悲報
青天の霹靂の“霹靂”っていくつになっても漢字でかける気がしない。
【悲報】政権与党により『キスうま防止法案』が可決されてしまった。
SNSが選挙に与える影響を憂慮した結果、まずはキスがうまいだけの人たちを規制すべきだという論調になったらしい……。なぜ?
僕は『キスうまイナンバーカード』を強制的にお気に入りのジャージに紐付けされた上に、キスの壁を撤廃されてしまい、実質的に所得も減ってしまった。
そもそもこの新法だと、新しく“キスがうまいだけの人間”を雇い入れる場合、事業主は社員全員の社会保険料をキスで折半しなければならないので、キモいと言われる懸念から採用を躊躇う事案の頻発が予想された。
僕の仕事歴はそこで途切れた。
もうどこも僕を採用してはくれなかった。
元カノからアパートを追い出されたあの日と同じ公園に来た。
僕の座ったベンチの周りはすぐに鳩だらけになった。
ハトはやはり今日もハト派だ。
ニコニコした妙齢の上の方くらいの女性二人組が現れた。
「今、幸せですか?」ニッコリとそう尋ねて来た。
「宗教とかですか?」
「いいえ、手相を観て差し上げようと思いまして」
「手相?」
「占いはエステです」
占いは エステです
2人で頷き合っている。
僕は手相を見てもらっている間、空を見上げていた。空の壁はまだ引き上げられてはいないようだ。
2人はまた頷きあって僕の手を僕の体の方に戻してて離してから言った。
「もしかしてキスがお上手だったりしますか?」
クスクス笑いながら「いやですわー」と、そのまま行ってしまった。
しかたなく次の面接の準備を始めることにした。
キスのうまさに○をする欄が履歴書に増えていた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます