幼馴染の双子(姉)はクールキャラなのに俺にだけ甘々だし、双子(妹)はフッタくせに迫ってくるし、静かに漫画家の夢も追えません!- 新人賞に応募させてくれえ! -
第10話 俺のベッドに妹がいるから描けない
第10話 俺のベッドに妹がいるから描けない
「やっと帰ってこれたぜ……」
自宅について俺はベッドへと身体を投げだそうとしたら、ベッドには先客がいた。
「おにーちゃん、お疲れさまぁ」
「兄のベッドの上で兄が描いた漫画を読んでる妹ってどうなん?」
いつも言ってるので風花は気にすることなく、同人誌を読み進める。
ちなみに今読んでいるのは、最強系異世界ファンタジーものである。
某新人賞に応募して落選したので、即売会で販売したのだ。
「このクオリティの高さでお兄ちゃんの部屋でしか読めないんだから、もったいないよねぇ」
「次こそは、日本全国で読めるようにするさ」
俺は髪をほどき、私服を脱いで部屋着のジャージへと着替える。
「……双葉に勝つ方法か」
「双葉ちゃんに勝つの? お兄ちゃんが?」
「いや、正確には俺じゃないが――俺みたいなもんか」
七彩単体ではなくタグみたいなものかもしれない。
「双葉ちゃんも上手だよね、あたし毎日読んでるもん。ほら、相互フォロー!」
「ここに敵軍の使途がいたとは」
「そういえば、ここ最近双葉ちゃん遊びに来ないけど、喧嘩したの?」
なんだ無駄に察しが良いな妹よ!
「ああああ……いや、俺たちも高校生だしなあ」
「そうかなぁ、最近、双葉ちゃんが投稿してるマンガ見てると、なんかいつもと違う気がするんだよなぁ」
「違うってなんだ」
フラれた俺がフォローするのも気まずいから、双葉のアカウントはフォローしていないので、投稿作品は読めていない。
「今度、話してみたら? たぶん話したいんじゃない?」
風花は適当にそういって、同人誌を本棚に戻す。
話したい、か。
「……風花、お土産やる、今日はありがとな」
「やったー、お兄ちゃんだいすきぃ!」
ぎゅっと後ろから抱きつかれ、とりあえず頭を撫でてやる。
俺の手からお土産をひったくると、風花はすぐに袋の中を見た。
「あ、これ萩の月。何でお土産が地元の名物なの……」
「うまいだろ」
「好きだけど、フルーツ乗ったお団子とかあったじゃん?」
「じゃ次はそうするわ」
「やったー!」
風花はまるでどこぞの原住民が精霊を呼び出すような踊りを舞いながら、俺の部屋から出ていった。風花も容姿は良いんだが、動きがやっぱり春夏家なんだよなぁ。
久しぶりの野外活動は、思いのほか、体力を削った。
「ふあああ」
今日はなんだか色々あったせいか、生あくびが出る。
珍しく普通の服装になり、幼馴染の女子と街を散策した。
これまで授業時間以外は絵を描いたり話を練ったりしていたのに――久々に高校生っぽい生活をしたので少し疲れが出たようだ。
さっき風花が双葉の話をしたせいか、ふと双葉の表情がよぎる。
今日の七彩と同じように本屋や画材屋を巡り、たまにカフェにも立ち寄った。
幼馴染だったし、結構、可能性は高いと思っていたのだが――。
疲れたせいか精神は勝手に落ちていく傾向にありそうだ。
俺が青春を取り戻すと、まるで夢が遠のいていく気がする。
俺自身がした俺との約束、青春を全て投げうって夢を叶える――。
「――俺は簡単に落ちてやる気はない」
重たい身体だが、筋肉のバネを最大限に活用して、ベッドから起き上がる。
そしてネームノートを開き――まだ固まっていないが――液晶ディスプレイも立ち上げて、キャラクター原案を描くためにペンを走らせる。
せめてSNSにでも何かイラストをアップしよう。
良い評価も悪い評価も付くだろう、これでもフォロワーは一万を超えている。
どんな評価も、この気持ちを紛らわすには丁度良い。
時刻は天辺を超えたが、気にする必要もなく、想いのままに手を動かす。
余計な意識は次第にペンの音に飲み込まれていった。
だが、この日の俺はあまりにも迂闊だったといわざるを得なかった。
俺の地域はとても狭く、繁華街は駅前しかないだから、当然と言えば当然なのだが――。
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