第23話 島からの訪問者
「あったし、思ったんだけどー」
ミキハちゃんが、スタンバイしながらツインテールを風になびかせ、となりにいるレクラちゃんに言う。
『なにをなの?』
いきなり、なにを言い出すのかと横を向くレクラちゃん。
「シャインマスカット以外は、ジュースでよくねって」
レミアちゃんは、タイパを重視する女の子。
シャインマスカットが、好物らしい。
『かすみちゃんの口調が、うつっちゃってるわよ。それで?』
少し、ギャル語が伝染しつつある。
レクラちゃんも、例外ではない。
「エヘヘ。それでね、よく考えてみたら、スイカとナシも、そのまま食べたいなって」
じっくりと考えてたら、食感も大事だと気付いたミキハちゃん。
『なにそれ~』
やっぱり、エラそうなことを言っても16歳だなと安心するレクラちゃん。
「うん、やっぱ生よね」
『ウフフ。あっ、帰って来た』
アファエルと、わたしが帰って来たのを見つけて、フワリと浮き上がる。
『よーし、スタート!』
亀崎教官が、合図すると、
「負けないわよ」
『私も、頑張るわ』
スゴい速さで、飛び立つ二人。
「お帰り」
着陸したわたしたちを、亀崎教官が、にこやかに迎える。
「あぁ、今すぐ中止した方がイイかも知れない」
機体から、急いで降りて亀崎教官に言うアファエル。
「どうした?」
腕組みする亀崎教官。
「えの島の方だけど、なにか街でやっている。そのうち飛行禁止空域が設定されるかも知れない」
と、アファエルが報告すると、
「なんだ? なにを見た?」
問い詰める亀崎教官。
「あれは、前に見たかも知れない。バウンティハンター」
アファエルは以前、賞金稼ぎを見たと言う。
さっきの島に、賞金首がいたのだろうか。
「なに、バウンティハンターだと?」
その頃
「わッ。あいつら、あっち行ったと思ったら、スゴい勢いで」
わたしたちを追って来た3人。
ミキハとレクラが、真横を勢いよく通りすぎ、スキンヘッドの男がビックリする。
「いや、今は、あの施設が気になる」
校庭にいる人影を、凝視するゴーグルをかけた男。
「元々は、高校らしいですが、廃校になっているようだ。ガサ入れしますか?」
ツンツン頭の男が、タブレットで情報収集する。
「ああ、もちろん」
再び、アクセルを吹かす3人の男。
「あれ、もう帰って来たのかな?」
わたしが、空を見上げると、なにかが飛んで来ている。
「違う。あの機影は!」
爆音をたてて、着陸するジェットモービル。
3人の男たちの手には、ハンドガンが握られている。
「おい、お前ら動くな!」
銃を、何発か発砲する男たち。
「わっ、隠れろ」
あわてて、ジェットモービルの陰へと隠れる生徒たち。
「出てこい」
さらに、発砲する男。
「クッ」
撃たれないように、様子をうかがう。
「国連ハンターの安達太良魅津博だ。出て来ないなら、撃ち殺すぞ!」
安達太良と名乗る男が、ジェットモービルから降りて、銃を構える。
「待て、撃つな」
手を上げて、亀崎教官が出る。
「亀崎教官!」
生徒たちが、心配して呼び止める。
「さっさと出てこい」
「わかったから、もう撃つな」
体を、震わせながら歩み出る亀崎教官。
「お前らは、何者だ。なぜ、廃校に集まっている?」
安達太良が、詰問する。
「ここは、ジェットモービルのジョッキーを養成する学校だ」
正直に言う亀崎教官。
「なに? おい」
安達太良は、ふり返りツンツン頭の顔を見る。
「あー、ヤツらの言っていることは、本当っすね」
タブレット画面を見ながら、答えるツンツン頭。
「なんだよ。それで、賞金首はいないのか?」
イラ立ちながら、亀崎教官を見る安達太良。
「賞金首なんて、いるわけないだろう」
声を、荒らげる亀崎教官。
「それは、こちらで調べさせてもらう」
校舎の方へ、歩いて進む安達太良だが、
「お前らなんかに、好きにされてたまるか」
メガネをかけて、頭の上がツルツルの男が立ち塞がる。
「なに?」
立ち止まる3人。
「校長!」
この人、校長らしいわ。
「校長だと!?」
銃を、構える3人の男。
「おまえらおまわりさん呼んだぞ。明らかに不法侵入だ」
堂々と、言い放つ校長。
「なっ。仕方ない、出直すぞ」
安達太良が、きびすを返して機体に乗る。
「おう」
あと2人も、機体に乗って飛び去る。
「ふぅ、あぶないところでした」
亀崎教官は、どっと汗がふき出す。
「ハッハッハ」
高笑いする校長。
「本当に、呼んだんです?」
と、亀崎教官が聞くと、
「いや、呼んじゃおらぬ」
ニヤリと笑う校長。
「へっ、ハッタリですか」
目が点になる亀崎教官。
「そうだ。後で、保護者説明会なんてご免だからな!」
真顔で答える校長。
「アハッ。さすが校長、キモいっすね」
かすみちゃんが、笑いながら言うと、
「ちょっ」
ビックリするわたし。
「それを言うなら、キモが座ってるって言うのよ」
メガネを上げ、つっこむレミアちゃん。
「あれ。あーし、そう言わんかった?」
首を、かしげるかすみちゃん。
「言ってない言ってない」
手を、クイクイ動かす。
「なんか、ぶつかりそうなヤツがいたんだけど」
ミキハちゃんとレクラちゃんが、帰って来
る
微妙に、レクラちゃんの顔色が青い。
「あー、面倒なヤツらだから、ぶつからなくてよかったね」
アファエルが、そう言う。
「ホントそうだよ」
わたしも、ウンウンとうなずいていると、
「あーッ!」
レミアちゃんが、大声をあげる。
「どうした!?」
みんなが、注目すると、
「新車に、穴がぁ」
銃弾が、機体にめり込んだ穴が開いている。
「弾痕! あいつらの弾ね」
かすみちゃんが、穴をさわる。
「こっちも!」
ミキハちゃんも、発見する。
新型が3機、旧型が1機やられている。
「どうします、校長?」
亀崎教官が、校長に聞くと、
「広報が」
「はい?」
「広報が、足りておらぬな」
謎の回答をする校長。
「はぁ………?」
首をひねる亀崎教官。
「テレビを呼んで、この学校をアピールせねば」
どうやら、知名度が無いから、被害を受けたと結論付ける校長。
「あー、はい。そうかも知れないですけど、穴は………」
困り顔の亀崎教官。
「修理に出すしか、あるまい」
鼻息荒い校長。
「その間って?」
「前は、3機でやっていたのだから、修理が終わるまで、残った機体で回す」
その間は、増やさないと言う校長。
「「えーッ」」
ブーイングの生徒たち。
「やっぱ、そうですよね」
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