第5話 未来への鼓動

 通信タワーでの戦いから数週間が経ち、街は静けさを取り戻していた。ルナは公園のベンチに座り、目の前の光景を眺めていた。子供たちが笑いながら遊び、木々の間からは穏やかな陽射しが降り注いでいる。


 クリオの声が耳元で響く。「人々が再び日常を取り戻しつつあるようですね。」


 「そうね。でも、それはみんなの力があったから。」ルナは微笑んだ。


 パンデミックを乗り越える中で、多くの人々が身体AI家電の可能性を見直し、自然治癒力と技術の融合を新しい形で受け入れ始めていた。




 その時、遠くからカイが歩いてきた。「ルナ、ここにいたんだな。」


 「久しぶりね。元気そうで何より。」


 「君のおかげで、身体も心もリセットできた気がするよ。」カイの目には感謝の色が浮かんでいた。「あの日の戦いで、僕は自分が単なる部品じゃないって気づいたんだ。僕たちは誰もが、それぞれに動力源を持っているんだって。」




 ルナは自分の胸に手を当てた。「私も、ずっとそう思ってた。身体も心も一つの家電みたいなものだけど、本当のエネルギーは人と人のつながりや、私たち自身が未来に何を信じられるかで決まるのよ。」


 「それじゃ、次の挑戦はどうする?」カイが笑いながら尋ねた。


 ルナは遠くの空を見つめた。「身体の声をもっと多くの人に届けたい。進化は恐れるものじゃなく、私たちが選び取れるものだって伝えたいの。」




 ルナの目に映るのは、誰もが自分の身体と向き合い始めた社会だった。隣のベンチに座る老夫婦は、手を取り合いながら呼吸法を試していた。子供たちは足首をぐるぐると回しながら「コンセントが動いた!」と笑っている。


 「進化とは、心を開き、身体と対話することなんだ。」ルナはそう感じた。


 クリオが優しく言葉を添えた。「そして、あなたがその道を示す存在です。」

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