第6話:オマケにオマケがついてきた

「昨日は戻られなかったから、心配したんですよ。それにしてもこの数……頑張りましたねぇ」


 若干涙ぐみながら、ギルドの職員はにっこり笑った。


 町に戻って来たのは翌朝のこと。

 洞窟に捕らわれていたのは最初に出会ったモルモルモットの奥さんだけじゃなく、森に生息するモルモルモット全部だった。

 その数、ざっと五十匹。

 そいつらが全匹、ポレポレ草を掘るのを手伝ってくれた。

 おかげで大量にGETしたけど、ゴブリン退治せいで夜になってしまい、昨晩はモルモルモットの寝床に泊まることに。


 大きな木の洞で、モルモルモットは固まって寝る。

 かなり広い洞だったけど、さすがに人間の私が入るとみっちみち。モルモルモットを毛布代わりにして寝ることになった。


「ところで……そのモルモルモットはどうなさったんですか?」

「これは……ついて来たんです。あとでちゃんと捨ててきますから」

「こ、こんなかわいいモルモルモットを捨てるなんて、酷いぷぃっ。鬼! 悪魔! 魔王!」


 左肩に乗ったモルモルモットが叫ぶ。

 耳元でうるさい。


「懐かれてますね」

「うっ……」

「まぁモルモルモットはモンスターに区分されるとはいえ、手を出さなければ大人しい子ですから」

「そう、なんですか? モンスターを連れてても、大丈夫、なんです?」

魔物使いサモナーなんて職業もあるぐらいですからね。大丈夫ですよ。では査定をしてまいりますので、お待ちください」


 サモナー、かぁ。サモナーは職業鑑定に出てこなかったんだけどな。

 はぁ、こいつどうするかなぁ。

 モルモルモットを代表して、私に仕えるとかいってたけど。


「あのさ、私はサモナーじゃないよ」

「ぷぃ~。ご主人様は勇者さまです」

「ちょ、やめてよそれっ。なんか腹立つ」

「ど、どうちて? ご主人様、モルモルモットたちたちけてくれたのでちよ。だから勇者様っぷぃ」

「胸糞わるい勇者に心当たりがあんの。だから止めて」

「ぷぷぃ!? 勇者のちりあいがいるでちか! さすがご主人様っ」


 あぁ、もう面倒くさいことになった。ペットなんて飼ったこともないのに。


「お待たせしました。ポレポレ草の球根、百三十九個で三百二十エーンになります」

「そんなに!? やった、これで何日か寝泊まりでき――」


 そうだ。私、冒険者登録していないから、手数料取られるんだった。


「あの……手数料は……」

「あら? 冒険者登録をされていない方だったのですね。手数料は8%なのですが」


 え、8%!? 王都のギルドだと10%取られたのに。


「どうせだったら、登録、しておきます?」

「え……冒険者に、ですか? でも試験が」

「えぇ、あります。こちらで指定した依頼を受けてもらって、期日までに完了させてもらうのが試験なのですが、うちでは――」


 そう言って職員は奥に運んだポレポレ草の球根を見た。

 つまりアレの採取が、冒険者登録をするための試験クエストだった――と。


「登録料として五十エーンいただきますが、今後は買取手数料がどのギルドでも一律1%になりますよ」

「ゼロにはならないんだ」

「お給料欲しいですから!」


 きゅ、急に大きな声だして、ビックリしたぁ。

 ギルドで働く人も、大変だぁ。


 どうせ冒険者になろうと思ってたし、今登録した方が改めて試験受けなくて済むしいいか。

 登録料五十エーンを査定額から引き、その金額から今度は手数料1%を引く。

 本当なら順番はその逆。査定額から手数料8%を引いて、次に登録料五十エーンを引くのが正しい。

 でも、職員はこっそりと「内緒よ」と言って、私に入るお金が多くなるよう融通してくれた。


 私の手元に入ったのは二百六十七エーン。

 何日かは安心して過ごせそう。






「小型の従魔は一匹につき十エーンだよ」


 お金取られるんだ!?

 せっかくギルドの職員が安い宿を紹介してくれたのに。

 町の平均的な宿代より五エーン安いけど、モルモルモットのせいで五エーンも高くなった。

 はぁ……。


 部屋に入って、ベッドに寝転ぶ。お城のベッドに比べたら硬いけど、でも全然平気。

 小さい頃は使い古したぺたんこの布団で寝てたし、このぐらいならむしろマシな方。


「で、あんたはどうするの」

「ぷぃ?」

「だから、森に帰らないのかってこと」

「帰らないぷぃよ」


 帰れよ。


「モルモルモットはご主人様にお仕えするために来たぷぃ」

「仕えるって、あんた何ができるの? あのね、私の目的は――魔王をぶっ飛ばすことなの。モンスターであるあんたたちにとって、それって王に対する裏切り行為でしょ?」

「クク?」

 

 なんで首傾げてるの。意味が伝わってない?


「別に魔王をぶっ飛ばちてもいいっぷぃよ」

「え?」

「モルモルモット、魔王の配下じゃないっぷぃ」

「配下じゃ……ない?」


 どういうこと? 私とあのバカを召喚した連中が、モンスターは全て魔王の配下だって言ってたのに。




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本日より1日1話更新です。

いつものようにお昼12時ころに予定しております。

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勇者のオマケ!?~チートキャラは巻き込まれ召喚された私でした。勇者がグチグチうざいのでパーティー抜けます~ 夢・風魔 @yume-

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