第3話 オトコの家

「ヴ゛ー。ちょっと、酔ったみたいかも~」


 わたしにしては、ピッチ早かったかも知れないわ。


「完全に、仕上がってるな。もうやめとけって言ったのに」


 止めたのにと、苦笑いするアファエル。


「イイのよ~」


 よろけながら、歩道か車道を歩くわたし。


「どこがイイんだか。初対面だぞ」


 後ろから、両肩を掴むアファエル。


「イイのイイの!」


 手を、ヒラヒラするわたし。

 たぶん、顔が赤いな。


「う~ん、ホテル行くか?」


 アファエルが、そう言うけど、


「ホテルじゃなくてぇ」


 もっと、行ってみたいところ。


「えっ、帰る? 終電、おわってるよ?」


 スマートフォーンで、時間を見るアファエル。


「ちがうの」


「じゃあ、どうするの?」


 困ったように笑うアファエル。


「あなたの家に泊めて」


 行ってみたいの。


「えっ、マジで言ってる?」


 顔色が、青ざめるアファエル。


「そう。マジで言ってりゅ」


 ニヤりと笑うわたし。


「冗談だろぉ」


 あきれるアファエル。


「ホントよ本気」


「だって、オレだって男だぜ」


 なにか、とりつくろうとしてるね。


「え~。生本番が、会う約束だったから、全然問題ナッシング」


 そういうママ活。


「だとしてもだな」


 苦笑いするアファエル。


「な~に~? わたしを入れたくない理由が、あるの?」


 問い詰めるが、


「いや、無いけど………」


 特には、無いらしい。


「それなら、ケッテーェ」


 通りで、タクシーを止める。


「ちょっと、待ってくれよォ」


 あわてるアファエル。


「なにしてんのさ?」


 タクシーの中から、アファエルの様子を見る。


「いや、連絡をとるの忘れてて」


 スマートフォンを操作しながら、タクシーに乗り込むアファエル。


「ふぅ~ん。彼女?」


 めっちゃ怪しいなぁ。


「違う」


 誤魔化すアファエル。


「へぇ~」


 そうこうしていると、アファエルの住んでいるマンションに着く。


「よし、こっちだよ」


 案内されて、しばらく歩く。


「うん」


「ここだよ」


 指差すマンションが、めっちゃ高い建物。


「スッゴーイ」


 口が、あいちゃってふさがらないくらい。


「あっ、電気。切りわすれ………ッッ」


 エレベーターから降りて、部屋のカギを開けると、2~3歩歩いたアファエルが固まる。


「おじゃましまーす。って」


 わたしも、入って隣の部屋を見ると、女性がいる。


「あー、おかえり~」


「彼女がいないって、奥さんがいるって意味だったの?」


 信じらんないわ。

 ランジェリー姿でなんてね。


「そうじゃない。ちゃんと、メッセ送った

のに、なぜいるんだ!?」


 寝そべっている女性を、しかるアファエル。


「あぁ、ちょっとウトウトしてたわ~」


 スマートフォーンを、つまんで画面を見る女性。


「奥さんでもなければ、なんなのこの子は!? まさか、家出少女?」


 まさかとは、思うけれども。


「そう、家出少女」


 すんなりと、認める女性。


「おい、すこし黙っといてくれ」


 アファエルが、しかりつける。


「なんなの! おかしいんじゃないの」


 まさかまさかよ。


「いや、はとこなんだ」


「おかしい! 考えられ………へっ?」


 今、なんて言ったの一体?


「いとこなの。あたしたち」


 立ち上がって、伸びをする女性。


「そう、親戚」


 腕組みするアファエル。


「はぁぁ? じゃあ、なんで下着姿なのよ!?」


 ますます疑問だわ。


「オレの母親の家に、ころがりこんでいた

んだよ。それで」


「どういうこと? アファエルのお母さんは?」


 なんで、アファエルのお母さんの家から、こっちに来ることになったのよ。


「旅立った」


 首を振るアファエル。


「それって………まさか」


 あの世ってこと?


「イタリアに」


 真顔のアファエル。


「ヘッ?」


 目が点になるわたし。


「しばらく、旅行したいってさ。勝手だよな」


 肩を、すくめるアファエル。


「えっ、一緒に行かなかったの? さそわ

れなかった?」


 プリムちゃんに聞くと、


「さそわれたよ」


 サラッと言うプリムちゃん。


「じゃあ」


「だって、言葉の通じないとこって、めんどくさいっしょ」


 腰に手を置いて、鼻を鳴らすプリムちゃん。


「あっ、まぁそうかもね」


 わたしの方が、直視できないわ。


「それで、一時的にココであずかることになったんだわ」


 ガックリと、肩を落とすアファエル。


「えーッ、他に選択肢はないの?」


 旅行から、帰ってくるまで一人暮らしをさせる………は、マズいか。


「だって、家に帰れって言ったって、それなら野宿するって言うんだ。それなら、仕方ないだろ」


 困ったように笑うアファエル。


「うーん。そうよね」

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