第34話 不本意な訪問
「はい。ご注文は?」
アファエルに、手招きして呼び寄せるわた
し。
「あの………」
少し、ためらうわたし。
「ん? どうした?」
「今日ね、アファエルがバイト終わったら、マンションに行ってイイかな?」
レクラちゃんが、わたしがモゴモゴ言っているのを見かねて言う。
「マンションって、まさかオレの?」
そう聞いて、わたしの顔を見るアファエル。
「うんうん」
うなずくわたし。
「えっ!? なんで?」
おどろいた表情を見せるアファエル。
「イイじゃん。みんなで」
かすみちゃんが言うと、
「みんなで!?」
このメンバー全員か聞くアファエル。
「そうそう。ダメかなぁ?」
あえて、ダメと言わそうとするわたし。
「うん、ダメだけど」
拒否するアファエル。
わたしは、ホッとするけれど、
「えーーーーッ」
レミアちゃんが、アファエルを睨み付ける。
「あっ、まぁイイけど………」
折れるアファエル。
なにかあったの?
「やったぁー」
レミアちゃんと、かすみちゃんとレクラちゃんが、両手を挙げてよろこぶ。
「うぅ、仕方ないか」
わたしと、アファエルがアイコンタクトする。
本当にゴメンね。
「いつ終わんの?」
かすみちゃんが聞くと、
「今日は、18時までだな」
壁に掛かっている、時計を見るアファエル。
「それなら、終わるまでねばるわ」
レクラちゃんが、そう言うと、
「いや、なにも頼まない気かよ」
と、つっこむアファエル。
「じゃあ、山盛りポテト」
レミアちゃんが、追加注文する。
「はい、よろこんで」
「居酒屋かよ」
わたしが、つっこむと、
「うぐッ」
固まるアファエル。
「ねぇ、そろそろじゃなーい?」
ポテトを、みんなでつまみながら、アファエルを待つ。
「そうよね」
「おーい、三浦」
店主が、アファエルを呼ぶ。
「はい、おやっさん」
「今日は、もうあがってイイぞ」
おやっさんが、そう言うと、
「マジっすか?」
あまり、うれしそうな返事をしないアファエル。
「どうした?」
不自然な感じに、聞いてみるおやっさん。
「いえ、別に」
苦笑いするアファエル。
「今日は、娘と同期のお客さんが来て、なんか、うれしいぞ」
感慨深い、おやっさん。
「はぁ、なんでですか?」
一応、聞いてみるアファエル。
「娘は今まで、ナースしていた時も、友人を連れて来るなんて、なかったからな」
ニコニコしながら言うおやっさん。
「学生の頃もですか?」
アファエルが聞くと、
「そうそう。正看護婦になるって、めちゃくちゃ頑張っていたからな」
昔を、思い出すおやっさん。
「へぇ、そうっすか」
「娘を、よろしくな」
変なことを言う、おやっさん。
「なんですか、いきなり」
ドキッとするアファエル。
「ハッハッハ」
笑いながら、奥の厨房に戻って行くおやっさん。
「なんだよ」
「ねぇ、まだ?」
かすみちゃんが、シートにのけ反りながら聞く。
「あぁ、着替えたら帰る」
蝶ネクタイを取るアファエル。
「早くしてね」
と、レクラちゃんが言う。
「あぁ、わかってる」
奥に、引っ込むアファエル。
「ここよ」
マンションの下まで行くと、
「なんか、すごいところね」
レクラちゃんが、見上げながら舌を巻く。
「ねー」
わたしも、そう思うよ。
「ただいま」
そう、アファエルが言うと、
「えっ、誰かいるの?」
レミアちゃんが聞く。
「………」
「あっ、あのね親戚の子と同居してるの。ねぇ、アファエル?」
わたしが、黙っているアファエルの代わりに答える。
「ああ、そうだが」
片付けながら、探すアファエル。
「しかし、広いね部屋」
レクラちゃんが、楽しそうに言う。
「スゴいよね」
わたしも、改めて思うわ。
「イイなぁーー」
レミアちゃんが、ソファーに腰掛けて言う。
「どうしたの?」
わたしは、アファエルがキョロキョロしているので聞くと、
「どこかに、出かけたみたいだな」
プリムちゃんは、出掛けているらしいね。
「そうなんだね」
ちょっと、会って確認したいことがあったけど。
「どんな人なの?」
レクラちゃんが、気になって聞く。
「女性だけど、見たらビックリするわよ」
わたしも、ある意味サプライズだったわ。
「へぇ、なんで」
「まぁ、会ってのお楽しみってことで」
わたしだけ、おどろくのはシャクだからね。
「そうなんだぁ」
「さあ、本題にまいりますか」
レミアちゃんが、メガネをクイッと上げて言うと、
「なんだよ、本題って?」
たじろぐアファエル。
「あのね、シミュレーターに乗せて欲しくて」
わたしが、手を合わせて言う。
「あー、なるほど。それが目的かぁ」
なんだよと言う顔をするアファエル。
「そうなの」
「でも、部屋が片付いてないから無理だ」
拒否するアファエル。
「そうなの?」
「うん」
「あー、レミは気にしないよ」
片付いてなくても、イイと言うレミアちゃん。
「私も」
レクラちゃんも、そう言うので、
「いや、そういうことでは」
困った顔をするアファエル。
「私は、アファエルが、どんなベッドで寝ているのか見たいなー」
レクラちゃんが、いたずらっ子ぽく言う。
「レクラちゃん、それって」
レミアちゃんが、聞き捨てならないと、つっこむ。
「あー、大丈夫。ちょっと、横になりたいかなって思っただけだから」
わざとらしく、アクビをするレクラちゃん。
「いや、それがマズいって言ってんの」
レミアちゃんが、真顔で言う。
「そうかしら。アファエルは、まだ独身よね?」
レクラちゃんが聞くと、
「まぁ、そうだが」
わたしの顔を見るアファエル。
「だったら、問題ないじゃない」
あからさまに、アファエルを狙っているようなことを言うレクラちゃん。
「いや、そういうのは、フェアにいきましょ?」
レミアちゃんが、レクラちゃんの腕を掴む。
「なによ」
空気が、ピリつく。
「待て待て」
割って入るアファエル。
「えっ?」
「お前らって、シミュレーションに乗りに来たんだろ?」
話を、本題に戻すアファエル。
「うん、そうだけど?」
レクラちゃんが、答える。
「じゃあ、なんでそんな話になる!?」
「あっ、言われてみれば」
我にかえるレミアちゃん。
「だよな。冷静になれよ」
半笑いで言うアファエル。
「うん、ちょっと話がずれちゃったね」
レクラちゃんが、苦笑いする。
「ごめんねアファエル」
レミアちゃんが、あやまる。
「まぁ、別にイイけど。今日は、疲れてるから」
結局、今日は無理とアファエルが言うので、かすみちゃんとレクラちゃんとレミアちゃんは、帰って行った。
「片付けるの手伝うよ」
わたしが言うと、
「うん、頼むよ」
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