第4章⑧:Destrion計画の発覚
停止した列車の最深部、ロイは行き止まりの部屋の前で足を止めた。
「ここだ」
厳重に施錠された扉の向こうには、シャドウベインの重要機密が隠されているはずだった。
「どうする?」
ニコラスが問いかける。
「ハロルド」
ロイが通信機を手に取る。
「最深部の扉を発見した。電子ロックの解除を頼めるか?」
「了解です」
ハロルドの声が応じる。
「まず構造を解析…ん?これは?」
「どうした?」
「通常の電子ロックの下に、別のセキュリティが組み込まれていますね」
ハロルドの声に緊張が混じる。
「デジタルな反応じゃない。まるで何か…生きているような波形です」
ロイは一瞬考え込む。
「ユージーンに連絡を」
ユージーンはシルヴェスターとマキシマスを伴って到着した。
「魔術による封印だな」
シルヴェスターが扉に手をかざして確認する。
「片方が解ければもう片方が自動で施錠する。非常に高度な術式だ」
「二重ロックか」
ニコラスが呟く。
「では」
マキシマスがハロルドに向き直る。
「同時に解除を試みよう、ハロルド。電子ロックと魔術封印、両方を同時に解除するんだ」
ハロルドのキーボードを叩く音と、マキシマスの詠唱が重なり合い、扉が静かに開放される。
中には大型のサーバールームが広がっていた。
壁一面を覆うモニター群が青白い光を放っている。
「破損したデータを確認」
ハロルドが素早くキーボードを操作する。
「でも、またですか…」
「同じ構造だね」
マキシマスが頷く。
「データ自体にも二重の保護がかけられている」
「ええ」
ハロルドは画面に映る波形を指差す。
「通常の暗号化の上に、魔術による封印がかかっています。片方だけ解除しても、もう片方がロックし直して、データは読み取れない」
「厄介な仕掛けだ」
シルヴェスターが腕を組む。
「科学と魔法、両方の知識がないと解読できないようになっている」
ハロルドとマキシマスによる解読作業が始まった。
ハロルドがハッキング技術で暗号を解読しながら、同時にマキシマスがその先にある魔術の封印を一枚一枚剥がしていく。
「見えてきたぞ!」
ハロルドの声が上がる。
「データの全容が…!」
大型モニターに次々とファイルが表示される。
そして、ある一連のデータに、全員の表情が凍る。
「
ハロルドが目を凝らす。
「これは…」
シルヴェスターの声が震える。
「まさか…」
データの中身が明らかになるにつれ、部屋全体の空気が重くなっていく。
「ABYSSの…再現?」
ユージーンが絶句する。
詳細な資料が次々と表示される。
シャドウベインは違法薬物の取引を表向きの活動として、真の目的を隠していた。
この特殊列車は、彼らにとっての移動式金庫だったのだ。
「30年前の大災害を人工的に再現する」
マキシマスが静かに告げる。
「成功すれば、シャドウベインは人類が未だかつて手にしたことのない軍事力を得ることになる」
「つまり、世界の支配者として君臨する…か」
ロイの声が低く響く。
「それだけは阻止しなければならない」
シルヴェスターが声を絞り出す。
「絶対に…」
「ああ」
ロイが強く頷く。
「俺たちの本当の戦いがいま、始まったということだ」
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