クインシー 第7章②:星屑の浜辺
◇ ◇ ◇
※本節には一部性的描写を連想させる表現が含まれます。ご注意ください。
◇ ◇ ◇
静かな足音が背後から響き、クインシーは振り返った。
トリアが月明かりの下に立っていた。
その瞳は夜空の星のように輝き、クインシーの心を揺さぶった。
彼女の美しさはどこか儚げだった。
トリアはゆっくりとクインシーの隣に腰を下ろし、何も言わずに彼の肩にもたれかかった。
二人の間に漂う静寂が、何よりも雄弁に二人の気持ちを物語っていた。
クインシーは彼女のぬくもりを感じながら、そっと彼女の手を取った。
「こんな夜、君がそばにいてくれるだけでいい…」
クインシーは言葉には出さずにそう呟き、彼女の手を優しく握りしめた。
「クインシー…」
トリアが甘く囁くように名前を呼んだ。
その声はまるで風に乗る鳥の鳴き声のように心地よく、クインシーの胸を切なく締め付けた。
トリアの瞳は優しく彼を見つめ、彼に全てを許していた。
その瞳に引き寄せられるように、クインシーは彼女の肩にそっと手をかけた。
自然と二人は唇を重ねた。
すべての音は消え去り、時間が止まった。
世界にはただ、二人だけが存在していた。
クインシーはトリアの柔らかな唇の感触を味わいながら、彼女をさらに強く抱き寄せた。
トリアもまた彼の背中に腕を回し、彼の存在を全身で感じた。
波の音が遠くでささやくように響き、月光が二人の姿を銀色に染める。
クインシーの指先が、トリアの肌を愛おしむように、柔らかく、優しく撫でていく。
トリアの吐息が夜風に溶けていき、その度に二人の距離は限りなく近づいていく。
波のリズムが二人の鼓動と重なり、やがて一つの調べとなっていった。
砂浜の上でトリアの長い髪が輝き、まるで天の川のように美しく広がる。
その神秘的な神々しさに、クインシーは息を呑んだ。
愛おしさと切なさが入り混じる感情の中で、二人の体が寄り添う。
トリアの無垢な姿が月光に照らされ、彼女の曲線が優美な陶器のように白く輝く。
クインシーの指が、唇が、その輪郭をそっと辿るように触れていく。
白い曲線が優しくなぞられるたび、トリアはその動きに身を委ねる。
トリアの震える吐息は、クインシーの耳元に愛の詞となって響いた。
言葉ではない方法で二人は対話を重ね、互いの心を深く知り合っていく。
波音が高まるように、二人の愛も深まっていく。
呼吸も、存在すらもが一つに溶け合う。
砂浜に描かれた二人の影は、もはや区別がつかないほどに重なり合う。
やがてトリアの指先が、クインシーの背中に跡を残すほどに強く食い込み、彼女の悦びが彼の全身を駆け巡った。
愛を確かめ合った瞬間は永遠に特別なものとなり、未来へと繋がる確かな絆を魂へと刻みつけた。
朝日が水平線から顔を出し、世界を金色に染め始める頃、クインシーとトリアは浜辺で肩を寄せ合っていた。
空は澄み渡り、一日の始まりを告げていた。
「クインシー…」
トリアがそっと呟いた。
すべてを捨てて彼と共にあることを選んだ彼女の決意が、そこに込められていた。
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