第10話 遠い親戚
「こいつら、同い年で。しかも、父親も一緒なんだよ」
片目を閉じて、右手で頭を掻きながら、しみじみと言うアファエル。
「なにそれ………逆の意味で、コワいわ」
なんと、ハレンチなと口を突いて出そうになるわたし。
さすがに、抑えたわ。
しかし、かなり複雑な状況よね。だって、一般的に言えば、どちらかの女性とは不倫関係にあるってことでしょ。
「つまり、母親が違うっていうか、その───」
細かい説明を始めるアファエルに、
「それ以上言ったら、あき兄ぃでもマジ殺すよ」
さわちゃんが、にらみつける。
コワいよ。
「おばさん、アファエルに手を出すなら、あたしがお前を」
首を、締めるジェスチャーをするプリムちゃん。
いや、マジでコワいからやめて!
「待て待て」
仕方なく、割って入るアファエル。
「ふぅ。とりあえず、伝言だけ伝えておくわ」
腕組みするさわちゃん。
「なによ!!」
臨戦態勢を、やめないプリムちゃん。
「『もう、大人なんだし、好きにし』だって。伝えたからね」
見下すような、視線を送るさわちゃん。
「へっ!? それだけ?」
拍子抜けするプリムちゃん。
「そ。わかった?」
苦笑いするさわちゃん。
「うん、わかったわ。おばさん」
「………わかってねぇだろお前」
再び、けわしい顔になるさわちゃん。
「まぁまぁ、なんだか丸くおさまったみたいだし」
いたたまれず、仲裁にはいるわたしだけど、
「あとさ、お姉ちゃんのメッセをブロックしてるだろ。ちゃんと解除しろよ」
「いや、お母さんのしつこいから解除しない」
まぁ、わたしが入るまでもなく、雰囲気がやわらぐ。
「フゥ~。まぁ、イイや」
あきらめるさわちゃん。
「あのさあ、おばちゃん」
「なによ?」
「ここにいる事は、家族に内緒にしてくれる?」
手を合わせて、お願いするプリムちゃん。
「えっ、内緒にしなきゃダメなの?」
キョトンとした顔になるさわちゃん。
もう、自由にする許しが出たのにね。
「………うん、できれば」
「それだったら、
プリムちゃんの顔に、顔を近付けるさわちゃん。
「えぇーッ。おばさんは、おばさんだもん」
なぜか、抵抗するプリムちゃん。
なにか、根が深いなこれは。
「イヤなの。お願いねみくこ」
「仕方ないなぁ。さわおばさん」
「よし。まあ、ギリオッケーだわ。それで、アファエル」
矛先が、アファエルに向く。
「はいっ」
なぜか、声が上ずるアファエル。
「わたくし、エアレースに挑戦することにしたの」
ニンマリと、笑うさわちゃん。
「えっ、おばさんがエアレースに………」
アファエルは、耳を疑う。
「そうよ。なにか不満でも?」
腕組みして、真顔になるさわちゃん。
「ってことは、おばさんが後輩になるんだ?」
ハッとするアファエル。
「そうね」
「いや、やめといた方がイイよ」
右手で、制するアファエル。
「なんでよ」
少し、イラッとするさわちゃん。
「思っているほど、簡単な世界じゃない。生半可な気持ちじゃあ、つとまらないよ」
どうせ、高校卒業後の進路に悩んでのことだろうと踏むアファエル。
「む………まぁ、よろしいわ。どうせ、アファエルはもう空を飛ばないんでしょ?」
なぜか、上から目線で言うさわちゃん。
「………あぁ、もちろん」
少し、眉毛を動かすアファエル。
「アファエル!」
わたしは、そんなの断言して欲しくないわ。
「そ。ふぅ~ん、意気地なしね」
口角を、上げるさわちゃん。
「なに?」
「あら、そうじゃなくて? 一度失敗したからって、やめてしまうなんて」
なんだか、アファエルを挑発している感じなの?
いいぞ、もっと言ってーッ。
アレ?
「なんだよ。今度は、オレと言い合いたいのか?」
全く、とりあわないアファエル。
「いいえ。ただ、あなたがレースに出ないなら、賞金獲得のチャンスが、わたくしにもあるわね。そう思って」
なにか、不適な笑みを浮かべるさわちゃん。
「だから、そんなに甘くないから」
「わたくしも、新人王を獲得して大手を振って歩きたいわね」
スゴい悪態をつくさわちゃん。
「まぁ、せいぜい頑張ってくれ」
鼻で笑うアファエル。
「落ちぶれた、あなたに言われなくても、頑張りますわ」
「ンッ………」
これは、さすがに効いた?
なんだか、えぐりかたが若干オーバーキルよね。
「ちょっと、あなたねぇ」
たまらず、割って入るわたし。
「あーそうだ」
「えっ?」
まだ、なにか言うのかと、身構えるアファエル。
「あこがれの先輩が、どんな生活をしているのか、一泊して見せてもらいたいわ」
場の空気が、一瞬凍りつく。
「っツ、泊まるつもりなのかよ?」
冗談だと思うアファエル。
「そ。イヤだって言うのなら、みくこがココにいるって言っても?」
脅すさわちゃん。
「………仕方ない。それなら、一泊だけだぞ」
仕方なく折れるアファエル。
「さっすが先輩。話がわかりますわ」
ケラケラと笑うさわちゃん。
「ねぇアファエル。大丈夫なの?」
なにか、問題があると、わたしが連れて来た責任があるような、ないような。
「一泊くらいなら、耐えられるかも………」
無理やり笑うアファエル。
なんか心配だわ。
「アハッ」
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