第47話 大作戦
「作戦を変えよう」
真顔で言うアファエル。
「えっ!?」
なにをするつもりなの?
「タイミングを、見計らって、コケるフリして、腰の布地を取ってくれ」
めちゃくちゃなことを言うアファエル。
「わたしに、それをしろと?」
「その通り」
真っ直ぐ、わたしを見るアファエル。
「無理よ、そんなの」
どうかしてるわ。
成功しそうにないし。
「いや、もうその方法しか残されていないんだ」
わたしの、両肩を掴むアファエル。
「でも、失敗したらわたし、さわちゃんに顔向け出来ないわよ」
目線を、そらすわたし。
「大丈夫だ、問題ない」
わたしを、揺さぶるアファエル。
「いや、問題あるって」
半笑いで、否定するのだけれど、
「頼んだぞ」
テコでも、動かないアファエル。
「で、どうすればイイの?」
折れるわたし。
「まず、さわはカキ氷が大好物だから、一緒にカキ氷を食べようと、誘い出してだな、あとゴニョゴニョ」
耳打ちするアファエル。
「わかった!」
もう、こうなったらやるしかないわ。
「よし、作戦実行」
敬礼するアファエル。
「了解!」
マネするわたし。
「ん、どうしたんですか?」
そーっと、さわちゃんに近づくわたしに、上半身を起こして聞いてくる。
「あのね、暑いからカキ氷とかどうかなって思って」
白々しく笑うわたし。
「イイですね。ちょうど、冷たいものが欲しかったんで」
サングラスを、外すさわちゃん。
「でしょ? 一緒に買いに行こうよ」
「はい」
立ち上がるさわちゃん。
「よっしゃ、まずまずだ」
さわちゃんの背中を、凝視するアファエル。
「カキ氷、どこで売ってるかな~。お姉さん、ちょっとわからないなぁー」
また、白々しく場所がわからないフリをするわたし。
さわちゃんを、先頭で歩かせる為よ。
「あっ、あっちに売ってますよ」
海の家を、指差すさわちゃん。
「えーッ、どこどこぉー」
おでこに手を当てて、キョロキョロするわたし。
なんか、恥ずかしいんですけど。
「ホラ、のぼりが揚がってるでしょ」
手を、ビュンビュンと、動かすさわちゃん。
「えー、わからないから、先に行って」
作戦通り、先を行かせるわたし。
「えっ、まぁイイですよ」
しぶしぶ、先に歩くさわちゃん。
「ありがとうー」
「よしよし、そのまま」
物陰から、様子を見るアファエル。
周囲から、注目されている。
「うん」
アファエルが、親指を立てるので、わたしも立てる。
「あそこ、見えたでしょ?」
視線が、海の家に行くさわちゃん。
「今だッ」
ジェスチャーするアファエル。
「あっ、めまいが」
もう、どうにでもなれ。
「えっ!?」
わたしの手をとり、抱き抱える人がいる。
「大丈夫かぁ?」
誰かと思えば、かすみちゃんだね。
「あっ、かすみちゃん!」
あー、やってしまったぁー。
「急に、よろついたんでよ。どした?」
かすみちゃんが、わたしの顔を覗き見る。
「いっ。いや、ちょっと貧血気味で。ごめんなさい」
なんとか、誤魔化すわたし。
「いや、イイってことよ」
ケラケラと笑うかすみちゃん。
「アハ。アハハ」
チラッと、アファエルを見ると、鋭い目をしている。
「チッ、失敗かぁ」
残念がるアファエル。
「あれ、アファエル?」
かすみちゃんが、アファエルに気付く。
「おっ、バイトだったってな」
苦笑いするアファエル。
「そうなんだよー。終わって、ソッコーで来たわ」
ニヤリと笑うかすみちゃん。
「あー。それは、タイミングよかったな」
棒読みのアファエル。
「だねー。もう、みんな来てるの?」
と、聞くかすみちゃん。
「えっ、いやミキハちゃんが来てないかな」
わたしが答えると、
「そ。とりま、あーし着替えて来るわ」
トートバッグを、クイッと上げるかすみちゃん。
「そうね」
「それじゃあ、カキ氷買いに行こう」
そう、さわちゃんが言うと、
「えっ、カキ氷あーしも欲しい」
振り返るかすみちゃん。
「じゃあ、買っておいてあげるね」
と、わたしが言うと、
「お姉さん、ありー」
手を合わせるかすみちゃん。
「はーい」
「そうそう。味は、なにがイイの?」
肝心なとこを、聞き逃すところだったわ。
動揺しているなわたし。
「もち、イチゴっしょ。練乳もヨロ」
「わかったわ」
うなずくわたし。
「ういー」
「アファエルも、買いに行く?」
もう、別々に動く必要もないし。
「あぁ、うん」
頭を掻くアファエル。
「どうせなら、レミアちゃんとレクラちゃんにも、声をかけてくればよかったね」
ちょっと、放置したようになってしまったわね。
「まぁ、あの二人は、楽しそうにしてたから後でイイでしょ」
「えー、誰が後でイイって?」
背後に、レクラちゃんが来ている。
「抜け駆けは、ズルいわ」
レミアちゃんが、ムスッとしている。
「あっ、やっぱりそうよね」
冷や汗が出るわたし。
「さー、行こう行こう」
ピョンピョンと跳ねるレミアちゃん。
「アファエル。作戦失敗ね」
アファエルに、小声で言うわたし。
「くぅー」
「別の作戦は、ないのかな?」
と、アファエルに聞くと、
「別の作戦なぁ。アトラフィルさん」
また、真剣な顔をわたしに向ける。
「はい?」
いらないこと言ったわ。
「もう、入浴する時に、確認してもらうしかない」
真顔で言うアファエル。
「わたしが?」
冗談でしょ?
「そう。わたし」
アファエルが言う。
「ハァー。難しいけど、アファエルの頼みなら、仕方ないわ」
乗り掛かった船だし。
「ありがとぉぉ」
感謝するアファエル。
かき氷を持って、イスに座るメンバー。
「あむっ。ひぃぃー頭痛が」
かき氷を一口食べると、キーンとするわたし。
「無理言ってゴメン」
あやまるアファエル。
「いや、カキ氷がね」
ニコッと、笑うわたし。
「あー、イタター」
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