第4章⑤:作戦開始
奇襲作戦決行の夜がやってきた。
月明かりのない暗闇の中、二つのチームが指定された合流地点に集結していた。
「予定通り、列車は2時15分にこの地点を通過する」
ユージーンが暗視ゴーグルを調整しながら告げる。
「最初の巡回が来るまで、あと30秒」
ロイとニコラスが無言で身を潜める。
暗闇の陰に、二人の姿が完全に消える。
足音が近づく。
二人の巡回員が懐中電灯の光を照らしながら巡回してくる。
その瞬間。
「…っ!」
音もなく、警備員たちの意識が途絶えた。
ロイとニコラスの影が闇の中で交差する。
「C地点、異常なし」
ロイが警備員の無線を奪い取り、低い声で報告する。
「了解、次のポイントへ」
敵の本部から返事が返ってくる。
襲撃に気付いた様子はない。
ロイは仲間たちへの通信に切り替える。
「巡回、無力化完了。次は2分後。各自、持ち場の確認を」
「RCSJの設置、開始します」
ハロルドが大型のキャリーカートを示す。
「ユージーンさん、クインシー、そして俺とトリアの三組でRCSJを運び、三カ所の電源を同時接続します」
巡回の合間を縫うように、三組は重いRCSJを運びながら、それぞれの持ち場へと向かう。
「ハロルド、通信状態は?」
ユージーンが確認を入れる。
「クリアです」
ハロルドは周波数を調整しながら応じる。
「各自の位置、モニターで確認できています」
新たな足音。
今度は三人組の巡回員。
一瞬の静寂の後、闇に呑まれるように倒れる音。
「A地点、クリア」
ニコラスが警備無線で報告。
「次のポイントに移動」
「了解、定刻通り」
本部からの応答、敵はまだ襲撃に気づいていない。
ユージーン、クインシー、ハロルドとトリアは設置ポイントへと進み続ける。
月のない夜空の下、彼らの息遣いだけが響く。
「第一ポイント、到着」ユージーンの声。
「次の巡回だ」ニコラスが注意を促す。
一時的に設置作業が停止する。
三組は息を潜め、ロイとニコラスの動きを待つ。
警備員たちの無力化と、淡々とした無線のやり取りが続く。
「B地点、異常なし」
ロイの声が敵の警備無線に流れる。
「続行してくれ」
続けて仲間への連絡、設置作業が再開される。
「第二ポイント、準備OK」クインシーの声。
「第三ポイント、OKです」トリアの報告。
遠くで列車の轟音が聞こえ始める。
「列車、目標地点まであと60秒」
ハロルドの声が全員の受信機に響く。
「最後の巡回を確認」
ロイが告げる。
「E地点、異常なし」
静かに巡回を倒したニコラスが敵の警備無線で最後の偽報告を完了させる。
線路の振動が、列車の接近を知らせる。
「RCSJの起動準備に入ります」
ハロルドが指示を出す。
「電源接続、カウントダウン開始。30秒前」
夜風が冷たく頬を撫でる。
「20秒」
「10秒」
「…2、1、0。接続!」
三組が同時に電源を接続する。
RCSJのパネルが青く明滅を始める。
「起動確認!」
ハロルドの声が緊張に高まる。
「列車、対象範囲に進入!RCSJアクティベート!」
激しい轟音とともに列車が通りかかる。
その瞬間、RCSJが完全起動。
列車のセキュリティシステムが一斉にダウンし、緊急ブレーキが作動する。
金属の軋む音が闇を切り裂く。
「制御、成功!」
ハロルドの声に安堵が混じる。
「列車、完全停止!」
「総員、突入開始!」
ロイの声が響き渡る。
ロイとニコラスが闇の中から姿を現し、列車に向かって疾走する。
その後ろからは拳銃を持ったユージーンとハロルドも駆けつける。
深夜の闇を、激しい戦闘の音が切り裂き始める。
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