第2章③:市街地のカーチェイス
ネオンで彩られた夜の街が、死と隣り合わせの遊園地と化した。
漆黒のメルセデスがシャチのように車道を縫い、ロイのSTORMBRINGERが獲物を追う迫力でそれを追跡。
そしてその後方では、チームBE-COOLの整備不良のカローラが、破壊の軌跡を追うようにバウンドしていた。
「距離は?」ロイの声は冷静だ。
ニコラスはショットガンに弾を装填する。
その音は、自然吸気フラット6エンジンの独特の唸りにかき消された。
「30メートル。近づいてる。慣れてるな、素人のドラテクじゃない」
メルセデスが赤信号を突き抜け、交差点に進入してきたタクシーをスピンさせた。
辺りは混乱するが、ロイはSTORMBRINGERをなんなく操り、車の間をすり抜けて追跡を続行する。
「向こうも焦ってきたな」ロイはメルセデスの荒々しい動きを観察しながらつぶやいた。
その時、メルセデスからの銃撃が彼らを襲った。
「接触あり!」ニコラスが叫ぶ。
ロイは即座に反応し、STORMBRINGERを車線変更させた。
レース仕様のブレーキとサスペンションは、瞬時の加重移動にも耐えうる性能を見せつけた。
「そろそろか」
ロイはつぶやき、エンジンを8000回転まで回す。
「ニコラス、頼んだ」
「任せろ」
ニコラスはショットガンを窓越しに構えた。
一呼吸、二呼吸。
ショットガンが轟き、メルセデスの後輪がゴムと火花を散らしながら破裂した。
メルセデスは激しくスピンしかけたが、運転手はなんとか制御を保った。
アスファルトが悲鳴を上げた。
「ほう、やるな」ロイは感心したように言った。
慣れた手つきでパドルシフトを操作すると、STORMBRINGERの改造ギアボックスがミリ秒単位で応答した。
一方、遥か後方では、BE-COOLのメンバーが必死の追跡を続けていた。
クインシーがアクセルを踏み込みながら叫ぶ。
「なんでターボが効かないんだ!?」
「そりゃお前が押してるのがエアコンのスイッチだからだよ!速くなるわけねーだろ!」
ハロルドは助手席でグリップを掴みながら怒鳴り返した。
「あとなんでスリップ防止装置切ってんだよ!ドリフトでもかますつもりか!」
トリアの顔は相変わらず青ざめていた。
「あの…まさかとは思うけど、頭文字Dの真似してる訳じゃないよね…?」
追跡はハイウェイに突入し、STORMBRINGERは急速に距離を縮めていった。
レース用エンジンが奏でる6気筒の轟音が響く。
ニコラスは正確な射撃で相手を追い詰め、メルセデスを車線変更に追い込んだ。
ロイはメルセデスの動きに微妙な変化を感じ取り、目を細めた。
「奴ら、やる気だな――!」
その瞬間、メルセデスのブレーキランプが鋭く光った。
だが、ロイはすでに対応していた。
3速を立て続けに落とし、車体のバランスを制御する。
STORMBRINGERはメルセデスの急ブレーキをなんなくかわし、その横をすり抜けてみせた。
一方、クインシーたちのカローラはようやく高速道入り口に到達したが、ついに力尽きて停止し、エンジンから蒸気を吐き出した。
「おい!」
クインシーはダッシュボードを無駄に叩く。
「動け!このポンコツ!」
「まぁ」
ハロルドはため息をつきながら、高速に消えていく2台の車を見送った。
「今回は海に突っ込まなかっただけマシだったかもな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます