第6話 ナイトライフ

「それでさ、あいつ10年くらい前に『100年前の終電が~』って、それ以来あの女がテレビに出て何言っても、全然耳に入ってこない」


 女性芸能人のことで、盛り上がる。

 居酒屋を出て、帰路についている三人。


「アハハ、男の家に行った時点で、ヤるつもりだよね」


 アファエルの話に、同意するわたし。


「そうっしょ、お姉さん?」


 プリムちゃんが、わたしの顔を見る。


「まぁね~」


 わたしも、今ごろアファエルと………


「それはそうと、この後どうするよ?」


 アファエルが、わたしに帰るか聞くので、


「アファエルの家で、呑みなおしたいなぁ~」


 と、帰る気なんてないと言う。


「まだ、呑む気なんだ?」


 つっこむアファエル。


「ウフフ」


「あたし、一緒にいてもイイの?」


 プリムちゃんが、心配そうにわたしに聞く。


「全然イイよぉ~」


 もう、仲良くなっちゃったしなぁ。


「じゃあさ、セックスはするの?」


 どストレートに聞くプリムちゃん。


「いや、無理だろ」


 アファエルは、顔を赤くしながら否定する。


「ウフフ」


 ニコッと笑いながらアファエルの顔を見る。


「えっ、オレはやらないからな」


 真剣に、わたしの顔を見るアファエル。


「またまたぁ。そうは言ってても、ヤ───」


 わたしが、言いかけると、


「やらないっての」


 頑なに言うアファエル。


「ぶぅ~~~~」


「たっだいまぁ~」


 アファエルが、カギを開けてドアを開くと同時に、体を滑りこませるわたし。


「あなたの家じゃねぇよ」


 半笑いで言うアファエル。


「アハッ、そうでした~」


 ペロッと、舌を出すわたし。


「お姉さん、お風呂入る?」


 プリムちゃんが、そう言うので、


「うん、イイの?」


 と、プリムちゃんに聞きかえすと、


「イイのイイの」


 右手を振るプリムちゃん。


「お~い、オレの家だぞ~」


 ミネラルウォーターを、冷蔵庫から取り出すアファエル。


「えっ、イイじゃん。ダメっすか?」


 プリムちゃんが、口をとがらせる。


「まぁ、イイけど………」


 フゥーッと、ため息を吐くアファエル。


「入れてくるね」


 お風呂に向かうプリム。


「ありがと~」


 なんだか、うれしいな。


「なんか、食べる?」


 アファエルが、聞いてくるので、


「ん~、缶詰めある?」


「えっ、あるにはあるけど」


 あまり、気をつかわせないように聞いたわたしだけど、疑問に思うアファエル。


「へぇ~、色々あるね」


 棚の奥から、10個くらい出てくる。

 くじらとか、うまそうね。


「どうするの?」


「もちろん食べるよ。アジの南蛮漬け開けてイイ?」


 と、わたしが聞くと、


「うん、イイよ」


「お湯、入ったよ~」


 缶詰めを食べていると、プリムちゃんがそう言うので、


「あっ、うん。アトラフィルさん、先に入って」


 と、アファエルが言う。


「えっ、なんか悪いよ」


 ついさっき会ったばかりだし。


「いや、お客さんだしお湯が汚れる前に入ってよ」


 そう、アファエルが強く言うので、


「うん、そうする~」


 お言葉に甘えることに。


「メイク落としは、あたしの使ってイイよ」


 プリムちゃんも、言ってくれて、


「ありがとう」


「ねぇ、お姉さん」


 体を、くねらせるプリムちゃん。


「うん? どうしたの?」


「一緒に、お風呂入ろうよ」


 二ヤァと笑うプリムちゃん。


「えっ」


 ビックリして、固まるわたし。


「背中洗いっこしようよ~」


「コラ、お客さんを困らすな。お前は一番最後だ」


 アファエルが、つっこむ。


「チェッ!」


 口を、尖らせるプリムちゃん。


「さぁ、ゆっくり入って」


 と、うながすアファエル。


「うん、まぁ一緒でもよかったけど………」


 そう、小声で言うと、


「えっ、なんか言った?」


 ぽかんと、口を開けるアファエル。


「あっ、いえ」


「あっそ」


「ブクブクブク。あの子に見られないようにセックスするには………」


 体を洗って、湯船につかりながら考える。


「ねぇ」


 プリムちゃんが、ソファーに座るアファエルに話かける。


「なんだよ」


「これから、エッチするんでしょ?」


 アファエルの、耳元でささやくプリムちゃん。


「ブッ! しないよ今日は」


 お茶を吹くアファエル。


「今日は?」


「いちいち細かくつっこむなよ」


「えへへ」


「お先にいただきました」


 わたしが、お風呂から出ると、


「はいよ。さて、入ってくるか」


 ソファーから立つアファエル。


「一緒に入る?」


 プリムちゃんが、いたずらっ子ぽく笑う。


「やめてくれ」


「冗談よ」


「しかし、どうしたら………」


 お風呂の中で、考えるアファエル。


「おい、出たぞ」


「シッ!」


 口の前で、人差し指を立てるプリムちゃん。


「どうした、エッ?」


 プリムちゃんが、指差す先を見るアファエル。


「お兄ちゃんのベッドで、寝ちゃったよ」


 小声で言うプリムちゃん。


「あぁ、そう。ふーん」

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