第7話 課題
ルペルとアリシアはなんの迷いもなく部屋の中に入っていく。
「俺たちもやるよな。」
「もちろんだ。」
ペアになった男、ボルト・アーサー。俺はこの男が少しだけ苦手だ。性格がどうこうって話ではない。何か合わないのだ。
部屋に入った俺たちは環境を決める。
「遺跡にするか?」
「それ以外に何がある?能力的に1番強く出れるところはそこだろう。」
「そうだな。」
みるみるうちに周りの風景は変わっていく。空は夕焼けに染まり、どこまでも続く地平線には、壊れた遺跡の岩が転がっている。
「とりあえず目標を決めるか。思いつく限りで1番のものはセコンズを使いこなすことだな。」
「それがやっぱり1番近道か。」
「近道って?」
アーサーは俺の意見には少し疑問があるようだ。近くにあった石に羽織っていたローブをかけてストレッチを始める。
「俺はこの期間の間にサーズまで完成させるつもりだ。だからお前も一緒にやらないか?」
「サーズ…確かにアリだが。順位決定戦にそこまで使ってくる人はいないとは思うが、それなりに強化できるな。」
「そうだ。特にルペル。あいつに勝つにはそこまで使わないといけないだろう。」
俺もローブを置いて、アーサーの横でストレッチを始めた。
ストレッチを済ませて、悪魔の力を解放させる。
「カーディアンはどこまで使えるんだ?」
「ノーマルとセコンズの間だな。悪魔の力自体が宿ってる範囲がそこまでだし。」
「俺より広いのはいいな。俺は右腕だけだから。」
「そこまで変わらないだろ。気にすんな。」
左腕に炎を纏わせて、戦闘モードに入る。俺が使える悪魔のレベルの限界まで引き出した。
「それがお前の最高値か?」
「そうだ。」
アーサーは右腕に電気が帯びているだけの簡単な変化。魔力量的にはたしかにノーマルとセコンズの間だが、そんな風には見えない。
「ほんのちょっとだけ上げてみて訓練始めるか。」
「そうだな。」
レベルをほんの少しだけ上げて、悪魔に自分の体を少しだけ許す。
「意識が持っていかれそうだ。アーサー、生きてるか?」
「何とかな。そっちは?」
「ギリギリ。」
深く呼吸をすればギリギリ耐えることが出来る。堕ちたら俺たちは終わりだ。けど、こうでもしないと引き上げることが出来ない。
「この状態で喧嘩でもやってみるか。」
「それが面白そうだな。有効的かは知らないけど。」
1度距離を取って、向かい合う。こう見てみると、やっぱりこいつも実力者の1人で、その魔力量は平均を超えているのが分かる。
炎に意識を向けて、その性質を変えていく。使いやすい炎は軽い炎だが、攻撃力かつ防御力をとると粘性の高い炎の方が強い。アーサーは雷だからどこで攻撃が飛んでくるか分からないからこうしておく必要がある。
「甘いよ。それでも主席さんか?」
気づけば背後にアーサーが回っていた。さっきまでは目の前にいたのに、一瞬でだ。
そして俺とアーサーの間には少しだけ時空が歪んでいるところがある。
「『
目にも止まらぬ速さの雷撃が俺の身体を貫通する。威力は落としているのか、内蔵と筋肉が痛む程度。でも、確実にダメージは入っている。
「それくらいならルペルは初見で避けていたぞ。」
俺の頭上には先に設置していたのか、光の玉が浮いていて、俺はそこから一度離れる。が、その電撃は俺を追尾するように走り、しっかりと俺の身体に当たる。
流石、外部入学次席かつ、あのルペルと張り合っただけある。能力もその使い方も、俺よりも何枚も上手だ。でも、俺にも譲れないものくらいはある。
「『
7つの火の玉がレーザーのように伸びて飛んでいく。こんなの確実に避けられるが、俺の狙いはそれではない。
「何だよその攻撃は?届いてねぇぞ。」
「じゃあ届かせてみるか?」
炎の色が赤から白に変わっていく。
「言ったろ?ボムって。」
「まさか」
次の瞬間、レーザーは爆発する。このときの辺りの空間の温度は1000℃をゆうに超える。炎の俺は耐性があるが、雷でしかないこいつはどうだか。
その瞬間魔力量が跳ね上がった。俺のじゃない。アーサーのだ。魔力はより悪魔を感じさせる禍々しさと強さを持ち、俺よりも遥かに強いのがよく分かる。
「セコンズか。」
よく分かる。俺は今のままじゃこいつには勝てない。
「あぁ、力が漲る。魔力も通しやすい。時間がゆっくり進んでいく気がする。」
「何がトリガーになったんだ?」
「知るか。お前が殺そうとしてくるからだろ。体の防衛反応ってことだと思う。」
魔力で減速しながら、俺が作った灼熱の大地に降りてくる。もう燃えることはない。魔力で身体を守っているから。
「意識は持っていかれてないのか?」
「もちろん。俺だ。」
「ノーマルからセコンズって堕ちやすいんじゃなかったのか?」
「バアルとは仲良くしてたからな。それが上手く働いてくれたんだろ。」
セコンズが使えるようになったアーサーは見た目はそこまで変わらない。けど、身体全体から放電している。
「それじゃ、言いたいことは分かるよな?」
「マジかよ。」
アーサーは笑った。俺のその境地に立てということか。
「再開だ。」
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