第2章④:チームNexusの勝利
一方、STORMBRINGERの追跡は続く。
ロイとニコラスの息の合ったコンビネーションが、ターゲットを追い詰めていく。
夜の街を駆け抜ける彼らは、まさにプロフェッショナルだった。
「ニコラス」
ロイの声は落ち着き払っている。
「どうだ?」
「前方の裏路地だな」
ニコラスはショットガンを構え直した。
「奴ら、狭い道で撒こうとするだろう。速さじゃ俺たちに勝てないからな」
ニコラスの言葉通りに黒塗りの車が急ハンドルを切り、狭い路地に飛び込む。
続いてロイも滑らかにギアを落としてブレーキを踏みこみ、STORMBRINGERをスライドさせて曲がり角に滑り込んだ。
狭い裏路地で、両側の壁がSTORMBRINGERの側面をかすめていく。
「やるな、だがここまでだ」
ロイの目が光る。
「ニコラス、今だ!」
ショットガンの轟音が狭い路地に響き渡った。
ニコラスの狙いは正確で、弾丸はメルセデスのクーラーを正確に貫いた。
ボンネットの下から蒸気が噴き出し、メルセデスはまるで息絶えたかのように停止した。
ロイとニコラスは素早く車を降り、銃を構えながら黒塗りの車に近づく。
「降りろ!」
ロイが厳しい声で命じる。
ゆっくりと黒塗りの車のドアが開く。
中から両手を挙げた男たちが降りてきた。
ニコラスが素早く男たちを拘束し、ロイは車内を調べ始めた。
そして金属製のアタッシュケースを取り出す。
「これが取引の品だな」
遠くからタイヤが悲鳴を上げる音が聞こえ、チームBE-COOLの到着を告げた。
彼らのカローラはボンネットから蒸気を吹きながら停止した。
車から飛び出した3人は、状況を見て凍り付いた。
プロの犯罪者が拘束され、メルセデスは煙を上げている。
そして何事もなかったかのように、チームNexusのメンバーがそこに立っていた。
遠くから警察のサイレンが鳴り響き、音が次第に近づいてきた。
「ちょうどいい」ロイが呟く。
「動くな!」パトカーが現場を包囲し、武器を抜く音が響いた。
ロイは冷静に両手を上げ
「落ち着いてくれ。犯人はこいつらだ、あとは任せたぜ」
と押収したケースを手渡す。
ニコラスも静かに武器を下ろし、拘束した犯人たちを示す。
警官たちは慎重に近づき、状況を確認し始める。
クインシーはあくまで素人を装っていたが、頭脳は状況を冷静に観察していた。
「フン、見事な制圧だな。プロだが、裏社会では珍しいわけじゃない。たぶんフリーランスでそこそこの実績があるチームだろう。定期的に仕事にありつく程度には有能ってわけだ」
ハロルドとトリアがこの屈辱的な出来事を素直に受け止め、打ちのめされている間、クインシーの頭の中では状況整理が終わっていた。
そもそもこのカーチェイスは、彼の描いたシナリオ――空回りする素人自警団「BE-COOL」――の一部に過ぎないはずだった。
そこへ現れたチームNexusの存在は、大きな懸念材料ではないものの、考慮すべき要因にはなった。
「裏社会にも精通しているようだ。動向を監視した方が得策かもしれない――可能なら奴らの情報源も見つけたいしな」
クインシーはジャケットのポケットに手を突っ込んでそわそわと緊張しているように見せかけていたが、実際にはポケットに隠していた小型スマートフォンのSMSで状況を報告していた。
「ただの仕事屋。計画に支障をきたすほどじゃない」
作業が一段落し、警官がロイに近づく。
「捜査協力に感謝する。後で事情聴取に来てくれ」
ロイは静かに頷き、ニコラスと共にSTORMBRINGERに乗り込む。
発進する前、ロイはBE-COOLのメンバーをちらりと見て、冷たく言い放った。
「裏社会は甘くない。素人が立ち入る場所じゃないんだ」
STORMBRINGERのエンジンが唸り声を上げて夜の闇へと消える。
テールライトの光跡が薄れていく中、チームBE-COOLは静かに立ち尽くしていた。
「帰ろう」
ハロルドが静かに言った。
「今日の俺たちに、できることはない」
三人は重い足取りで車に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます