第4章⑨:チーム「TRANSCENDA」の結成
全てのメンバーがNexusの作戦室に集結していた。
サーバールームで発見したDestrion計画のデータが、中央モニターに青白い光を放ち、部屋の空気を重くしている。
クインシーは壁際で腕を組み、無言で床を凝視していた。
Destrion計画の漏洩、この事実を組織に報告しなかったという事実は、シャドウベインへの裏切りを意味する。
裏切り者の末路を知り尽くした彼の背筋が、恐怖で凍り付く。
止めどなく脳裏に浮かぶ残虐な処刑の光景。
見せしめとして、およそ人間として考え得る限り最も残酷な方法で命を絶たれる同僚たちの姿を、彼は何度も目にしてきた。
だがもう一方の選択肢の先には、ハロルドの拘束と仲間たちの死が待ち受けている。
今からでも遅くない、仲間の…トリアの命を組織に売り渡す。
代わりに自分の命が助かる。
その想像もまた彼の心を苛む。
表情を取り繕いながら、クインシーは自分を追い詰める思考との戦いを続けていた。
ロイが立ち上がり、作戦室の空気が一瞬で引き締まった。
「今回の作戦で分かったことがある」
全員の視線が彼に注がれる。
「我々は、想像以上に巨大な敵と対峙することになった」
ロイは断言する。
「シャドウベインは単なる犯罪組織ではない。世界の支配すら企てる、巨悪犯罪組織だ」
静寂が室内を支配する。
モニターの光が、メンバーの緊張した表情を青く照らしている。
「しかし、同時に確信も得た」
ロイの声に力が込められる。
「我々は、それぞれに異なる能力や経験を持っている。その力を組み合わせることでどれほどの可能性が広がるか、今回の作戦で実感できた」
「ロイさん」
トリアが声を上げる。
「私にも、何かできることはありますか?」
「ああ」
ロイは静かに頷く。
「俺たち一人一人が、かけがえのない存在だ」
クインシーの胸が痛む。
かけがえのない存在、その言葉が彼の苦悶をより深めていく。
「これからの戦いでは」
シルヴェスターが重々しく声を発する。
「状況に応じて、各々が持てる力を最大限に発揮する必要がある」
「そのためにも」
ロイが声を上げる。
「提案がある。我々全員で、新たなチームを結成しよう」
「新しいチーム?」
ハロルドが身を乗り出す。
「NexusとBE-COOL、そしてシルヴェスターたち。全員の力を結集した、新たなチーム『
「TRANSCENDA…」
ユージーンが静かに反芻する。
「いいネーミングだ」
ニコラスも無言で頷く。
「俺は賛成です」
ハロルドが即座に答える。
「僕たちの力で、必ず道は開けるはずだ」
クインシーは喉が締め付けられるような感覚に襲われた。
だがそれを表には出さず、あえて明るく振る舞う。
「よし、やってやろうぜ!」
「TRANSCENDAか。その名は、限界の超越を意味するな」
シルヴェスターが静かに頷いた。
「シャドウベインの支配を超え、アビスの影を乗り越える決意を象徴している」
「シルヴェスター、どうだ」
ロイが問う。
シルヴェスターはマキシマス、キャシディと視線を合わせ、三人で静かに頷く。
「ああ、共に戦おう」
シルヴェスターの声には確かな決意が宿っていた。
クインシーは薄明かりの中、トリアとハロルドの姿を見つめる。
選択の時は刻一刻と迫っている。
どちらを選んでも、取り返しのつかない結末が待っているのだ。
「決まりだな」
ロイが全員を見渡す。
「これより我々は、チーム『TRANSCENDA』として戦う」
朝日が地平から昇り始め、その光が作戦室の窓から差し込んでくる。
世界の命運を決める戦いが、今、始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます