で、ござるよ……こてっ」


何で反応するの?!

私口にしてないよっ!?


ダメだ。

私には理解のできないものだ。


「だろう?封印するよ。いいね」

「はい。お願いします」

「うん。あんたが気に病む事はない。いずれ時が来れば正気にも戻るさ。……ls、xl;ghmgc;:。‘*?Z.F<Sjg;mgcz、。:z………『神呪絶封』」


倒れているアルディを黄金のオーラが包む。

そしてなぜか湧き出していた汚らしい変な色のオーラが霧散していった。


「うう、痛てて……ん?……えっ?ど、どうしたの?みんな、そんな怖い顔して……はっ!?もしや『琢磨』出ちゃってたの?」


慌てるアルディ。

頷く皆。


「あーもう。……だから神様嫌いなんだよ。どうして記憶消さないのさ。僕だってあいつ大っ嫌いなのにっ!」


心底嫌そうに喚くアルディ。

なんか少し可哀相になってきた。


「はあ。……もうヤダ。……僕、死んでもいいかな?ねえルーダ様……お願い」

「ダメじゃ」

「っ!?なんで?だって、もう僕のことなんか……!?」


鬼のような顔をしているリンネがいきなりアルディを抱きしめる。

アルディはまるで時が止まったかのように硬直してしまう。


「ばか。あんたは大切な使命があるでしょ?それにあんたとさっきの変態は違うのよね?まあ、あんたも充分ド変態だけどさ。でも……死ぬのは許さない。美緒の力になりなさい」


「リ、リンネ?なんで……」

「仲間でしょ?」

「っ!?」


「美緒」

「う、うん」

「コイツ仲間よね?」


そうだ。

確かにアルディは色々やらかした。

そして変態だ。


でも……

この数週間、彼は本当に努力を重ねていた。


私は真っすぐリンネを見つめる。


「そうだよ。大切な仲間。だからアルディ?協力してほしい」


流石に拒否反応で抱きしめることはできないけど……

私はアルディの手を取った。


「本当のあなたを出すことを拒否した私を許してとは言わない。でも今のあなたなら……信じるよ。一緒に頑張ろう?死ぬなんて……寂しいこと言わないで」


「………美緒ちゃん……リンネ……」


アルディはリンネの抱擁から抜けて大きく深呼吸をした。

そしていつもの人をおちょくったような笑みを浮かべる。


「うん。ありがとうリンネ。美緒ちゃん。……リンネ……おっぱいいい感じ。柔らかぶべらっ!?」


「ちょーしに乘るな」


リンネの伝説のアッパーにより再度気絶したアルディであった。



※※※※※



「おや?そろそろ時間だねえ。あたしゃ帰らせてもらうよ」


そういっておばあちゃんは体を薄くさせていく。


「あ、そうだ。レストール、焚きつけておいたよ。他にもちょっとはね。……後はうまくやりな……ではな。私の可愛い孫たち……また会えるさ……」


そう言い残しおばあちゃんは消えていった。



「……大事な事、何一つ聞けなかった――――」


私の嘆く声が聖域にこだました。

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