第3話 提示
学院内順位決定戦。それは年に一度開かれる大会で、このゴドルバドル悪魔学院に在籍する学生の中で、先生の推薦を受けた者のみが出場できる大会だ。しかも、学年別の大会ではなくて、1年から4年まで全員合同でのトーナメント戦である。ちなみに、この大会で3位以内に入ると、学院対抗に出場でき、さらに上の舞台に進める。対魔中央局でちゃんとした地位に就こうと思ったら勝ち進まないといけない。
「今年も例年通り2人1組になり、トーナメント戦をする。防衛任務や他の任務でも最小単位である2人でやるから、まあ、それなりにチームワークと、あとは強さが必要になるな。安心しろ。こっちがちゃんと適正みて判断したからな。」
そう言って先生はチョークを取り、黒板にチーム分けを書いていった。
『①ルペル・アリシア
②アーサー・ガーディアン
③カーター・アンス 』
「このペアで出てもらう。というか、これからの任務もだいたいこのペアでやってもらう。」
勝手に決められたペアだが、何かの意図があるような感じがした。そう、それはきっと他のみんなもだろう。
「まあ、言いたいこともあるだろうが、今日はこれで解散。部屋はこのままでいくが、今日から訓練場はずっと解放し続ける。自由に使え。任務は適当に割り振っていくからな。」
そう言って、先生は消えていった。
教室に取り残された俺たちは、そのまま教室を出る。6人で廊下を歩きながら、寮に向かった。
「絶対何かあるよな。」
「面白い組み合わせだけどね。」
古い廃れた城。その塔のうちの一つから1年の寮に伸びる廊下を歩く。この国の悪魔学院はどれもこんな形をしている。街の中にあるものや、山の頂上にあるもの、平原のど真ん中にあるもの、そしてこの学院のように島丸々一つを学院にしたもの。そのどれも、学年別に行動範囲が決められていて、お互いの学年に干渉できない。利点であり欠点でもあるこの特徴はどの学院でも一緒だ。
「アリシア、早速だけどやるか?」
「奇遇ね、私もそう言おうとしてた。」
ファータ教室の生徒にだけ許されている特別訓練場の扉を開ける。学院の上位6人は1番上の層で生活しているから、他の階の生徒とは関わらない。いや、関われないようにしているだけか。
俺たちは扉を閉めて鍵をした。
〇〇〇〇〇
「お疲れさまでーす。」
ここは対魔中央局最高司令室。通称『神の間』。そこには3人の男が座っていた。
「お疲れルペル。調子はどうだ?」
「まあ、変わらないなって感じかな?」
最初に話しかけてきたのは魔柱神第6席のフルエラ・エニシダ。俺の同級生で、ペアだった男だ。
「変わらないってのも困るがな。他のやり方やってみたのか?」
次に話しかけてきた大男は第9席のガロラドンド。俺の1年先輩にあたる。
「まぁ1ヶ月でしょ?今度結果出してくれたらそれでいいって。」
そして奥のソファーで寝転がっているのはゼノ・エニスタ。第1席の最強の人だ。
「面白い子なら転がってるんで、見ます?今日の戦い、一応記録してたんですよ。」
「おおいいな!エニシダ!カポラ持ってこい!」
即反応したのはエニスタ。エニシダは「仕方ないなぁ」と呟きながら空中に手を突っ込み、そこから4本の瓶を出す。褐色の瓶の中身はカポラと呼ばれるお酒だ。
エニシダの能力は空間同士を繋げる、サルガタナスの悪魔がソースになっている。俺自身もその能力に何回も助けられてきたが、日常生活にも便利なのでこうやって利用されることもある。
ガロラドントが部屋の灯りを消し、俺は光を壁に当てる。
「おお!いいないいな!こういう能力嫌いじゃないぞ!」
アンスの能力にそう言うエニスタ。
「あとちょっと捻ったら使いやすそうな能力。無駄遣いしてるな。」
「エニシダならどうやるんだ?」
「その後ろの審判が攻撃するんじゃなくて、本人に何らかのデバフと自身にバフをかけるかな。」
「そこはあいつ自身が気付くところだ。」
一瞬見ただけで、それが分かるエニスタもやはり流石だ。
そして、全員が黙ったのがアリシアが出てきたときだ。
「ねぇ、イルザス。この子。」
「そうだ。魔力が全くない。一切ないんだ。」
「へぇ、どっち側?」
「恐らく持ってる側だな。」
アリシアは悪魔が宿っていない訳ではない。悪魔が宿っていることに気づいていないだけだ。悪魔にも潜性と顕性があるのだが、潜性であっても魔力自体がある人は多い。が、アリシアは魔力すら潜性。こんなケースは初めてだ。
「この子は伸びるね。」
「あぁ。」
そして戦いも最終盤になる。3人は俺とルペルの戦いに釘付けになっていた。
「うおっ!すっげー!」
「やりますねこの子。」
「外部入学1位か。それにしては魔力量が多い気が。」
「俺と一緒なんだよ。全身リリスの悪魔だ。」
「「「リリスか〜」」」
3人ともそう言って項垂れる。
リリスの悪魔が宿る生徒は上と下の幅が広い。それはその能力の仕組みが本人の魔力出力によるものだからだ。その能力自体を使いこなしていても、魔力出力が小さい場合は弱いし、魔力出力が大きくても使いこなせてなくちゃ意味がない。魔力とテクニック、その両方が両立されてないとただの足手まといなのだ。
「その件に関しては多分大丈夫だと思うけどな。」
ただ、そんな心配も必要ないほど、俺には一つの確信がある。多分、こいつは使えるやつだと。
「そうか。それならいい。」
「楽しみだな。今年の学院内順位決定戦も。」
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