第8話

昼食を食べ終え、水族館を後にする。電車に揺られ、大きなショッピングセンターを目指す。


「どんな服にしようかな〜。あ、マシロお揃いのもの買おうよ!」


「え〜、ミツキのものだけ買いなよ。アタシはこのままで十分だし」


「小物でいいから!お願い!」


「……仕方ないな……。お金が余ったらね」


「やったー!何お揃いにしようかな〜」


 マシロは私のお願いに弱い。無理やり約束を取り付け私は得意げに前を向く。


 マシロとのお揃いが欲しかった。唯一の肉親であり、家族だから。繋がりが欲しかった。それがどんな小さなものでも。小物ならアクセサリーだろうか。イヤリングかネックレスか。ブレスレットもいいかもしれない。


そんなことを考えながらガタゴトと揺られる。心地良い振動が眠気を誘う。マシロの肩に頭を預けウトウトと夢の世界への引きずり込まれた。


「ミツキ、駅着いたよ」


 そんな声で現実に引き戻される。また夢を見ていた気がする。どんな夢だったかは忘れてしまったが。


 そんなことよりも今度はショッピングだ。少し歩くと大型ショッピングセンターが見えてくる。どんな服を買おうか。フラフラと1階と2階を一回りし、目星をつける。


「あそこのお店のワンピースかわいいね」


 それは白と紺を基調としたベルテッドワンピース。それに合う靴も同じ店で見つけた。


「うん、似合うね」


「ならこれにする!ありがとう!」


 試着を終え、会計へ持っていく。2点合わせて5600円。割引があったらしく、元の値段よりお得に買うことができた。このまま着ていってもいいか聞くと、構わないとの返答があったため、試着室で着替えを済ませる。


「どぉ?似合う?」


「うん、かわいいよ」


 微笑みながらマシロは答える。その顔を見るのが好きだった。残りの残金は5000円程。これだけあればアクセサリーは買えるだろう。服は選び終わった。次はアクセサリーの番だ。アクセサリー系が多いのは2階だったはずだ。エスカレーターで移動し、あぁでもない、こうでもないと話しながら見て回る。その時とあるひとつの店の前で止まった。


「このブレスレットかわいいね」


「あ〜、いいね。デザイン好きだな」


「あんまり高くないし買えそうだね、これどう?」


「まだ諦めてなかったんだ……。いいよそれにしよう」


 2つ分のブレスレットを持って会計へ向かう。値札を外してもらい、袋も断りそのままもらう。


「はい!マシロの分」


「ん、ありがと」


「えへへ、おそろいだね!」


「ミツキは1度決めたら譲らないからね」


「何それ悪口〜?」


「まさか!さて、これからどうする?食べ歩き行く?」


「行きたーい!」


 なら行こうか、と次の行動が決まる。

 大型ショッピングセンターを出て、繁華街を目指す。そこなら屋台が多く立ち並んでいる。ふと上を見上げた。街頭ビジョンに殺人事件のニュースが流れている。被害者は……立花マサカズ。私たちの父親だ。ニュースによれば、娘が姿を消しており行方を探していると。


「マシロ、どうしよう。警察に追われてるよ」


「食べ歩きは中止にしようか。戻って人気のなさそうなところに行こう」


 どうしたらいいのだろう。まだ父親は私たちの邪魔をするらしい。

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