第4章②:奇襲作戦の計画

 さかのぼること1ヶ月。

 Nexusの作戦室で、ユージーンはタブレットに映る情報を読み込んでいた。


 「シャドウベインか…」

 ユージーンは静かに呟く。

 「ついに動き出したな」


 ロイが腕を組んだまま尋ねる。

 「それは確かか?」


 「ああ」

 ユージーンは椅子から立ち上がり、中央のモニターに情報を映し出す。

 「間違いない。裏社会の動きが変わった。シャドウベインが動きだした証拠だ」


 ニコラスも頷く。

 「あの組織が動くと、裏社会に必ず波紋が広がる」


 「奴らのここ最近の動きを見てほしい」

 ユージーンがモニターに地図を映し出す。


 「港湾地区での武器密輸、オフィス街を隠れ蓑にした資金洗浄、そして先月のバイオ研究所襲撃事件、全部シャドウベインが裏で糸を引いている。」


 ユージーンは続ける。

 「これらはそれぞれが大規模な犯罪だが、全てがもっと大きな何かの準備段階だったと考えるべきだ。そして今度は」


 ユージーンが新たな情報を映し出す。

 「シャドウベインの特殊列車が動く」


 ロイが眉を上げる。

 「あの輸送列車か」


 「ああ」

 ユージーンは目を細める。


 「重要物資輸送用の専用列車。違法薬物、武器、その他の闇取引の品々。シャドウベインはこの特殊列車で裏社会の大規模な違法物資輸送を実現している」

 ユージーンが説明する。


 「一般の鉄道網とは完全に独立した路線を持ち、堅牢な特殊武装セキュリティシステムで守られている」


 「闇の帝王とも呼ばれる組織だからな」

 ニコラスが腕を組む。

 「独自の輸送網すら持っているというわけだ」


 「今回の取引規模は?」

 ロイが尋ねる。


 「過去最大だ」

 ユージーンが眉を寄せる。

 「これだけの規模なら、列車には相当な警備が付くはずだ」


 その時、作戦室の扉が開かれた。

 「失礼します」

 トリアの声に続いて、ハロルドとクインシーが入室してくる。


 「来てくれたな」

 ロイが三人を見渡す。

 「重要な作戦がある」


 ユージーンが状況説明を始める。

 「ターゲットはシャドウベインの重要物資輸送用列車だ。これを襲撃し、過去最大規模の違法薬物取引を阻止する」


 大型モニターには列車の概要図が映し出される。

 ハロルドは食い入るように図面を見つめる。

 「このセキュリティシステムは相当に高度ですね、最新鋭の技術と武装だ」


 「突破は可能か?」

 ロイが尋ねる。


 「やってみます」

 ハロルドは慎重に答える。

 「遠隔でセキュリティに侵入し、一時的に制御を奪取、システムダウンさせることは可能かも知れませんが、武装の無力化を考えると、専用の装置が必要になるはず」


 「わかった、では改めてチームBE-COOLに仕事を依頼したい。引き受けてくれるか?」

 ロイが三人を見渡した。


 「私は…何をすればいいですか?」

 トリアが少し不安そうに尋ねる。


 ロイは優しい目で答える。

 「お前は後方支援だ。まずはハロルドを手伝い、専用装置の開発と設置に専念してくれ」


 「俺は引き受けたい。これはたぶん、俺にしかできない仕事だ。いいよな、クインシー?」

 ハロルドはクインシーに向き直った。


 「もちろん!こんなでかいチャンスを俺たちが逃すわけないだろ!?」

 クインシーは興奮した様子でハロルドに応じたが、内心では迷いが生じていた。


 「組織に報告すべきか…?いやまだ様子を見てみよう。こいつらに勘付かれると厄介だからな」

 だがその呟きが若干言い訳めいていたことに、彼はまだ気が付かない。


 「それでは、よろしくお願いする」

 ロイは立ち上がって右手を差し出した。

 ハロルドはその右手をしっかりと握り返し、二つのチームの合同作戦が始まった。

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